交渉は難しいものだ ―― 。2月28日に米ホワイトハウスで行われた、トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との会談の決裂劇を見て、改めてそう感じました。
ゼレンスキー大統領には、今回の会談や鉱物資源の権益をめぐる合意文書への署名を通じて、米国との関係を改善する狙いがありました。しかし、会談中にロシアへの外交姿勢や停戦に向けた立場をめぐって、トランプ大統領やバンス副大統領と激しく口論。その結果、予定していた合意文書への署名は見送られ、共同記者会見も中止となりました。今回の決裂は、ウクライナとロシアの停戦に向けた交渉にも影響を与えると見られています(「トランプ氏とゼレンスキー氏 激しい口論 合意至らず」/NHK NEWS WEB 2025年3月1日)。
「交渉術」について説いた、世界的ベストセラー
国家間の交渉ほど大きなものではなくても、私たちは日常のあらゆる場面で交渉を行っています。例えば、夫婦で夕食のレストランを決める、子どもが親とお小遣いの増額について話し合う、家電量販店で店員に値引きが可能か尋ねる…。これらはすべて交渉の一種です。
そして、交渉によって希望通りの結果を得られることもあれば、冒頭の米国・ウクライナのように関係が悪化してしまうこともあります。
では、どうすれば自分の願望を叶えつつ、交渉を円滑に進めることができるのでしょうか?
そこで参考になるのが、今回ご紹介する『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』(ロジャー・フィッシャー 他著/三笠書房 刊)です。本書は、世界的ベストセラー『GETTING TO YES』の新版で、一筋縄ではいかない交渉において、ベストな結論を導き出すための手法、「ハーバード流交渉術」について解説しています。
交渉に欠かせない「4つの原則」とは?
ハーバード大学名誉教授にして交渉学の世界的権威、ロジャー・フィッシャーらが提唱する「ハーバード流交渉術」とは、次のようなものです。
この戦略では、双方が何をする意志があって何をする意志がないかの“条件”をめぐって争うかわりに、交渉の“実体”に注目して結論を出す。お互いの利益を追求しつつ、利害の対立がある部分は、客観的で公平な基準にもとづいて落としどころを探るのである。(『ハーバード流交渉術』12ページ)
つまり、相手との「駆け引き」ではなく、友好的かつ効率的に交渉し、双方が納得できる結果を得ることを目指すというものです。
そして、この交渉術には、次の4つの原則があると著者たちは言います。
人――――人と問題を切り離す
利益―――「条件や立場」ではなく「利益」に注目する
選択肢――お互いの利益に配慮した複数の選択肢を考える
基準―――客観的基準にもとづく解決にこだわる(『ハーバード流交渉術』34ページ)
例えば、1つ目の「人と問題を切り離す」という原則。
人はそれぞれ異なる価値観や考え方を持っています。それを基に、各々が希望条件などを主張すると、やがて感情的な議論となり、冷静な判断ができなくなる恐れがあるため、交渉ではまず人間的要素を切り離し、同じ立場に立って問題解決に取り組むことが重要だと著者は述べています。そして、相手を敵ではなく、共に問題に向き合うパートナーと捉えることで、建設的な議論が可能になるといいます。
では、そのためには何をどう実践すればいいのか? 『ハーバード流交渉術』では、その具体的な方法も詳しく解説しています。
交渉は日常生活からビジネスの現場まで、あらゆる場面で求められるスキルです。だからこそ、交渉術の知識を身に付けることは、誰にとっても大きな武器となるはず。この本をまだお読みでない方は、ぜひご一読ください。
(編集部・油屋)
* * *
「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
このPick Up本を読んだ方は、
他にこんな記事にも興味を持たれています。
-
「読書週間」に読みたい “本を読む”技術を体系的に整理した、読書術の古典的名著
-
知っているようで知らない “上手な最期”を迎えるために大事なこととは?
-
「もしトラ」の前に読んでおきたい 大統領時代のトランプ政治の舞台裏