2025年6月号掲載
西洋近代の罪 自由・平等・民主主義はこのまま敗北するのか
- 著者
- 出版社
- 発行日2025年4月30日
- 定価1,155円
- ページ数348ページ
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著者紹介
概要
今、民主主義を押しのけ、排他的な権威主義が力を増している。アメリカで、ロシアで、西側諸国で。この現象の意味を、民主主義と資本主義の関係に着目して、分析した。ヨーロッパにおける右派勢力の躍進、トランプ大統領の再選と支持者の傾向など、個々の出来事を解釈しつつ、現在の政治的・経済的な状況を明らかにする。
要約
離婚の危機にある民主主義と資本主義
長い間、政治における民主主義と経済における資本主義との間には車の両輪のような関係があると信じられてきた。資本主義と親和的な政治制度は、自由民主主義のみだと考えられてきたのだ。
近代民主主義のための条件
民主主義とは何か。その本来の意味は、「人民demosの支配(力)cracy」である。
近代的な民主主義のもとでは、議会は政党を媒介にして、人民の意思を代表する。古代の民主主義(ギリシア)と近代の民主主義を隔てる最も重要なポイントの1つは、政党の存在の承認にある。
古代の民主主義にとっては、党派(スタシス)は最大の脅威であった。もし政治家が、部分の利益のために行動したら、「全体」のための政治は成り立たない。それゆえ、党派を作ることは民主主義(人民の支配)を損なうことだと考えられていたのだ。
では、どうして近代の民主主義においては、政党(部分)の存在が認められているのか。
それは、個々の政党の明示的な主張の前に、政党間を横断する暗黙の合意が存在しているからだ。
民主的な選挙が成り立つためには、投票者たちの間に、自分と敵対する者も「私のことをも配慮した上で私とは異なる意見をもっている」と実感できるような基本的な合意がなくてはならない。政党=部分としての主張は、この暗黙の合意、〈原合意〉を前提にしてなされている。
そのため、その「部分」の主張がそのまま ―― 選挙で勝利した場合には ―― 、全体に通ずるものとして妥当し、その主張とは異なる見解をもっていた者たちもまた、それを受け入れるのだ。
素晴らしい結婚 ―― 民主主義と資本主義
複数政党制の民主主義は、社会について次のようなヴィジョンを前提にしている。
第1に、人々は、その意見によって「部分party」に分割されている。第2に、政治とは、国家の立法装置や行政装置を制御する権力をめぐる、partyの間の競争である。第3に、その競争の最も主要なあり方は選挙である。
この社会ヴィジョンは、資本の間の競争と同じ形式をもっている。資本主義においては、選挙の代わりに、市場での売買がある。ある商品を買うことは、その商品に1票を投ずるのに等しい。十分に「得票」できなかった商品は、市場から去っていくだろう。要するに、資本主義と民主主義とは同じ社会ヴィジョンを共有しているのだ。