2026.3.16

編集部:小村

認知科学に基づいた、チームを進化させるリーダーシップ論

認知科学に基づいた、チームを進化させるリーダーシップ論

 3月は英語でマーチ(March)。それにちなんで、マーチ(行進曲)ばかりを演奏するコンサートに先日行ってきました。人気曲である「アルセナール」をはじめとした13曲のマーチを聴き、まもなく訪れる春の気配を感じて晴れやかな気持ちになりました。

 マーチは行進曲と訳されるように、軍隊やパレードなどで行進を規則正しく行うために用いられる音楽です。その起源は、古代エジプトの時代までさかのぼるといわれています。

 マーチのリズムに合わせるように、ビジネスにおいてもチームのメンバーが歩調を合わせ、目標に向かって進んでいくことが望まれます。しかし価値観の違いなどから、なかなかメンバーの足並みが揃わないと悩むリーダーも多いのではないでしょうか。

 そこで今回は来るべき新年度に向けて、メンバーの行動を変えるための方策を説いたビジネス書、『チームが自然に生まれ変わる ――「らしさ」を極めるリーダーシップ』(李 英俊、堀田 創 著/ダイヤモンド社 刊)をご紹介します。

リーダーは、メンバーを「内側」から動かせ!

 この本が伝えるのは、リーダーはメンバーの「内側」から動かさなければならないということです。

 従来のリーダーシップの考え方では、いわゆる「アメとムチ」が定石でした。メンバーの仕事ぶりを褒めたり叱ったりする、昇給や減給をちらつかせたりするなど、外的な要因によってメンバーのモチベーションを上げようとしていました。

 しかし著者たちは、そうした働きかけには限界があると指摘します。一歩間違えば「ハラスメント」につながるリスクがある上、価値観が多様化した現代では、給料の多寡などの外的な要因だけでは、全員のモチベーションを引き出せなくなっているからです。

 そこでカギとなるのが、仕事それ自体への興味や喜びといった内的な要因です。では、内側から人を動かすには、どうすればよいのでしょうか?
 本書は、その原理を2つ紹介します。それが「ゴール」と「エフィカシー」です。

 まず、1つ目の「ゴール」について、本書はこう説明します。

 

人を持続的に動かすときには、ある種の目的ないし目標、「ゴール」が必要になる。人がなんらかの目標を持ち、「なんとしてもこれを実現したい!」(中略)という思いが生まれたときには、その人は外的な刺激を必要とすることなく、主体的に行動をとることができる。

(『チームが自然に生まれ変わる』 50ページ)


 そのため、内側から動かすためのリーダーシップのポイントは、「ゴール」をどうデザインするかにある、と著者たちは説きます。
 例えば、『TOPPOINT』編集部であれば、ゴールは「“一読の価値ある”新刊書の読みどころを的確に紹介する」ということになるでしょうか。

 次に、2つ目の「エフィカシー」です。これは効力や効能を意味する言葉ですが、本書ではセルフ・エフィカシー(自己効力感)の意味で用いています。

 

自己効力感とは「一定の行為・ゴールの達成能力に対する自己評価」であり、「自分はそれを達成できるという信念」である。もう少し砕けた言い方をするなら、「やれる気がする/やれる気しかしない」といった手応えのようなものだと考えてもらっていい。

(『チームが自然に生まれ変わる』 50~51ページ)


 エフィカシーは特殊なものではありません。例えば「コピーをとる」「メールを送る」といった作業について、私たちは「できる」と信じているでしょう。当たり前のことのようですが、これがエフィカシーを持っている状態であると著者たちはいいます。
 ゴールに対してエフィカシーを感じている時、人はスムーズに行動を起こすことができるのです。

 『TOPPOINT』編集部であれば、「本の要所を的確に紹介できる」というエフィカシーを持つことが大事だといえるでしょう。そうしたエフィカシーを感じる本であれば、作業もスムーズに進みます。一方、ページ数が多くて難解な内容の本であれば、「果たしてうまくまとめられるのか…」とエフィカシーをあまり持てない場合もあります。

 従って、リーダーが内側からメンバーを動かす時には、「正しいゴールを設定する」と同時に、「それに対する十分なエフィカシーを確保する」ことが必要になります。「自分はこのゴールを達成したい。そして、実際に達成できる気がする」という認知をチーム内にデザインできれば、外的な要因がなくても人は喜んで動き始めるそうです。

認知科学からリーダーシップを考える

 では、どうすればそのような認知を持たせることができるのでしょうか?
 そのヒントを与えてくれるものとして、本書が紹介するのが「認知科学」です。

 著者たちによれば、認知科学がリーダーシップに与える最大の示唆は「内部モデル」が変わると行動が変わるという点にあります。内部モデルとは、簡単にいえば「ものの見方」のことです。

 本書では内部モデルが行動に影響を与える例として、「今月中にあと10件の見込み客を獲得しよう」と言われた時の、人による対応の違いが紹介されています。
 例えばAさんは「見込み客獲得なんて楽勝だ」という内部モデルを持っていて、すぐに行動を開始します。その一方で、「見込み客獲得はしんどい…」という内部モデルを持っているBさんは、なかなか行動に移すことができません。

 こんな時、リーダーはBさんにどう対応すればよいのでしょうか。本書はいいます。

 

ここで重要なのは、Bさんのパフォーマンスが低くなるのは、彼に「やる気がない」からではないということだ。彼の行動は、その内部モデルから必然的に出力されているにすぎない。
こんなとき、リーダーとしてやるべきことは何だろうか?
そう、Bさんの内部モデルを書き換えればいいのだ。彼がAさんと同じように「見込み客の獲得なんて楽勝」という認知を持つようになれば、Bさんの行動は自然に変わる。

(『チームが自然に生まれ変わる』 69ページ)


 つまり、リーダーがメンバーの認知を変えることによって、行動が自然と変わるのです。

 認知科学に基づいてメンバーの認知を変え、チームを生まれ変わらせるリーダーシップの詳しい実践方法については、『チームが自然に生まれ変わる』をお読みいただければと思います。
 新年度に新たにリーダーとなる人、また昨年度に引き続きリーダーの重責を担う人。そうした方々に本書を手に取っていただき、チームの足並みを揃えるマーチのようなリーダーシップを奏でる一助としていただければ幸いです。

(編集部・小村)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2022年2月号掲載

チームが自然に生まれ変わる ―― 「らしさ」を極めるリーダーシップ

チームメンバーの行動を変えるのに必要なのは、やる気やノルマではない。「認知」を変えれば、彼らは自ら動く。こう述べる2人の著者が、認知科学に基づく「内因的な原理によって人を動かす方法」を説く。働く人々の価値観が多様化する現代、部下のものの見方を変え、チームを進化させる原則を示したリーダーシップ論。

著 者:李 英俊、堀田 創 出版社:ダイヤモンド社 発行日:2021年11月
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