2022.8.15

編集部:油屋

連合国に勝利をもたらした「賢慮のリーダーシップ」について、経営学の世界的権威が解き明かす

連合国に勝利をもたらした「賢慮のリーダーシップ」について、経営学の世界的権威が解き明かす

 本日8月15日は終戦記念日です。

 第2次世界大戦の終結から77年がたった今なお、ロシアによるウクライナ侵攻など、世界では戦争・紛争の火は消えていません。1日も早く平和が訪れることを願うばかりです。

 先週、編集部・西田が「今週のPick Up本」で紹介した『敗戦真相記』では、第2次世界大戦がなぜ起こったのか、なぜ日本が破れたのか、その“真相”が語られていました。


 今回は視点を変えて、英米をはじめとした連合国が第2次世界大戦で勝利した要因にスポットを当てたいと思います。

 紹介する本は、『史上最大の決断 「ノルマンディー上陸作戦」を成功に導いた賢慮のリーダーシップ』(野中郁次郎、荻野進介/ダイヤモンド社)です。

 なお、著者の野中郁次郎氏は、第2次世界大戦における日本軍の敗因を分析した名著『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』の執筆者の1人です。

 ノルマンディー上陸作戦とは、1944年6月6日に連合軍によって行われた、ドイツ占領下のノルマンディー(フランス北部)への侵攻作戦です。「史上最大」という本書タイトルの通り、この上陸作戦に従軍した将兵の数は約300万名。作戦当日には2万機に及ぶ戦闘機が、かの地の空を飛んだといいます。
 ノルマンディー上陸作戦には、イギリスやアメリカ、ソ連などの多数の政治家が深く関与していました。計画から実行まで2年2カ月を費やしたこの作戦は、第2次世界大戦の勝敗を決定づけたといわれています。

 ノルマンディー上陸作戦が成功し、連合国側が勝利を収めた要因の1つとして、本書では「実践知」に長けたリーダーの存在を挙げています。

 実践知とは、社会が奉じる「善いこと」の実現に向かって、物事の関係性に目を配りながら、適時かつ絶妙な「判断」を行う力のこと。

 

 では、実践知に長けたリーダーが備えていたのは、具体的にどのような力なのか。

 著者らは、重要なのは次の6つの能力だと指摘します。

 

  • ①「善い」目的をつくる能力
  • ②ありのままの現実を直観する能力
  • ③場をタイムリーにつくる能力
  • ④直観の本質を物語る能力
  • ⑤物語りを実現する能力(政治力)
  • ⑥実践知を組織する能力


  “実践知リーダー”の代表格として、本書は英国の首相ウィンストン・チャーチルを挙げています。

 例えば、チャーチルは、善悪の判断が非常に明快だったそうです。
 チャーチルの前任の首相だったネヴィル・チェンバレンらは、対ナチス宥和政策を採っていました。代表的なのが、ヒトラーの要求に従い、チェコスロバキアのズデーテン地方のドイツへの割譲を決めた「ミュンヘン会談」です。

 これに対して、チャーチルは「我々は文明と自由を守らなければならない」と唱え、ただ1人、本気でヒトラーに対峙しようとします。
 彼には、英国民がキリスト教文明と自由主義の守護者であるという認識と、人類が長い歴史の中で築き上げた民主主義という共通善を守るという意思がありました。

 ナチスへの徹底抗戦を呼びかけるチャーチルの演説には、その覚悟と気概が溢れていたそうです。そして、彼がつくったその「善い」目的に感動し、全英国民が一丸となったのです。

 ノルマンディー上陸作戦をはじめ、ビジネスや日常生活で役立つ歴史上の成功・失敗事例は少なくありません。私たちは歴史から様々な教訓を得ることができます。

 

 本書では、歴史から教訓を引き出す方法として、「歴史に“IF(もし)”をあえて持ち込み、史実に基づくシミュレーションを行う」というものを紹介しています。これによって洞察力を高められ、当時の人々が下した決断のプロセスもより深く理解することができます。
 もし、第1次大戦後の日本の国策が違うものだったら、もし国際連盟を脱退していなかったら、もし真珠湾攻撃を実行していなかったら…。

 当時の情勢や敗戦の原因を冷静に分析し、万が一、似たような情勢になった時に日本はどういう行動をとるべきか検討する。実践知を高め、平和であるために何ができるのか考えておくことが、今を生きる私たちにできることの1つではないかと思うのです。

(編集部・油屋)

*  *  *

 「今週のPick Up本」では、ビジネス書に日々触れている小誌の編集部員が、これまでに要約した書籍の中から「いま改めておすすめしたい本」「再読したい名著」をご紹介します。次回の“Pick Up本”もお楽しみに。

2014年9月号掲載

史上最大の決断 「ノルマンディー上陸作戦」を成功に導いた賢慮のリーダーシップ

ノルマンディー上陸作戦 ―― 第2次世界大戦の勝敗を決定づけた史上最大の作戦は、「賢慮のリーダーシップ」が成功をもたらした。天才政治家チャーチルはじめ、多彩なリーダーたちが下した戦場の決断。彼らの意思決定の軌跡を追いながら、「最善の決断」を下すために必要な能力は何かを問う。経営学の世界的権威による、「危機の時代」のリーダーシップ論。

著 者:野中郁次郎、荻野進介 出版社:ダイヤモンド社 発行日:2014年5月

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