2026.7.13

編集部:小村

生成AIの普及で創造性が失われる? 今こそ必要な発想力の磨き方

生成AIの普及で創造性が失われる? 今こそ必要な発想力の磨き方

生成AI時代、企画や提案が「金太郎アメ」に?

 仕事で生成AIを使うことが、当たり前になりつつあります。企画書や提案書、プレゼン資料の作成などで、頼りになる「相棒」としてAIを使うビジネスパーソンも多いでしょう。
 しかし、AIから返ってくるアイデアを見て「どこかで見聞きしたようなものばかりだ」と感じたことはないでしょうか? 上司の立場であれば、社内で意見を募った際、似たような意見ばかりが集まったという経験があるかもしれません。まさに“金太郎アメ”のように、どこを切っても同じような答えが出てくる――そんな感覚です。

 Hakuhodo DY ONEの中原柊氏は、こうした出来事をAIによる「思考の均質化」と呼び、これからの組織が直面し得る深刻な課題だと指摘しています(「組織におけるAI活用術 第9回 組織の思考が均質化する「AIディストピア時代」に抗え」/JAAA REPORTS 2025年12月1日)。
 中原氏によると、生成AIは学習データの中から「最大公約数的な回答」を返すことを得意としています。そのため、組織全体がAIの示す「正解らしきもの」に依存するようになると、独創的なアイデアが生まれにくくなると警鐘を鳴らします。

 こうした状況を見ると、AIが当たり前になる時代には、「人間の頭」で考える力が再び競争力の源泉になりつつあるように思われます。今こそ、発想力を鍛え直す時ではないでしょうか。

Amazon選定「オールタイムベスト ビジネス書100」にも選ばれた名著

 そこで今回は、発想法の名著『アイデアのつくり方』(ジェームス・W・ヤング 著/CCCメディアハウス 刊)をご紹介します。
 本書は1940年に原著が刊行されて以来、世界中で読み継がれてきたロングセラーであり、Amazonが選定した「オールタイムベスト ビジネス書100」にも選ばれています。

 本書の特色を一言でいえば、「シンプル・イズ・ベスト」。新書サイズで102ページとコンパクトですが、帯に「60分で読めるけれど一生あなたを離さない本」とあるように、アイデアづくりのエッセンスが詰まっています。

アイデアづくりの基礎となる2つの原理

 アメリカの広告業界で活躍したヤング氏は、本書でアイデアづくりの基本原理を次の2つに整理しています。

 

アイデア作成の基礎となる一般的原理については大切なことが2つあるように思われる。そのうちの1つには(中略)即ち、アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないということである。(中略)関連する第2の大切な原理というのは、既存の要素を新しい1つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きいということである。

(『アイデアのつくり方』 27~28ページ)


 第2の原理について、ヤング氏は「事物の関連性をみつけ出す才能」は修練によって伸ばせると説いています。その方法として彼が勧めているのが、社会科学を学ぶことです。その具体例として、社会思想家ヴェブレンの『有閑階級の理論』を推薦しています。この本は、上流階級の消費の本質が虚栄心にある点を鋭く指摘した、社会経済学の古典です。現在も書店で入手することができますので、興味のある方は読まれてはいかがでしょうか。

アイデアづくりの5段階

 『アイデアのつくり方』では、上述の原理を踏まえ、アイデアづくりの過程を5段階にまとめています。それは、とてもシンプルなものです。

 

第一 資料集め――諸君の当面の課題のための資料と一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料と。
第二 諸君の心の中でこれらの資料に手を加えること。
第三 孵化段階。そこでは諸君は意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる。
第四 アイデアの実際上の誕生。〈ユーレカ! 分かった! みつけた!〉という段階。そして
第五 現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる段階。

(『アイデアのつくり方』 54~55ページ)


 各段階の詳細については「TOPPOINTライブラリー」の要約をご覧ください。私自身も「おすすめの特集」の企画や「今週のPick Up本」の原稿を考える際、この5段階を意識するようにしています。
 実践していて特に重要だと感じたのは、第3の「孵化段階」です。ある程度資料を集めた後、あえて数日間はその作業から離れてみる。すると、それまで思いつかなかったアイデアが何気ない瞬間に浮かんでくる ―― 。そんな経験をたびたびしました。

 さらに、この5段階に取り組む中で気づいたのは、自分自身の経験や日頃感じている違和感が、新しいアイデアへと自然に結び付いていくということです。皆さまも「過去の成功・失敗体験」や「顧客との会話で感じた違和感」など、自身の経験に根ざした要素を取り入れることで、AIには生み出せない、オリジナリティのあるアイデアが生まれるかもしれません。

 仕事でAIを使わないという選択肢は、今後ますます少なくなるでしょう。その時、「AIに使われる」のではなく「AIを使いこなす」人になるには、オリジナルなアイデアを生み出す発想力の“芯”が求められるように思います。
 『アイデアのつくり方』は、その力を授けてくれる本としておすすめの1冊です。

(編集部・小村)

*  *  *

 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2020年3月号掲載

アイデアのつくり方

アイデアとは、「既存の要素の新しい組み合わせ」である ―― 。米国の広告マンが、自らの経験から導き出したアイデアづくりの要諦を伝授。既存の物事の関連性を見いだし、アイデアを生み出す方法を単純明快にまとめている。1940年の初版刊行(原著)以来、多くのビジネスパーソンに読み継がれてきた、バイブルと言える書だ。

著 者:ジェームス・W・ヤング 出版社:CCCメディアハウス 発行日:1988年4月
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

このPick Up本を読んだ方は、
他にこんな記事にも興味を持たれています。

一覧ページに戻る