2022.7.8

編集部:油屋

「貯蓄から投資」を始める前に、知っておきたい“大原則”

「貯蓄から投資」を始める前に、知っておきたい“大原則”

 岸田政権は5月31日、「新しい資本主義」実行計画案と「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針)原案を公表しました。それらの案のなかで、世間から注目され、メディアで多く取り上げられたものの1つが、“貯蓄から投資”を促す「資産所得倍増プラン」です。


 日本人は資産運用に保守的と言われています。

 日本銀行が発表している「家計の金融資産構成」のデータを見ると、米国では、国民の全金融資産のうち株式等が占める割合は37.8%。一方、日本のそれはわずか10.0%。現金・預金が金融資産の半分近く(54.3%)を占めています※。

 今回発表された「資産所得倍増プラン」には、国民の現金・預金を投資にシフトさせるために、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充・改革などが盛り込まれました。今後は、“貯蓄から投資”という気運が高まることが予想されます。

 

 とはいえ、投資を始めるにしても何をすればいいのか、また、損をしないために何に気をつければいいのか、不安に思う人も少なくないでしょう。
 そこで今回ご紹介したい書籍が、『投資の大原則 [第2版] 人生を豊かにするためのヒント』です。

 著者は、投資の世界に通じたバートン・マルキールとチャールズ・エリス。彼らは、投資のバイブルである古典的名著『ウォール街のランダム・ウォーカー(原著第12版) 株式投資の不滅の真理』(マルキール)と、『敗者のゲーム〈原著第6版〉』(エリス)の執筆者です。

 

 本書では、(投資家ではなく)一般の人が将来お金に困らないよう、「貯蓄と投資の大原則」をわかりやすく紹介しています。
 例えば、「支出を収入より少なくする」こと。当たり前のことですが、収入が支出よりも多いと、お金は貯まります。ただ、私たちは収入が増えた時、支出も併せて増やしてしまいがちです。また、お店で特売の文字を見た時などには、ついつい衝動買いをして無駄な支出をしてしまいます。本書では、そうならないための節約術として、店に行く前に買い物リストを作ること、クレジットカードの使い過ぎを控えることを勧めています。
 

 彼らはまた、投資で得た利益を再投資する(複利)ことの重要性も説きます。
 例えば、年10%のリターンがある場合、1万円投資したら、翌年には1,000円の利息がつきます。この1万1,000円(元金1万円+利息1,000円)を再投資すると、2年目には1万1,000円に対して1,100円の利息が出て、合計1万2,100円。翌年はまたすべてを投資に回す…。このように再投資を進めると、10年後には約2万6,000円(利息約1万6,000円)となり、毎年利息を1,000円もらっていた場合(利息1,000円×10年=総額1万円)より、約6,000円も多くなります。そのため本書では、投資する際は複利の効果を最大限発揮させる方がよいと述べています。

 本書では他にも、おすすめの投資法や、損をしないためのルールなどが紹介されています。“大原則”と謳っている通り、内容は難しいものではありません。投資経験の有無にかかわらず、誰にでも実践できる手法ばかりです。

 

 「老後の30年間で約2,000万円が不足する」という試算、いわゆる「老後2,000万円問題」が物議を醸したこともあり、現役のうちに資産形成をする必要性は高まっています。マルキールとエリスも、本書の中で次のように記しています。
 「死ぬよりも辛いことがある。それは、退職後に備えて蓄えたお金以上に長生きすること」
 “人生100年時代”と言われる今日、投資をするにせよしないにせよ、投資の賢人たちが語る原則は知っておいて損はありません。ご自身の勉強用に、また若者世代への推薦書として、手に取ってみていただければ幸いです。

 

 ※参照:日本銀行調査統計局『資金循環の日米欧比較』(2022年7月7日最終アクセス)
   https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjhiq.pdf

(編集部・油屋)

 「今週のPick Up本」では、ビジネス書に日々触れている小誌の編集部員が、これまでに要約した書籍の中から「いま改めておすすめしたい本」「再読したい名著」をご紹介します。次回の“Pick Up本”もお楽しみに。

2018年9月号掲載

投資の大原則 [第2版] 人生を豊かにするためのヒント

投資のバイブルである『ウォール街のランダム・ウォーカー』と『敗者のゲーム』。共にベストセラーとなった古典的名著の著者が、「貯蓄と投資の大原則」を簡潔に説いた。投資で得た利益を再投資する、インデックス・ファンドに投資する、時間を分散させる…。誰でもできるシンプルな投資法と、押さえるべきポイントが明かされる。

著 者:バートン・マルキール、チャールズ・エリス 出版社:日本経済新聞出版社 発行日:2018年7月

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