
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、新しい年を始めるにあたり、「新年の誓い」を立てられる方は多いのではないでしょうか。「今年こそは資格を取りたい」「リーダーシップを発揮できる人間になりたい」「ダイエットに成功したい」…。私も毎年、誓いを立てる1人です。しかし、1年後に振り返ってみると、あの誓いはどこにいったのかと思うこともしばしば。自分の実行力のなさ、意志の弱さを痛感します。
自分を変えるにはどうすればよいのか ―― 。そんなことを考えている時に目に留まった本が、今週Pick Upする『なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践』(ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー/英治出版)です。発達心理学と教育学の権威による本書は、意志を強くするだけでは自分を変えられないということを教えてくれました。
なぜ、自分を変えることが難しいのか。もし、本当に変えようとするならば、どのようなところに目を向ければよいのか。この点について、本書は次のように説きます。
ほとんどの人は、新年の誓いを実現したいという思いに嘘はない。だから、自分が誓いを守れないことに納得がいかない。(中略)私たちは誓いを立てるとき、なくすべき「悪い行動」と増やすべき「よい行動」にばかり目を向けるが、強力な阻害行動を取らせる裏の目標を明らかにしないかぎり、問題を正確に定義したことにならない。(中略)その点、免疫マップを描けば、自分が抱えている問題を正しく理解し、問題を解決する一歩を踏み出せる。
(『なぜ人と組織は変われないのか』 58ページ)
Aをすることをやめて、Bをするようにすればよい。こう考えるだけでは、なかなか実行できないことは経験上よくわかります。では、実行を阻む原因とは何なのでしょうか?
本書は、本当の原因は「裏の目標」にあると指摘します。そして、この裏の目標が何かを明らかにし、真の問題解決をはかるための手法として、著者らが編み出した「免疫マップ」というフレームワークを紹介します。
免疫マップは以下のような枠で構成されます。
・第1枠 改善目標
・第2枠 阻害行動(改善目標の達成を妨げる要因)
・第3枠 裏の目標(『なぜ人と組織は変われないのか』 55ページ)
免疫マップのつくり方について、本書は次のように説明します。まず1枠に、自分が改善したいと思っている点を記入します。次に、その改善目標の達成を阻んでいる行動を2枠に記入します。これによって、2枠の阻害行動を引き起こしている「裏の目標」が明らかになります。そこで3枠には、この裏の目標を書き込みます。
こうして免疫マップを描くと、改善目標の達成を妨げ、阻害行動の背中を押しているものの正体をあぶり出すことができます。なお、本書ではさらに、第4枠「強力な固定観念」についても解説しています。
私も、この免疫マップをつくってみました。1枠の改善目標としては、「個人のツイッターでの情報発信を始める」を挙げました。次に、目標を阻害する行動として、2枠には「忙しい」「いい投稿ネタが見つからない」「新年や何かの記念日など、区切りの日から始めたい」と書き込みました。さて、2枠まで書き込んで見えてきた「裏の目標」は何でしょうか ―― 。「いい年をしてツイートするのが恥ずかしい」「コメントに対する反論が怖い」「自分の知識の足りなさが露呈することを恐れている」などでした。
1枠2枠はすぐに書けても、3枠に書き込むことはかなり難しいのではないか? こう思われる方もいるでしょう。確かに、自分のいやな部分と向き合うことになるので、その作業は難しく、苦しみを伴うかもしれません。ですが本書は、変革に向けたアプローチをスムーズに進められるよう、多彩な事例を挙げて読者を導いてくれます。
例えば、第2部「変革に成功した人たち」では、教育委員会やコンサルティング会社といった組織、そして個人に至るまで、免疫マップを用いて改革を成功させた事例を多数収録しています。ちなみに、『TOPPOINT』の要約では、この中から大学教授会の事例を紹介しています。また、第3部「変革を実践するプロセス」では、免疫マップへの実際の記入方法について、詳しく解説しています。
個人的な悩み事の解決から、組織の改革まで ―― 。免疫マップは真の問題解決に役立つツールといえるでしょう。『なぜ人と組織は変われないのか』が説くノウハウを身につけることで、新年の誓いを立てることが楽しくなるかもしれません。
(編集部・小村)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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