79回目の「終戦の日」を前に
今年も、8月15日が近づいてきました。
79回目の「終戦の日」を前に、戦争とは、平和とは何かと、改めて考える方も多いのではないでしょうか。
今週は、ジャーナリストの池上彰氏が日本と世界の「戦後」を振り返り、戦争をなくすための教訓を探った本、『世界から戦争がなくならない本当の理由』(祥伝社 刊)をPick Upします。
TOPPOINTライブラリーでは、2019年刊行の祥伝社新書版をご紹介していますが、こちらは、戦後70年の節目であった2015年に刊行された同名書籍に大幅に加筆修正したものです。
本書が世に出てから10年近く経つことになりますが、世界から戦争は依然としてなくなっていません。
むしろ、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの武力衝突、さらにはイランとイスラエルの対立の激化など、世界は激しく争う方向に向かっているようです。
なぜ、平和への道はこれほど遠いのか? 本書は、そうしたことを考えるヒントになる1冊です。
なぜ世界で戦争が絶えないのか
池上氏は、第二次世界大戦後の世界で起きた「戦後の戦争」について、次のように書いています。
この74年間に起きた軍事衝突に深く関わってきたのは、世界中から反省を迫られた日本やドイツではなく、むしろ第二次大戦の戦勝国です。
(『世界から戦争がなくならない本当の理由』 251ページ)
例えばベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争…。いずれも、戦勝国であるアメリカが深く関わった戦争です。
池上氏は、アメリカがこうした戦争に関わった理由を読み解く1つのカギとして、「成功体験」を挙げています。例えば、第二次世界大戦での勝利や、1991年の湾岸戦争での勝利です。これらの「成功体験」は、アメリカに自国の国力への自信を深めさせました。
では、その結果何が起こったのか。
第二次世界大戦の後にはベトナム戦争に、湾岸戦争の後には9.11を経てアフガニスタン戦争やイラク戦争に、アメリカは突入しています。どちらの戦争も、泥沼の戦いになったことで有名です。
戦えば勝てる、と思っているのならば、戦争という選択肢を避けようとしないのも当然でしょう。ですがその結果、アメリカは大失敗を経験し、しかもその失敗を何度も繰り返しているのです。
池上氏はこうした戦後世界の歩みを、こう嘆いています。
このように、戦争から得た教訓を活かすのは簡単ではありません。痛い目に遭ったときだけ反省し、勝てば「次もイケる」と考えているようでは、戦争はなくならないでしょう。ほとんどの戦争はどちらかが勝って終わるのですから、その成功体験が必ず次の戦争を呼び寄せることになり、「負の連鎖」が延々と続いてしまうのです。
(『世界から戦争がなくならない本当の理由』 28ページ)
この指摘は、2022年2月に始まって以来、今なお終わりが見えないロシアのウクライナ侵攻にも当てはまるのではないでしょうか。
ロシアのプーチン大統領は、電撃的にキーウを制圧する勝算があってウクライナ侵攻に踏み切ったと言われています。その背景には、2014年に情報戦などを駆使してクリミア半島併合を成し遂げたことも、1つの要因としてあったと考えられます。
ですが、その結果は周知の通り。かつての成功体験が、泥沼の長期戦を招いた例といえるのではないでしょうか。
日本の反省すべきこと
もちろん、第二次世界大戦の戦勝国が戦後世界の戦争に深く関わってきたからといって、日本に反省すべき点がないわけではありません。むしろ池上氏は、戦後日本の取り組みを厳しく批判しています。
日本の戦争犯罪を戦勝国が裁いた東京裁判、GHQに「押しつけられた」日本国憲法など、日本は、自分たちの戦争の責任を自らの手で問うてこなかった、というのです。
こうした見方には賛否両論があるでしょう。それでも、戦争を直接経験した世代が数少なくなっていく中、戦争の教訓を風化させないためには、こうした指摘があることをまず認識しておくことが大切ではないでしょうか。
「終戦の日」を前に、これらのことについて改めて整理し、考えてみてはいかがでしょうか。
「戦後」の終わり
池上氏は、第二次世界大戦後の世界を振り返り、「私たちは「戦後」をいつまで続けることができるか」と書いています。
例えば、ウクライナにとってみれば今はまさに「戦中」。そして、日本はロシアにとってウクライナの反対側に位置する隣国です。また朝鮮半島には、ミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮も存在します。2020年代前半が日本にとって「戦後の終わり」になることは、十分に考えられることです。
戦争の時代にあって、平和のために日本と世界は、過去の経験から何を学ぶべきか。『世界から戦争がなくならない本当の理由』は、それを教えてくれる良書です。
なお、2024年3月には、本書に新章を追加し、全体に加筆修正を行った『新・世界から戦争がなくならない本当の理由』(祥伝社)が刊行されています。今から新たに読まれる方は、そちらも検討してみてはいかがでしょうか。
(編集部・西田)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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