2023.3.27

編集部:小村

賢明な判断と選択 そのために必要な「分析の技術」を体系的に学べる書

賢明な判断と選択 そのために必要な「分析の技術」を体系的に学べる書

 まもなく新年度を迎えます。社会人の仲間入りを果たす人、異動や転職などで環境が大きく変化する人、同じ部署で引き続き業務をする人…。立場は様々ですが、4月に入れば誰もが心機一転、仕事に向かわれることでしょう。そうした中で、スキルアップを目標とする人も多くおられると思います。

 職種によって求められるスキルは異なりますが、共通するものも存在します。例えば、「正しい意思決定を行うスキル」。今回は、このスキルを養える本をPick Upします。
 ご紹介するのは、経営コンサルタントである後(うしろ)正武氏の著書、『意思決定のための「分析の技術」 最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法』(後 正武 著/ダイヤモンド社 刊)です。1998年に刊行された本書は、入れ替わりの激しいビジネス書市場で現在も販売され続けており、ロングセラーとなっています。

 著者の後氏は、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナー、ベイン・アンド・カンパニーの日本支社長などを経て、1995年に東京マネジメントコンサルタンツを設立しました。本書では、長年にわたるコンサルタントとしての経験をもとに、正しい意思決定を行うために必要な「分析」の方法論を体系的に解説しています。
 この「分析」という行為について、著者は次のように述べています。

 

「分析」とは、何をどうすることなのか。(中略)分析とは、「物事の実態・本質を正しく理解するための作業」の総称だと筆者は考えている。

(『意思決定のための「分析の技術」』 2ページ)

 

 物事の本質を正しく理解するために行うものが「分析」である ―― 。だとすれば、分析は誰もが身につけるべきスキルであるといえるでしょう。

 本書の「序章」では、次のように基本となる考え方が示されています。

 

分析の基本は、「大きさを考える」、「分けて考える」、「比較して考える」、「時系列を考える」の四つである。そして、そのバリエーションとして「バラツキを考える」、「プロセスを考える」、「ツリーで考える」という工夫が生まれる。さらに、自然科学と違って、「人間の問題」や社会の現象は、複雑に入り組んだ事象を含み、かつ「ファジーで不確定・不確実な要素」を積極的に取り扱っていかなければならない。そのためには、それらを取り扱う「枠組みなどの工夫」が必要になる。(中略)現実の分析は、これらの手法を単独で用いるのではなく、それらを組み合わせ、併用して、複雑な事象を解明することが要求される。

(『意思決定のための「分析の技術」』 6ページ)

 

 社会現象や経営上の課題を分析するためには、上記のような技法を用いることが求められる。著者はそう述べています。問題解決のための思考法を説いた本の中には、抽象的な話に終始しているものもありますが、本書はそれぞれの技法に関して、戦略・組織・マーケティング等の豊富な事例をもとに解説します。また、図版も多数収録しており、読んで、目で見て、腹に落ちる内容となっています。

 本書の中で印象に残った手法は、「大きさを考える」技法の中で紹介されている「オーダー・オブ・マグニチュード」という考え方です。

 

大きさを論ずるうえで鍵となる考え方に「大きさの程度」(オーダー・オブ・マグニチュード)という言葉がある。何事によらず、内部論理の緻密さや形式的な整合性を論ずる前に、全体としての大きさの程度、施策の利きの程度をおおまかに把握して、まず重要度の判定をし、そのうえで重要度の順に応じて、あるいは大きなところのみ手をつける、という考え方である。

(『意思決定のための「分析の技術」』 11~12ページ)

 

 私には、上記のような重要度の判定をせずに課題の分析を進めてしまい、結論を導くまでに必要以上の労力をかけてしまった経験が度々あります。例えば、WEBサイト改修の仕事に携わった時には、些末な事象についても、時間をかけて改善案を考えていたように思います。
 そんな経験を持つ私にとって、「オーダー・オブ・マグニチュード」という考え方は非常に参考になりました。以来、事前に問題の全体を俯瞰し、重要度を判定してから取り組むようになり、仕事の効率も上がりました。

 『意思決定のための「分析の技術」』の内容が今なお有効であることは、コンサルティング会社の推薦書籍として、現在でも採用されていることからもうかがえます。
 WEBサイト「日経BOOKPLUS」に「あの会社の課題図書」というコーナーがあり、2月6日の記事で三菱UFJリサーチ&コンサルティングの課題図書が取り上げられていました。この記事の中で、同社コンサルティング人材開発室長の名藤大樹氏は、コンサルタントを目指す社員に向けた「最初の10冊」について触れ、次のように本書を薦めています。

 

コンサルタント的なマインド・思考と表現方法を学ぶのはOJTが中心になります。しかし、なかには読むだけでもとても有効な本があります。その代表として10冊の頭に置いているのが、『意思決定のための「分析の技術」 最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法』(後正武著/ダイヤモンド社)です。この本は1998年と刊行は古いのですが、今でも読み続けられているロングセラー。私自身も新卒時に読み、ずいぶん勉強になりました。今読み返しても非常に中身が濃く、面白い1冊です。

「MURC コンサルタントの語彙力を鍛える推薦図書とは?」/日経BOOKPLUS あの会社の課題図書2023年2月6日)

 

 本書は、問題発見・解決の思考法を学ぶ上で役立つ1冊です。新年度、今までよりも広い視野で思考できる能力を身につけたい方に一読をお薦めします。

(編集部・小村)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2005年5月号掲載

意思決定のための「分析の技術」 最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法

賢い判断と選択のためには、何よりも「分析」が必要になる。そしてそれは、技術として学び、実践することで身につけられる――。コンサルタントとして多くの企業事例に接してきた著者が、その経験をもとに、正しい経営判断を導く「分析の技術」を説く。この技術が個人の意思決定においても役立つことは、言うまでもない。お薦めのロングセラー書である。

著 者:後 正武 出版社:ダイヤモンド社 発行日:1998年12月
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