コロナ禍でリモートワークが普及した今日、従業員の働きぶりを過度に心配する管理職が増えています。米マイクロソフトでは、このような管理職の動きを「生産性パラノイア」と呼んでいます。同社が2022年9月22日に公表した調査では、主要国の企業で働く管理職の85%が、従業員の働きぶりに不安を抱いていることが明らかになりました。この問題は、出社を前提とする企業よりも、在宅勤務と出社を組み合わせた「ハイブリッド勤務」を行う企業の方でより深刻化しているといいます(「在宅勤務を潰す「生産性パラノイア」 Microsoft指摘」/日本経済新聞電子版2022年9月23日)。
ところで、「生産性パラノイア」のようなコミュニケーションの問題は、リモートワークの普及によって新たに発生したものなのでしょうか。
今週Pick Upする本『職場の「感情」論』(相原孝夫 著/日経BP・日本経済新聞出版本部 刊)は、こうした職場の人間関係の問題を解決し、生産性の高い組織に変えるためのヒントを示してくれる書籍です。本書では、リモートワークで発生するコミュニケーションの問題について、次のように指摘しています。
コミュニケーションの前提となっている「信頼関係」については、もともと多くの職場が抱えていた問題だが、直に顔を合わせる関係の中では、十分な信頼関係がなくても、それなりになんとかなってきた面はあった。それがリモートワークとなり、十分な信頼関係がない中では、コミュニケーション上の齟齬が大きく生じるようになり、改めて顕在化してきた。
(『職場の「感情」論』 43ページ)
つまり、信頼関係に関する問題はリモートワークの普及以前から存在していたものの、皆が出社していた時はそこまで大きな問題になりませんでした。ところが、リモートワークという、コミュニケーションスキルがより求められる状況が出現したことで、この問題が表出してきた、というのです。
では、職場で働く人たち同士の信頼関係という「感情」の問題にリーダーが配慮するには、どのようなところに目を向ければよいのでしょうか。本書では、そのポイントの1つとして「マイクロムーブ」を紹介しています。
「マイクロムーブ」とは、メールの返信が遅れたとか、ランチに誘わなかったとかいった、その瞬間には取るに足りないことのように思えるが、互いの関係に影響を及ぼす、些細な行動や態度のことである。(中略)危険なのは、その些細な言動をとった時には、それが自分と同僚との関係に大きな影響を及ぼすことが認識できないという点である。
(『職場の「感情」論』 77ページ)
例えば、メールの返信が少し遅れても、返信した本人は何も思わないかもしれません。ですが、メールの相手が早急な返信を求めていた場合、相手にはネガティブな感情が残る可能性があります。「蟻の穴から堤も崩れる」ということわざもありますが、些細なことの積み重ねが、職場の人間関係に大きな影響を与えるのです。
職場で起こるマイクロムーブへのリーダーの関与の仕方について、著者は次のように提案しています。
ネガティブなマイクロムーブは放っておいても容易に起こる。それゆえ、できるだけ意図的に、多くのポジティブなマイクロムーブを起こす必要がある。優れたリーダーが、頻繁に声掛けをしたり、小さな進捗や成長を認めてフィードバックしたりするのには明らかなメリットがあるのだ。
(『職場の「感情」論』 84ページ)
リーダーには、ポジティブなマイクロムーブを積極的に起こす役割が求められます。
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NTTは今年7月より、3万人の社員を原則リモートワークとしました。その一方で、ホンダは5月から原則出社に切り替えています。また海外では、イーロン・マスク氏がテスラと宇宙企業スペースXの社員に「毎週、最低40時間オフィスで働くのが嫌だという者は、他の就職先を探すべきだ」という出社を促すメールを送り、物議をかもしました(「出社はコロナ前の6割 企業、働き方の最適解を模索」/日本経済新聞電子版2022年7月21日)。
ウィズ・コロナの時代の企業は、多様な働き方を模索しているように思います。ただし、どのような働き方を選択しても、人間同士が働いている以上、「感情」のマネジメントの問題はついてまわるでしょう。
『職場の「感情」論』は、リモート/出社にかかわらず、社員が気分よく働くことで生産性を上げるための秘訣を教えてくれるビジネス書です。特にマネジメント層のビジネスパーソンに、一読をおすすめします。
(編集部・小村)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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