今日から読書週間
「良書を初めて読むときには新しい友を得たようである。前に精読した書物を読み直すときには旧友に会うのと似ている」
18世紀イギリスの作家、オリヴァー・ゴールドスミスは随筆『世界市民』でこう記しています。
今日から、読書を推進し、豊かな人間性を育むことを目的とした「読書週間」が始まりました。11月9日までの期間中、全国各地で読書に関する様々なイベントが行われる予定です。この機会に、皆さまも、本という「友人」に会いに行ってみませんか?
今週は、そんな皆さまの読書活動を後押しする、「読書の技術」を教えてくれる本をPick Upします。1940年にアメリカで刊行されて以来、世界各国で翻訳され、読み継がれてきたロングセラー、『本を読む本』(M. J. アドラー、C. V. ドーレン 著/講談社 刊)です。
読書の4つのレベル
本書は、優れた読書家になるための方法を体系的にまとめた、読書術の古典的名著です。
アドラーたちが目指しているのは、単なる「情報収集」のための読書ではありません。著者の言葉の背後にある意図や理由までを理解するための読書です。そのために本書では、読む力を段階的に高める方法として、「4つのレベル」を提示しています。
・第1レベル:初級読書
・第2レベル:点検読書
・第3レベル:分析読書
・第4レベル:シントピカル読書
まず「初級読書」は、子供が初歩の読書技術を習得するためのものです。次に「点検読書」は、拾い読みや下読みとも呼べるものですが、それを系統立てて行うことに意味があります。そして「分析読書」は1冊の本を通読するもの。最後の「シントピカル読書」は、1つの主題について何冊もの本を相互に関連付けて読むものです。
点検読書の技術
ビジネスパーソンにとっては、第2レベルの「点検読書」以降が重要な技術となるでしょう。そして、ビジネスパーソンが短時間で効率よく本の内容を把握するために、点検読書はぜひとも身につけていただきたい技術です。
『本を読む本』では、点検読書を2段階に分けています。
1つ目は「組織的な拾い読み、下読み」、2つ目は「表面読み」です。
「組織的な拾い読み、下読み」の方法として、本書は「表題や序文を見る」「本の構造を知るために目次を調べる」「カバーに書いてあるうたい文句を読む」「その本の議論のかなめと思われる章をよく見る」「ところどころ拾い読みしてみる」などを挙げています。
「タイトルや目次を見るなんて当たり前じゃないか」、と思われるかもしれません。
しかし、ビジネス書を手に取ると、最初の印象だけですぐに本文を読み始めてしまう、という方も多いのではないでしょうか。
小説やエッセイであれば、目次から得られる情報は少ないかもしれません。しかし、ビジネス書の場合は、キーワードや構成がかなり詳しく書かれている場合が多いため、目次を読むだけで、その本の詳しい地図を頭の中に描くことができます。それによって、「その本の議論のかなめと思われる章」も素早く見つけることができるでしょう。
とにかく前に進め!
点検読書のもう1つの段階である「表面読み」は、読むべき価値があると認めたものの、今の自分には少し難しいと感じる本を読むための技術です。
そのコツは、「とにかく読み通すこと」。すぐには理解できない箇所があっても、考え込んだり語句の意味を調べたりせず、まずは先へ進むことが大切だといいます。
先述した「組織的な拾い読み、下読み」が、本の“詳細な地図”を頭に描く作業だとすれば、「表面読み」は、通読によって“おおまかな地図”をつくる作業といえるでしょう。
積極的読書の質問
点検読書は、注意力と集中力を必要とする「積極的な読書」である、とアドラーたちはいいます。そして、この積極的読書に欠かせない大事な「約束事」を、次のように説きます。
「読んでいるあいだに質問をすること。その質問には、さらに読書をつづけているあいだに、自分自身で回答するよう努力すること」
(『本を読む本』 53ページ)
ただし、どんな質問でもよいわけではありません。本書では、読者がしなくてはならない質問として、次の4つを挙げています。
- 一、全体として何に関する本か。(中略)
- 二、何がどのように詳しく述べられているか。(中略)
- 三、その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か。(中略)
- 四、それにはどんな意義があるのか。
(『本を読む本』 54ページ)
読者が問いかけをしなければ、本から答えを得ることはできない ―― 。アドラーたちは、そう語ります。そして、答えを得るために手に持っておきたい道具としてすすめるのが、「鉛筆」です。心の中で問いかけた答えが本文中にあれば、そこに線を引いたり、書き込みをしたりする。そうすることで、効果的な読書ができるといいます。
『TOPPOINT』編集部でも、鉛筆片手に読書をし、紹介したい重要な箇所の上部に線を引きます。その読書体験は、まるで本の要所を捜す「探偵」のよう。
『本を読む本』でも、点検読書を行う人を探偵になぞらえて、こう述べます。
自分が探偵になったつもりで、その本の大きなテーマや意図を見いだす手がかりを探し求め、あらゆるヒントに注意をはらうのだ。こうして読めば、時間は驚くほど節約できるし、理解も深くなる。
(『本を読む本』 44ページ)
「働いていても本が読める」ようになるために
『本を読む本』では、点検読書の技術を身につけた後、第3レベルの分析読書、そして第4レベルのシントピカル読書へと進んでいきます。これらの読書技術についての詳しい解説は、「TOPPOINTライブラリー」の要約をお読みください。
今回、私が主に点検読書をご紹介したのは、多忙なビジネスパーソンにとって、まずはこの技術だけでも身につけられれば、読書の世界が大きく広がるのではないか、と思ったからです。
本は最初から最後まで、必ず熟読しなければならない。書かれている内容は、隅から隅まで理解しなければならない…。もし、そんな思い込みがあれば、忙しい日々の中で本を読むことは難しくなり、本は遠い存在になってしまうでしょう。
「働いていても本が読める」ようになるには、そうした思い込みをいったん脇に置き、それぞれの本のおいしいところ=要点が理解できればOK! と考えてみてはいかがでしょうか。点検読書の技術は、その目的を達成するために役立ってくれるはずです。
もちろん、そこで終わりというわけではありません。余裕がでてくれば、より上のレベルを目指して、『本を読む本』を読んで、読書の技術を磨いていただければと思います。
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情報があふれる時代だからこそ、1人1人の「読む力」が問われています。『本を読む本』を手に取って、読書の質を高める秋にしてみてはいかがでしょうか。
なお、「TOPPOINTライブラリー」の「おすすめの特集」では、過去に「「本の日」に読みたい本」と題して、読書をテーマとする良書4冊をセレクトしています。読書術に興味のある方は、こちらの特集もお読みいただければ幸いです。
(編集部・小村)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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