「スマホ認知症」にご用心
「スマホ認知症」をご存じでしょうか。
認知症と似た症状(物忘れや集中力の低下など)が、スマートフォンの使い過ぎを原因として起こるというものです。スマホが必須アイテム化する今日、特に若年層で患者の増加が懸念されています。
「まだまだ若いし、自分は認知症とは無縁だろう」と思われた方は、ご自身を振り返ってみてください。次のようなことに心当たりはないでしょうか?
・人の名前がパッと出てこない
・一昨日の晩ご飯に何を食べたか思い出せない
・誰かと話している時に、とっさに気の利いた言葉が出てこない
もしこうしたことに当てはまり、しかも日々スマホを手放せない、必要もないのについ見てしまう、というようなら、スマホ認知症の可能性があるかもしれません。
こうした状態では、仕事の能率も上がらないでしょう。では、心当たりのある人は、どうすればいいのでしょうか。
今週は、そのヒントを教えてくれる本、『本を読むだけで脳は若返る』(川島隆太 著/PHP研究所 刊)をPick Upします。
著者は、脳科学者の川島隆太氏。ゲームなどで有名な「脳トレ」の第一人者といえば、「あの川島教授か」と思いあたる方も多いのではないでしょうか。
本を読むだけで脳は若返る
なぜ、スマホの使い過ぎが認知症のような症状を引き起こすのか。
その原因は、スマホの長時間使用により、膨大な情報が脳に流れ込み続けることだとされています。このような状態に置かれると、脳はあまりに多くの情報にさらされ、入ってきた情報をうまく整理できなくなります。そのため、情報の山の中から必要なものを取り出す(=思い出す、言葉にする)こともできないのだそうです。
脳科学的には、このような時の脳は「深く考える」ことができていない状態。なんと、何もせずにボーっとしている時よりも、脳活動が低下しているそうです。
本書『本を読むだけで脳は若返る』では、脳が活発に活動することの重要性を「脳の全身運動」という言葉を使って語っています。
毎日、全身運動している人は、子どもも大人も健康的な身体を維持し、必要な筋力があれば、すぐに鍛え上げることができるものです。(中略)それと同じように、毎日のように脳の全身運動をしている人は、そうでない人と比べて、さまざまな能力が発現しやすい状態になっているのです。
(『本を読むだけで脳は若返る』19~20ページ)
裏返すと、毎日脳の全身運動をしないと、いろいろな能力を発揮しにくいということ。では、脳の全身運動をするためには、何が効果的なのでしょうか?
本書のタイトルから予想がつくかもしれませんが、答えは「読書」です。
本書は、本を読んだ時の脳の活動を調べた結果、「活字を読むと脳が全体的に活動する」と指摘します。つまり、こういうことです。
本を読むということは脳の全身運動になる。
(『本を読むだけで脳は若返る』27ページ)
興味深いのは、「本の中身や種類は関係ない」ということです。小説でもそれ以外でも、活字が中心でさえあれば、どんなジャンルの本でも効果があるというのです。
脳を鍛えなければ、と思い詰めすぎると、つい難しい本を選び、結局読み切れずにスマホを手に取ってしまう…ということになりがちです。自分の好きなジャンル、読みたい本を読めばOKというのは、読書に向かうハードルを下げてくれるのではないでしょうか。
紙の本を読もう
と、ここまでこの記事を読んでいただいた方は、次のような疑問をお持ちではないでしょうか。
「ネット記事や電子書籍など、紙の本以外でも脳に効くのか?」
ウェブコンテンツを提供している側としては「もちろんです!」と言いたいところ。ですが、残念ながらそうとは言えないようです。『本を読むだけで脳は若返る』は、次のように書いています。
論文を広く調べていくと、読書については心理学的な実験が多くあり、デジタルコンテンツよりも紙媒体による読書のほうが、語彙習得や文章理解力、知識の量、社会への応用度が向上するという研究結果や指摘がたくさん見つかります。
(『本を読むだけで脳は若返る』38~39ページ)
なぜ、紙の本がよいのか。その理由の1つとして、本書は「割り込み」現象を挙げています。
スマホやタブレットなど、文章を読む電子機器の多くは、インターネットとつながっています。スマホで読書をしている時にLINEの通知が来たら、多くの人は読書を中断して、そちらを見てしまうでしょう。この「気の散りやすさ」が、脳にとっては悪影響となるというのです。
ということで、読書の際は「紙の本を読もう」ということになります。
その時は、できるだけスマホを手元に置かないようにしておくのが良いかもしれません。
音読するとさらにいい
読書というと、黙々とページをめくる姿をイメージする方も多いかもしれません。ただ、『本を読むだけで脳は若返る』によると、脳を鍛えるという観点からは「口に出して読む」こともとても大事なようです。
黙読は目で文字を見て、その内容を脳の記憶する場所に一時的に蓄えながら意味を理解していきます。音読は、文字を見るだけでなく、それを声に出すという運動の変換も脳の中で行われます。また、目で見た文字の情報を声に出すことで、再び自分の耳にその情報が入ってきます。同じ1つの情報でも、脳の観点から言えば、目から入ってくる情報、自分の口や喉を動かすときに使う情報、音として再び耳に入ってくる情報があり、二重三重に脳を使います。
(『本を読むだけで脳は若返る』64~65ページ)
その効果はてきめんで、本書の実験によると、600~800字の文章を毎日音読するだけで、2週間後には明らかに記憶力が伸びたといいます。
スピーチなどで聞き手が理解しやすいペースは、一般的に1分間300文字程度と言われています。仮にそのペースで600~800文字の文章を音読するなら、だいたい2~3分ほど。これぐらいなら、忙しい日々の中でも習慣にできそうではないでしょうか?
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まとめると、「好きな本を」「紙で」「音読する」。これを意識して、いつもスマホに使っている時間を数分だけ、読書に使ってみてはいかがでしょうか。
きっと、少しずつでもスマホ認知症を予防する助けになってくれることでしょう。
(編集部・西田)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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