2024年3月号掲載
本を読むだけで脳は若返る
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年12月28日
- 定価990円
- ページ数181ページ
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著者紹介
概要
読書は脳を活性化させる! 脳科学者の川島隆太氏が、読書がもたらす効用を、研究結果を示しつつ説く。本の中身や種類は関係ない、デジタルより紙媒体の方が効果的、音読で認知症の症状が改善…。驚きの事実を明かすとともに、スマートフォンの使用が脳に及ぼす弊害にも触れる。スマホを置いて、今すぐ本が読みたくなる1冊だ。
要約
読書は脳の全身運動である
読書には、私たちが想像している以上に、脳を活性化する効果がある ―― 。
本を読むだけで脳全体が活性化する
私が所長を務める東北大学加齢医学研究所では、MRI(磁気共鳴画像)装置などの計測機器を使って、脳の活動量を測る実験を30年ほど前から行っている。その中で、読書にかかわる実験も数多くしている。
ある実験では、20~30人の方々にMRI装置に入ってもらい、新聞記事を黙読してもらった。そして、1人1人の脳の状態を計測した。
その結果、黙読すると脳の前(額側)の横が左右ともよく活動していることがわかった。ここは「背外側前頭前野」と呼ばれるところで、「思考の脳」と言われることもある。ものを考えている時、創造をしようとしている時、この「思考の脳」が働くことが脳科学の分野では知られている。
活動している場所は脳の後ろ(背中側)にもあった。後頭葉から側頭葉の下弦にかけての領域だ。後頭葉は主に視覚情報が扱われる領域で、側頭葉の下弦は様々な記憶が格納される領域である。さらに、視覚の領域や聴覚の領域にも反応が出た。つまり、活字を読むと脳が全体的に活動するのだ。
この実験結果から1つの結論として言えるのは、「読書は脳の全身運動になる」ということだ。
本の中身や種類は関係ない
では、この脳の全身運動に効果的な本の種類はあるのだろうか。
結論から言うと、脳の活動は読む本の内容によって変わることがあまりない。自分が読みたい本であれば、どんなジャンルの本でも同じように脳の全身運動ができると考えている。
1つ助言すると、小説や新聞記事のように活字が中心のものを読むと、脳が全体的に働きやすいということが実験からわかっている。一方、写真やマンガが中心の雑誌や書籍を読んでいる時は、「思考の脳」はあまり働かない。活字を中心とした本を読んだ方が、脳の全身運動になるといえる。
読書は紙の本が良いのか?
読書については心理学的な実験が多くあり、デジタルコンテンツよりも紙媒体による読書の方が、語彙習得や文章理解力などが向上するという研究結果がたくさん見つかる。
どうして紙の本とデジタルコンテンツでは、読書による効果に大きな差が出るのか?