2022.11.28

編集部:西田

あらゆるスキル習得の前提となる「振り返る力」 その鍛え方を可視化する

あらゆるスキル習得の前提となる「振り返る力」 その鍛え方を可視化する

 早いもので、今年も残すところあと1カ月余り。
 新型コロナウイルス感染症の第6波に始まり、ロシアによるウクライナ侵攻、急激な円安、相次ぐ生活必需品の値上げなど、この1年、日本と世界の政治・経済・社会は様々な変化に見舞われました。

 ここで、読者のみなさまに質問です。激動の2022年、個人として、あるいはチームのリーダーやメンバーとして、今年掲げた目標を達成できそうでしょうか?
 年明けに新年の抱負を決めた方も多いかと思いますが、なかには、目標が絵に描いた餅に終わってしまった…という方もあるかもしれません。そんな悲劇を避けるには、今まで自分は何ができていて、何ができていないのか、まずはきちんと「振り返る」ことが重要です。そしてこれは、組織で仕事を進める上でも変わりありません。

 そこで今週は、個人や組織のパフォーマンスを高める上で必須の「振り返り」について体系的に教えてくれる本、『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』(熊平美香/ディスカヴァー・トゥエンティワン)をPick Upします。

 本書、『リフレクション』が類書と一線を画しているのは、リフレクションに関するメソッドがきわめて体系的・実践的にまとめられているところです

 例えば、「そもそもリフレクションとは何なのか?」について。
 本書は、リフレクションには次の5つの基本的な形があるとしています。

 

  • ・自分を知る
  • ・ビジョンを形成する
  • ・経験から学ぶ
  • ・多様な世界から学ぶ
  • ・アンラーンする

(『リフレクション』 39ページ)


 リフレクションを指す「振り返り」という言葉からイメージされるのは、3つ目の“経験から学ぶ”でしょう。しかし上記を見ると、リフレクションはさらに幅広いものであることがわかります。
 ここで注目したいのは、“自分を知る”と“ビジョンを形成する”という2つのリフレクションが、“経験から学ぶ”リフレクションよりも先に示されていることです。
 このことに関して、私は次のような寓話を思い出しました。

 ――道を歩いていて、3人の男が働いているところに出くわした。何をしているのかと尋ねると、1人目の男は「レンガを並べている」と答えた。2人目の男は、「高い壁を作っている」と答えた。3人目の男は、「人々が礼拝できるよう、美しい大聖堂を作っている」と答えた。

 3人の男のうち、誰がモチベーション高く働いているかは明らかでしょう。
 いくら経験から学んでも、その先にあるゴールが自分の心から実現したいと思うことでなければ、効果的な行動変革には結びつきません。
 「自分の心を動かす原動力は何か?」。それを深く掘り下げるのが、上述の2つのリフレクションなのです。
 経験から学ぶリフレクションをやっても効果が上がらない時は、“自分を知る”“ビジョンを形成する”リフレクションに立ち戻り、自分の内面を振り返る。本書はそのことに気づかせてくれます。

 もう1つ、例を挙げたいと思います。
 本書は、“経験から学ぶ”リフレクションには、「4つのレベル」があると明示しています。このリフレクションは「自分の経験を振り返る」という漠然としたイメージで捉えられがちですが、解像度を上げてみると、それだけレベルの深度に差があるということです。
 自分が、あるいは部下が行っているリフレクションは、どのレベルにあるのか。その深度が深いほど、振り返りの効果が大きくなることは容易に想像できます。

 

  • ・より高いレベルに移行するために、どのようなリフレクションをすればいいのか
  • ・自分と部下の間で、リフレクションのレベルに関してどんな認識の差があるのか


 こうしたことを可視化して、「現在地」と「目標地点」の距離を知る地図を提供してくれる。それが、本書が体系的・実践的である理由の1つです。

 本書には、「自分とチームの成長を加速させる内省の技術」という副題がつけられています。
 自分がリフレクションを行う際のより効果的な実施方法はもちろん、チームメンバーそれぞれに適したリフレクションの見取り図を示してくれる本書。
 自分のためだけでなく、チームのためにリフレクションを用いる上でも役立つビジネス書といえるでしょう。

(編集部・西田)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2021年6月号掲載

リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術

「リフレクション」とは、自己の内面を客観的に振り返る行為のこと。経産省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」の中でも、あらゆるスキル習得の前提となる力として注目されている。自分と向き合うことで新たな学びを得て、将来の行動に活かす。リーダーにとって必須のこの“内省”のメソッドと、実践法を指南する。

著 者:熊平美香 出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン 発行日:2021年3月
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