本日3月3日は、ひな祭り。古くから、ひな人形を飾り、女の子の健やかな成長を願う行事として親しまれてきました。
健やかに成長した女の子たちは社会人となり、今、企業の中で存在感を増しています。厚生労働省の調査によると、令和5年の労働力人口は男性が4万人減少したのに対し、女性は28万人増加。労働力人口総数に占める女性の割合は45.1%で、ここ数年上昇傾向にあります(「令和5年版働く女性の実情」厚生労働省)。
そこで今回は、女性の働き方について参考になる1冊をご紹介します。
働く女性の2人に1人が「フルキャリ」志向
かつて働く女性は、キャリア重視の「バリキャリ」か、生活を優先するパートタイム労働者かの、大きく2つに分かれると思われてきました。
しかし近年、仕事と生活どちらか一方を優先するのではなく、どちらも同じ熱量で向き合いたいと考える女性が増えてきているといいます。かくいう私もその1人です。独身時代から結婚、出産までは、全力で仕事に向き合ってきたものの、出産を経て価値観が大きく変化しました。
かわいい子どもの成長をできるだけ近くで見届けたい、でも専業主婦になるには、経済的にも厳しいし、そもそも家事が苦手なので向いてない…。そして、これまで打ち込んできた仕事も諦めたくない。そんなふうに悩んでいた時に出合ったのが、本書『フルキャリマネジメント 子育てしながら働く部下を持つマネジャーの心得』(武田佳奈 著/東洋経済新報社 刊)でした。
2019年に出版されたこの本は、働く女性や育児休業取得率が増え続ける中で、「子育てしながら働く」部下を持つマネジメント層に多くの気づきを与えてくれます。
まず、タイトルにある「フルキャリ」とは何のことでしょうか? 本書では次のように述べています。
暮らしにも子育てにも、仕事にもキャリアにも、意欲的に取り組みたいと考える働き手の総称。キャリア重視の「バリキャリ」でも、私生活重視の「ゆるキャリ」でもない新しい価値観や思考・行動特性を持つ働き手として、野村総合研究所が提唱。
(『フルキャリマネジメント』 カバーそで)
仕事にも子育てにも、意欲的に取り組みたい働き手を指す言葉のようです。本書でフルキャリは、仕事と家庭、どちらも「Fulfillしたい(全うしたい)」と考える分、時間・肉体・精神的に、「Full(溢れるほどいっぱい)」になりやすいという特徴があると書かれています。これを読んだ時、もしかしたら私はフルキャリなのかもしれないな、と思いました。
著者が行った5000人を超えるアンケート調査では、働く女性の2人に1人はフルキャリという結果になりました。フルキャリは、仕事への高い意識を持ちながら、ライフイベントにも積極的であるために、従来の環境では、そのパフォーマンスを最大化できてこなかったと著者は指摘しています。
それはつまり、フルキャリにはマネジメント次第でパフォーマンスが大きく伸びる可能性があることを意味します。
人材不足時代において、従来の環境では必ずしもパフォーマンスを最大化できてこなかったが、パフォーマンス拡大の伸びしろが大きいフルキャリ1人1人のパフォーマンスを最大化できるマネジャーこそが、チームや組織の成長をけん引する、これからの組織にとって必要不可欠な存在なのです。
(『フルキャリマネジメント』 66ページ)
フルキャリの力を引き出すマネジメントのカギとは?
伸びしろの大きなフルキャリの力を引き出すには、どうすればよいでしょうか? 本書は、フルキャリのマネジメントのカギは以下の『3つの「き」』にあると述べています。
「仕事での成長を期待する(期待)」、
「仕事への意欲と取り巻く家庭の状況を共有する(共有)」、
「成果につながる積極的な機会付与(機会付与)」(『フルキャリマネジメント』 126ページ)
1つ目の「期待」は、マネジャーが部下に対して、仕事上で成長し、成果を出して貢献してくれることを「期待している」と伝えることがとても有効だということです。著者が行ったアンケート調査によると、現状では、管理職が思っているほど、フルキャリは自らにかけられている期待を自覚できていないという結果が出ています。
フルキャリが上司からの期待を実感し、自覚することができると、次に必要な情報の「共有」が円滑に進みます。フルキャリの場合は、一般的な目標や成果、課題の共有のほかに、「仕事やキャリアへの意欲の本音」と「働く本人を取り巻く家庭環境」についての共有がとても大切だといいます。
現状はともかくとしてどのように仕事に向き合いたいと考えているのか、子どもやパートナーの現状、仕事と子育てを両立する上で得られるサポート、今後検討してみたいと考えているサポート、得ることが難しいサポートなどをできるだけ共有することが有効です。
(『フルキャリマネジメント』 129~130ページ)
「そんな個人的なことを聞いてもいいのか」と思う管理職の方もいるかもしれませんが、フルキャリ本人は家庭状況を上司と共有することに対してネガティブではない、と著者は述べています。その理由は、共有した方が仕事をしやすくなると考えているからです。
ただし、「仕事やキャリアへの意欲の本音」について、最初から本人がすらすらと口にする可能性は低いといいます。思い返せば、私も産後の復職の際、右も左もわからない育児の中で、自分がどのように働きたいのかを明確に言語化することは難しかったように思います。著者は上司の立場にある人に、本人がうまく伝えられないからといって、仕事への意欲が低下していると早々に結論づけてしまわないよう忠告しています。
最後の「き」は「機会付与」です。
仕事復帰したばかりだから、子供が小さいから「無理をしないで」という気遣い。それは大変ありがたく思う一方で、せっかくなら、子育てしながらでもやりがいのある仕事に取り組みたい、仕事を通して成長していきたい、と思うのがフルキャリです。
周囲の期待に応えることこそがやりがいであり、モチベーションにつながると本書は述べています。マネジャーは、女性だから、小さい子どもを抱えているから、時短勤務だからといって遠慮や敬遠せずに、他の部下と同じように成長の機会を与えることが、フルキャリの力を引き出すことにつながるのかもしれません。
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このように、『フルキャリマネジメント』には、子育てしながら働くフルキャリのパフォーマンスを引き出すマネジメントの考え方や具体的な取り組みが紹介されています。育児と仕事の両立に戸惑うフルキャリの様々な状況が的確に言語化されており、私にとってもこれからの働き方や仕事への向き合い方の参考になりました。
本書では女性の働き手に焦点を当てていますが、フルキャリは男性にも存在します。今まさに、育児に奮闘するビジネスパーソンはもちろん、子育て中の部下を持つ管理職の方々にもぜひ読んでいただきたい1冊です。
(編集部・福尾)
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