2022年12月号掲載
世界から戦争がなくならない本当の理由
- 著者
- 出版社
- 発行日2019年8月10日
- 定価924円
- ページ数255ページ
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著者紹介
概要
第二次世界大戦が終わって70年余り。しかし、戦争やテロは、常にどこかで起きている。ベトナム、アフガニスタン、中東、そしてウクライナ…。「戦争のない世界」はやって来るのか。そして、日本は本当に「平和」なのか。多方面で活躍するジャーナリストが、戦後の世界と日本を振り返り、戦争をなくすための教訓を引き出す。
要約
なぜ世界から戦争はなくならないのか
「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」 ―― 。
広島平和記念公園にある原爆死没者慰霊碑にあるこの言葉は、「主語」がないことで有名だ。主語がないので、繰り返してはいけないのが誰の「過ち」なのかが、はっきりしない。
原爆投下による民間人の虐殺は戦争犯罪である。だから、アメリカの「過ち」だという人もいる。その一方、日本が戦争を始めたこと自体が「過ち」だったと考える人もいる。どちらであれ、「過ち」を繰り返してはいけないことは間違いない。
そこで必要なのは、しっかりと過去から学び、反省をして、現在と未来に活かせる教訓を引き出すことである。
戦争に懲りた結果、戦争を起こしたソ連
ただし、戦争から教訓を得たからといって、それが必ずしも「不戦」につながるわけではない。戦争を経験した国が「もう絶対あんな目には遭いたくない」と考えて対策を講じた結果、自ら紛争のタネを作ることもある。
例えば、かつてのソ連がそうだ。ソ連は、第二次世界大戦で多くの犠牲者を出した。2700万人もの命が失われたため、ひどいトラウマになった。
そこで、過ちを繰り返さないために、ソ連が何をしたか。彼らは、二度と侵略を受けないようにするには、国境の外に緩衝地帯を作らなければいけないと考えた。そのためソ連は、西欧と自国の間にある東欧諸国を社会主義化した。それが、過去の教訓から導き出したソ連の戦争防止策だった。
しかし、これによって「東西冷戦」が始まり、世界は緊張度を増していった。
また、こうしたソ連のやり方は、本物の戦火も引き起こした。発火点は、ソ連の南にあるアフガニスタンだ。アフガニスタンはイスラム教徒の国ということもあって、ソ連の支配下には入ろうとしない。ソ連にしてみれば、隣に自分の言うことを聞かない国があるのは恐ろしい。そこでソ連は、アフガニスタンの共産主義政党を支援してクーデターを引き起こし、政権を握らせた。しかしそれに反対するクーデターも起きたため、1979年にソ連が軍事介入をする。
このアフガニスタン紛争は、1989年まで続いた。先の大戦から得た教訓を“活かした”結果、ソ連はアフガニスタンで10年にも及ぶ戦争をしたわけである。
戦争の「成功体験」が過ちを生む
一方、戦争の成功体験から得た教訓が、次の失敗を引き起こすこともある。