あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
2026年が幕を開けました。仕事始めを迎え、新たな1年をどう描くか、思いを巡らせている方も多いことでしょう。
『TOPPOINT』の2026年1月号では、「一読の価値ある」ビジネス書として『BCGが読む経営の論点2026』(ボストン コンサルティング グループ 編/日経BP 刊)をご紹介しました。
同書が示す論点は、AIエージェントの本格的な普及や金利環境の変化など、経営を取り巻く前提が大きく揺らいでいる現実を浮き彫りにしています。これまでの成功体験や常識が通用しない局面に直面する経営者、管理職も少なくないはずです。
こうした不確実性の高い年の始まりに、あらためて手に取りたい1冊があります。
1995年の刊行以来、30年にわたり読み継がれてきたビジネス書の名著、『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』(ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス 著/日経BP社 刊)です。
すべての働く人に向けた名著
TOPPOINTライブラリーのコンテンツの1つであるオールタイムベストにおいて、「経営」カテゴリのトップに長らく位置するこの本を、すでに読まれた方も多いでしょう。
時代の荒波を乗り越えてきた「偉大な企業」に共通する原則を解き明かした本書には、不確実性が増す現代においてこそ確認しておきたい、経営の基本思想が凝縮されています。
こう説明すると、経営者向けの本だと思われがちですが、本書の冒頭には次の一文が掲げられています。
この世のすべての経営者、経営幹部、起業家は、本書を読むべきである。取締役も、コンサルタントも、投資家も、ジャーナリストも、ビジネス・スクールの学生も、この世でとくに長く続き、とくに成功している企業の特徴に関心があるすべての人は、本書を読むべきである。
(『ビジョナリー・カンパニー』 はじめに)
この宣言が示す通り、『ビジョナリー・カンパニー』は経営者のためだけの本ではありません。組織の中で働くすべての人にとって、示唆に富む視点が詰まっています。
著者たちが「ビジョナリー・カンパニー」と呼ぶのは、単に成功した企業でも、長寿企業でもありません。業界内で卓越し、同業他社から尊敬を集め、長期にわたって社会に大きな影響を与え続けてきたビジョナリー(未来志向・先見的)な企業のことです。3M、アメリカン・エキスプレス、ウォルト・ディズニーなどが、その代表例として挙げられています。
本書では、これらの企業と同時代の比較対象企業とを丹念に対比しながら、時代を超えて生き残る企業の条件を浮かび上がらせていきます。豊富な成功・失敗事例が紹介されており、ビジネス書でありながら「読み物としての面白さ」を備えている点も、名著として読み継がれる理由でしょう。
偉大な企業に「ひらめき」は必要か
では、ビジョナリー・カンパニーになるために必要なものは何でしょうか?
多くの人が、「他社にはない卓越したアイデア」や、「カリスマ的な経営者像」を思い浮かべるかもしれません。「いつかは起業してみたい…」と思いながらも、そのハードルの高さに躊躇する人もいるでしょう。
しかし、著者たちはこの前提を明確に否定します。
偉大な企業に必要なのは、優れたアイデアでも、カリスマ的なリーダーでもない、と。
むしろ、すばらしいアイデアを見つけてから会社をはじめることにこだわらないほうがよいかもしれない。なぜなのか。すばらしいアイデアにこだわっていると、企業が究極の作品だとは考えられなくなってしまうからだ。
(『ビジョナリー・カンパニー』 46ページ)
アイデアは失敗することも、時代遅れになることもあります。だからこそ、単一の成功に賭けるのではなく、変化に耐えうる「組織そのもの」を築くことが重要だというのです。
時を告げるな。時計をつくれ。
この考え方を端的に示すのが、本書を象徴する次のような比喩です。
昼や夜のどんなときにも、太陽や星を見て、正確な日時を言える珍しい人に会ったとしよう。(中略)この人物は、時を告げる驚くべき才能の持ち主であり、その時を告げる才能で尊敬を集めるだろう。しかし、その人が、時を告げる代わりに、自分がこの世を去ったのちも、永遠に時を告げる時計をつくったとすれば、もっと驚くべきことではないだろうか。
(『ビジョナリー・カンパニー』 37ページ)
つまり、優れたアイデアやビジョンを示すことは、「時を告げる」行為にすぎません。一方で、特定の人物の在任期間やいくつもの商品ライフサイクルを超えて繁栄し続ける企業を築くこと。それこそが「時計をつくる」ことです。
そのために重要なのは、優れた製品やサービスのために会社が存在するのではなく、優れた会社をつくるために製品やサービスがある、という発想の転換だと著者たちは語ります。
さらに彼らは、経営者のカリスマ性についても言及しています。
世間の注目を集めるカリスマ的なスタイルは、ビジョナリー・カンパニーの基礎を固めるのに、まったく不必要だ。
(『ビジョナリー・カンパニー』 53ページ)
3Mを長年率いてきたウィリアム・マックナイト氏や、ソニー創業者の井深大氏が、控えめで思慮深い人物であったことは象徴的です。
声の大きさや華やかさが評価されがちな現代において、この指摘は今なお強く響きます。
時代が変わっても揺るがない原則
『ビジョナリー・カンパニー』にはこの他にも、「“ANDの才能”を重視する」「基本理念を維持し、進歩を促す」「一貫性を追求する」といった、時代を経ても変わらない偉大な企業の原則が示されています。詳しくは、ぜひTOPPOINTライブラリーの要約をご覧ください。
変化の激しい時代だからこそ、立ち返るべき原点があります。
2026年のスタートにあたり、経営と仕事の「軸」を再確認するために、ぜひ手に取っていただきたい1冊です。
これから起業しようという方はもちろん、今ある組織をどう育て、未来につなぐかを思案している経営者や管理職の方々にとって、本書から学ぶべき点は多いでしょう。
なお、TOPPOINTライブラリーには、同書の続編である『ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則』『ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階』『ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる』の要約も収録しています。関心を持たれた方は、ぜひこちらも併せてご覧ください。
(編集部・福尾)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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