2022年4月号掲載

敗戦真相記

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著者紹介

概要

なぜ第2次世界大戦は起こったのか。日本が敗れた理由は? 戦中、戦後の政財界で活躍した著者がその真相を語る。マネジメント能力の欠如、官僚の無能さ、陸海軍の縄張り意識…。指摘される敗因は、今の日本が国力を衰えさせている原因にも通じる。終戦直後の1945年9月、広島で行われた講演をもとに刊行された書である。

要約

戦争はどのようにして起こったのか

 日本は、第2次世界大戦で敗けた。しかも完全に。何ゆえ、戦争は起こったか? どうしてそれに敗けたのか?

国策の基本的理念の誤り

 この戦争の最も根本的な原因は、日本の国策の基本的理念が間違っていたことである。

 口では「万邦共栄」と言いながら、肚の中では日本だけ栄えるという日本本位の考え方を国策の指導理念にしていた。すなわち、日本の利益のみを目的とする自給自足主義を「大東亜共栄圏建設」の名で強行したことが、この戦争が起こった根本的な原因である。

 元来、ペリーが浦賀に来た時には、日本国民は彼我の間に文化の差を発見し、一時は盲目的な欧米心酔論者が横行した時代さえあった。その頃に、こんな強国を相手に戦争をしようなどと大それたことを考えた者は1人もいなかった。

 だが、開国当時は四等国以下の国力でしかなかった日本が次第に三等国、二等国となり、ついに日清・日露の両戦争を終えると、一等国の仲間に入ったと自負するに至る。さらに第1次世界大戦に連合国側に参加して勝利を占めると、押しも押されもせぬ世界の五大強国の1つとなった。

 この一番得意な時代に、今日の日本の禍因の種が蒔かれた。古人の言う「事を敗るは多く得意のときに因す」とは、まさにこのことである。

 最初は、この小さな島国が強大な欧米の諸勢力の間で独立を保っていくことが手一杯の目標だった。だが、国運が伸びるにつれて、他国の世話にならずに日本だけで立ち行くことのできるような、いわゆる自給自足体制を取ろうという考え方が国民の間に広がった。軍部の指導者は、東亜十億の支配者たる位置は、日本に対し天から授けられた任務であるとさえ自負するようになった。

戦争の要因①:指導者がドイツの物真似をした

 この自給自足主義が戦争の胚子であるが、この胚子に対して水とも太陽熱ともなり、これを不幸なる戦争にまで育て上げたいくつかの事情がある。

 明治維新以来、日本の軍閥官僚はドイツを目標にしていた。軍部が日本の指導勢力を占めるようになると、日本とドイツの国情が似ていたものだから、ますますドイツ心酔の傾向が強くなった。すなわち、日本の軍部が東洋の制覇を目指していた頃、ドイツ民族は世界で最も優れた文化を持った、神に選ばれたる民族、いわゆる選民であるという自惚れた思想の下に、欧州新秩序の建設という美名を掲げて侵略戦争に突き進んでいた。

 また、ドイツの指導者であるヒトラーは、日本の指導者とは比較にならないほど卓越した政治的手腕を持ち、次々と華やかな芝居を打って巧みに人心をつかんでいた。ただでさえドイツ心酔の根強い軍部はナチスドイツの真似をするようになり、法律などもそのまま直輸入した。

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