
旅立ちと別れの3月が過ぎ、出会いと挑戦の4月がやってきました。
入社、異動、昇進。あるいは、新しい仲間が職場にやってくる…。自身を取り巻く状況が今日から大きく変わる、という方は多いのではないでしょうか。
新たなチャレンジを後押ししてくれるこの季節は、メンタルの調子を崩しやすい時期でもあります。慣れない業務に戸惑い、新たな人間関係に悩み、疲れが蓄積してやがて5月病や6月病に…。これは多くの人にとって他人事ではいられない問題です。
一方で、周りを見渡せば、そうしたこととは無縁に見える「メンタルが強い人」がいることも事実。
メンタルが強い人たちは、自分とは一体何が違うのか?
その疑問に答えるヒントを示してくれる本が、今週Pick Upする『メンタルが強い人がやめた13の習慣』(エイミー・モーリン/講談社)です。
本書の特徴は、書名の通り、メンタルが強い人が“やめた”習慣に焦点を当てていることです。著者のエイミー・モーリン氏は、「はじめに」で次のように述べています。
良い習慣はたしかに大切だけれど、私たちが持てる力をフルに発揮できない理由は往々にして、悪い習慣にある。世の中のありとあらゆるよい習慣を身につけたところで、悪い習慣を温存していたのでは、目標になかなか到達できないだろう。
(『メンタルが強い人がやめた13の習慣』 13ページ)
脳神経科学者のクリステン・ウィルミア氏によると、人は1日で6万の独立した思考をする(諸説あり)が、そのうちの90%は「反復思考」(過去の回想など、同じことを繰り返し考えること)だといいます。この思考がネガティブな場合、脳の負担になり、メンタルに悪影響を与えかねません(『脳メンテナンス大全 最高のパフォーマンスを発揮させる方法』クリステン・ウィルミア、サラ・トーランド/日経BP)。
どれだけ新しい良い習慣を取り入れても、そもそも90%の部分で「どうにもならないことで悩む」「過去を引きずる」といった悪習を続けていたら、いつまでたってもメンタルは強化できないでしょう。その意味で、悪い習慣を“やめる”ことの重要性を説くモーリン氏の主張には、説得力があります。
また、挙げられている13の「悪い習慣」は、いずれも身に覚えのあるものばかりで、読み進めるうちにあれも当てはまる、これも当てはまると痛感させられます。
それら悪習慣に対するアドバイスには、手厳しいものも少なくありません。例えば――
- ・「かわいそうな私」にひたらない(改善のために何もしていない自分を正当化しているだけ)
- ・上司が私を「怒らせる」といった「被害者ワード」を使わない(怒るように上司が強要しているわけではない)
ですが、この本の内容を十分に吸収できれば、間違いなく「メンタルが強い人」になれるだろう、と思わされます。
*
本書を存分に活用するために注意したいのは、最初から完璧を目指そうとしないことです。特に、13の習慣を一度に全部手放そうすると、どれをやめることができて、どれがそうでないのか、自分でもわからなくなりかねません。
かのベンジャミン・フランクリンも、有名な「13の徳目」を身につけるに当たっては、毎週1つずつに絞って習得していったといいます(このエピソードは、TOPPOINTの『フランクリン自伝』(フランクリン/岩波書店)の要約でご紹介しています)。
本書で示される13の習慣を手放すに当たっても、フランクリンに倣い、1つずつ着実に実践していってみてはいかがでしょうか。
そしてこうした取り組みには、なかなか成果が上がっているように思えない、という悩みが付き物です。自戒も込めて、13の習慣の最後に挙げられている悪習を記しておきたいと思います。
それは、「すぐに結果を求める習慣」。
自分は本当によくなっているのか…と悩みがちな人は、まずこの章から読んでみるとよいかもしれません。
心身ともに健やかに、新年度のスタートを切る。『メンタルが強い人がやめた13の習慣』は、その手助けをしてくれるはずです。
(編集部・西田)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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