2022.7.19

編集部:油屋

日本人実業家が紹介して再注目! ポーターの“競争戦略”の要諦を学ぶ

日本人実業家が紹介して再注目! ポーターの“競争戦略”の要諦を学ぶ

 最近、テレビ東京系列のテレビ番組「Newsモーニングサテライト」で、株式会社星野リゾートの星野佳路代表が紹介し、話題となった書籍があります。番組放映後、ある書店は、その書籍が瞬く間に売り切れたという投稿をSNSで発信。また、私どもが選書の際に訪れる書店でも、この話題の書が大量に再入荷され、目立つ場所に平積みされていました。

 その書籍とは、『〔エッセンシャル版〕 マイケル・ポーターの競争戦略』です。

 経営学を学んだ方、ビジネス書をよく読まれる方なら、「マイケル・ポーター」という名前を目にしたことがあるはず。古典的名著『競争の戦略』の著者として知られる、競争戦略論の第一人者です。
 今回ご紹介する『〔エッセンシャル版〕 マイケル・ポーターの競争戦略』は、そんなポーター氏の論考の要諦を解説した書です。
 そのタイトル通り、ポーターの研究のエッセンス ―― 「競争」と「戦略」の本質がわかりやすく、かつ実践しやすい形で紹介されています。

 本書は2部構成になっており、まず前半で「競争とは何か?」を解説します。
 競合他社に勝つために、多くの企業は「最高の」製品・サービスを提供しようとします。最高の製品、最高のサービス、最高の人材。これらが揃えば、どんな競争相手でも勝てると思う人は少なくないでしょう。
 しかしポーターは、こうした「最高を目指す競争」は間違っているといいます。何をもって最高とするかは目標によって異なるし、すべての競合企業が最高を目指せば、誰も勝てない「ゼロサム競争」と化すからです。
 本書では、この種の競争の例として、米国の航空業界を取り上げています。アメリカン航空が、ニューヨーク-マイアミ路線で無料の機内食を提供し、顧客獲得を狙う。すると、デルタ航空は対抗策を打ち出さざるを得なくなる。そして結局、両社とも前より悪い状態に陥ってしまう――。
 このように、1社が行動を起こすたびに競合企業が素早く対応することで、企業ごとの違いが1つ、また1つと失われ、やがてどの企業も見分けがつかなくなります。そうなると、顧客の判断基準は価格だけ、ということになります。
 ポーターは、企業は最高を目指して競争する代わりに、「独自性を目指して競争する」べきだといいます。そして、他社と異なる道筋を選ぶことを「戦略的競争」と呼んでいます。

 本書の後半では、「戦略とは何か?」について述べています。
 ポーターは、優れた戦略が満たすべき条件として、次の5つを挙げます。

    • ①顧客に「特徴ある価値提案」をしている。
    • ②「特別に調整されたバリューチェーン(価値連鎖)」がある。
    • ③ライバル企業とは異なる「トレードオフ」を行っている。
    • ④バリューチェーン全体に「適合性(フィット)」がある。
    • ⑤長期にわたる「継続性」がある。


 本書では、②「特別に調整されたバリューチェーン」の一例として、ディスカウント小売業者のウォルマートを取り上げています。
 ウォルマートは、他の小売業者が大都市圏で店舗展開するのを尻目に、最寄りの都市に行くのに車で4時間ほどかかる小さな町に出店しました。商品の価格が最寄りの都市と同じか、それよりも安い店があれば、「住民は地元で買い物をする」はず――創業者サム・ウォルトンはそう考えたのです。その上、ウォルマートが狙った市場の多くは、2つ以上の小売業者を支えるほど大きくなかった。これが競合他社にとって強力な参入障壁となったと、本書は述べています。
 すなわち、ウォルマートは競合他社と異なる活動を行い、特徴ある顧客に対応することで、競争優位を打ち立てたのです。

 『〔エッセンシャル版〕 マイケル・ポーターの競争戦略』では、この他にも、競争戦略の理論が事例とともに紹介されています。重厚なポーターの著作を読む前に、本書に目を通しておくことで、彼の理論に対する理解が深まることと思います。
 なお、TOPPOINTライブラリーでは、競争の3つの基本戦略である「コストのリーダーシップ」「差別化」「集中」について詳述したポーターの代表作、『新訂 競争の戦略』も収録しています。併せてご覧いただければ幸いです。

(編集部・油屋)

 「今週のPick Up本」では、ビジネス書に日々触れている小誌の編集部員が、これまでに要約した書籍の中から「いま改めておすすめしたい本」「再読したい名著」をご紹介します。次回の“Pick Up本”もお楽しみに。

2017年5月号掲載

〔エッセンシャル版〕 マイケル・ポーターの競争戦略

競争戦略論の権威、マイケル・ポーター氏と数多くの仕事を共にしてきた著者が、氏の論考のエッセンスをわかりやすく解説する。競争優位、バリューチェーン、トレードオフ、適合性(フィット)…。世界中の実業界で広く実践されているポーターの考え、フレームワークを、シンプルかつ十全に学べる1冊だ。

著 者:ジョアン・マグレッタ 出版社:早川書房 発行日:2012年9月

2009年10月号掲載

新訂 競争の戦略

経営戦略論の古典として、ロングセラーを続ける1冊。マイケル・E・ポーター教授の処女作でもある。本書では、競争の3つの基本戦略である「コストのリーダーシップ」「差別化」「集中」を詳述し、後半では、業界の成熟度や集中度などの業界環境のタイプ別に、最適の競争戦略を説く。姉妹編の『競争優位の戦略』では、この基本戦略を企業が実践するための具体的手法を述べている。

著 者:M・E・ポーター 出版社:ダイヤモンド社 発行日:1995年3月

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