
今や冬の一大イベントの1つとなった、日本一の若手漫才師を決める大会『M-1グランプリ』。本大会をテレビなどで視聴し、腹を抱えて笑った人も多いのではないでしょうか。
今回は、こうした笑い・ユーモアがもたらす効用を説いた本、『笑いの治癒力』(アレン・クライン/創元社)を紹介します。
『笑いの治癒力』は、人生に笑いを取り入れ、様々なつらい場面をユーモア精神でどう切り抜けていくかを提案するものです。
著者のアレン・クライン氏は、自称“愉快学者”。健康とユーモアに関する専門家として、講演活動などを行っています。
クライン氏が笑いの大切さに気づいたのは、愛する妻の病気、そして死がきっかけでした。その後、ホスピスのボランティアなどを通じて終末期の患者やその家族と接するなかで、ひと時のつらさを忘れたり、心身の痛みを和らげたりするのに、時として笑い・ユーモアが大きな役割を果たしていることがわかったといいます。
本書のプロローグで、クライン氏は次のように述べています。
私はユーモアが唯一の策だとか、笑えばどんな問題もたちまち消えうせるなどと言っているのではないし、事実そんなことはない。しかし困難な事態のなかになにがしかのユーモアを見つけられるようになると、その結果として、その事態を乗り越えるのに役立つような新しいものの見方が手に入るのだ。
(『笑いの治癒力』 9ページ)
本書では、3つのパートに分けて、笑い・ユーモアの持つ効果、生活に取り入れる方法などが詳述されます。
パートⅠでは、笑いと遊びの心理的・生理的効果を明らかにしています。著者によれば、笑い・ユーモアには、つらいと感じる時、その気持ちを紛れさせる効果があるそうです。また、笑うことは心血管系や呼吸器系などの健康をもたらすといいます。
続くパートⅡでは、笑い・ユーモアを生活にとり入れる14の方法を提示します。そしてパートⅢでは、重病や死に際してのユーモア、笑い、遊びの役割に焦点を当てています。
各パートでは事例が豊富に盛り込まれ、人生の様々な場面で笑い・ユーモアが役に立つことがわかりやすく説明されています。個人的に好きな事例の1つが、パートⅡの「ジョーク術」で紹介されている、次の話です。
わが合衆国の歴代大統領のなかにもすぐれたユーモア武術家がいる。レーガン大統領もその一人だった。再選をかけての選挙運動期間中、年齢のことで攻撃されたときはこう言って応戦した。(中略)
「こんどの選挙戦では年齢のことにはふれないよ。敵の若さと経験不足につけこんで、点を稼いじゃ悪いから」(『笑いの治癒力』 71ページ)
相手から攻撃的な言葉を投げかけられた時、感情的に反発するのではなく、ユーモアを交えることでうまくかわすことができる。レーガン大統領のエピソードは、それを示す好例だと思います。こうした事例を通して、「自分なら似たような場面に遭遇した場合、どうやって返答しようか」などと考えるきっかけを与えてくれるのも、本書の魅力の1つです。
「笑いはまたとない良薬」 ―― 。本書に目を通せば、この古い言葉の意味を実感できます。機会があればぜひ手に取っていただきたい名著です。
(編集部・油屋)
* * *
「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
他のPick Up本
-
2023.4.3
大切なのは「やめる」こと 誰もが陥る「心のクセ」を手放して強いメンタルを手に入れる
-
2023.10.2
社会保障制度の崩壊まであと2年もない!? 差し迫る危機の原因や解決策について考察する
-
2022.11.14
「近代マーケティングの父」が実務家に向けて説いたマーケティングの最重要ポイントとは?