2026.6.22

編集部:西田

最悪の場合、死に至る? 一見、体に良さそうな「健康食品」に潜む危険性

最悪の場合、死に至る? 一見、体に良さそうな「健康食品」に潜む危険性

「健康食品」の利用にはご注意を

 新年度が始まって、最初の3カ月が終わろうとしています。

 忙しい毎日を送る中で、食事が偏ったり寝不足だったりと、生活が不規則になっている方もいるのではないでしょうか。

 そんな中で、少しでも健康に気を遣おうと、「健康食品」を愛用している方もいるかもしれません。

 ですが、健康食品も使い方を誤ると、かえって体に害を及ぼすことがあります。今週は、そのことを教えてくれる本、『健康食品で死んではいけない』(長村洋一 著/講談社 刊)をPick Upします。

二日酔い防止のためのウコンで…

 6月11日(木)、FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会が開幕し、日本はFIFAランク上位のオランダ相手に初戦を2対2の引き分けで終えました。最後まで行方のわからない試合に、手に汗握った方も多いのではないでしょうか。

 この記事を書いているのは2戦目のチュニジア戦前ですが、今後の試合はお酒を飲みながら観戦する方もいるかもしれません。そんな時、気になるのは二日酔いではないでしょうか。

 ビジネスパーソンの中でも営業職の方などは、こうしたプライベートだけでなく仕事でもアルコールを摂る機会が多いため、「二日酔い防止」の健康食品を利用することもあるかと思います。「肝臓に効く」とされるウコンの成分を含んだものなどはその一例です。

 ただ、これらはとにかく飲めばいいというものではありません。

 たしかに、ウコンには肝機能改善効果のあることが確認されています。ですが、本書によると、肝疾患のある人はウコンを摂取し続けるとかえって悪化することが、日本肝臓学会の調査からわかったといいます。

 

肝臓は種々の栄養素や栄養素以外の化学物質を処理する人体における化学工場のような臓器である。ウコンの成分は、肝臓の調子がよいときならその調子をアップさせる。反対に、調子が悪いときにウコンの成分が送り込まれれば、肝臓という化学工場の処理能力を超え、結果的に調子を整えるどころか負荷になり、肝臓をくたびれさせてしまうのだ。

(『健康食品で死んではいけない』20ページ)

 

 こうしたことを考慮せず、「肝臓によい」という言葉だけが独り歩きしている健康食品の現状に、本書は警鐘を鳴らしています。

 

そもそもウコンをはじめ健康食品は医薬品と異なり、その効果のメカニズムや、どれくらいの量をどのタイミングでどんな人が摂取したら効果があるのか、また副作用はないのか、ということが系統的に調べられていない。多くの人が摂取して初めて問題点が出てくることになる。常識的に大丈夫だと考えられている健康食品は、こうした問題を内在している可能性があるから注意を要するわけである。

(『健康食品で死んではいけない』23ページ)

健康食品の「緩さ」

 健康食品の「緩さ」はこれだけにとどまりません。本書は、医薬品として扱われていた物質が健康食品として販売される事例についても挙げています。

 

最近、(中略)CoQ10、α-リポ酸など以前は医薬品として扱われていた物質が健康食品として販売されるようになっている。(中略)CoQ10やα-リポ酸などは一般食品の範疇に置かれているので、摂取上限量に関する法的な規制もなくまったく野放しの状態である。

そのためダイエット食品などで、α-リポ酸が医薬品としてであれば上限を超えるような量の摂取が行われ、2型糖尿病症状を発症したという報告がいくつもある。

(『健康食品で死んではいけない』75ページ)

 

 健康食品の中でも、ダイエット食品は被害の目立つ分野です。「好きなだけ食べてもやせられる」などとうたって「やせたい」と願う人々につけこみ、違法な製品を販売するケースが後を絶ちません。本書でも、日本で未承認の医薬品成分を含んだ健康食品による被害事例が、多数紹介されています。

 

抗肥満効果がある医薬品を混入した健康食品は、比較的短期間で効果が実感できる。だから、やせたいという女性の悲痛なほどの願望が、すぐかなえられ始める。そこで飲み続けると副作用で体調が悪くなってくる。でも、こんなに効果があるからちょっとくらい体調が悪いのは我慢しよう、と続けているうちにひどい障害が発生し、場合によっては死にいたるのである。

(『健康食品で死んではいけない』51ページ)

 

 最近でも、健康食品ではありませんが、2型糖尿病治療薬として承認された医薬品がダイエット目的で利用されているとして、厚生労働省が糖尿病の治療以外では安全性が確認されていないと注意喚起を行う事例が発生しています。

 劇的な効果をうたうSNS広告は目を引くものですが、思わず手を出してしまう前に、広告で触れられていない危険性にも思いを巡らせる必要があるでしょう。『健康食品で死んではいけない』は、多数の事例をもとに、そのことを教えてくれる1冊です。

 

ここで思い起こすのは、「毒性学の父」とも呼ばれるパラケルスス(16世紀)の言葉である。

「どんな物質も毒であり、その物質が毒になるかならぬかは、単にその量に依存する」

身近な食塩でも酢でも一定量を超えて摂取すれば体によくないのは明らか。量が少なければ効果はなく、多すぎれば望まぬ作用が出る。実は健康食品に限らず化学物質で生ずる問題はすべてと言ってよいほど、この言葉で説明がつく。

(『健康食品で死んではいけない』69ページ)

 

 本書のこの言葉は、「とりあえず健康食品を摂っておけば、体にはいいだろう」と考えがちな人が、常に頭に置いておくべきものといえるでしょう。

(編集部・西田)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2025年3月号掲載

健康食品で死んではいけない

副作用がなく、安全に健康を手に入れられる ―― 。「健康食品」には、そんなイメージがある。しかし、実際はいいことばかりではない。使い方や選択を誤れば、最悪の場合、死にいたることも。その危険性について、食品安全の分野を牽引する著者が、様々な事例を挙げて解説。そして、健康食品との上手な付き合い方を語る。

著 者:長村洋一 出版社:講談社(講談社+α新書) 発行日:2024年12月
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