2017年5月号掲載
ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み
著者紹介
概要
23年連続黒字、離職率ほぼゼロ ―― 。債務超過に陥っていた(株)日本レーザーを復活させた同社社長が、変革の数々を語った。毎年2割以上の社員を海外出張させる、社員の事情に合わせた個別管理を行う…。社員のモチベーションを高めて会社を発展させる、「人を大切にしながら利益を上げる経営」の具体策が明かされる。
要約
どんな会社も必ず再建できる!
株式会社日本レーザーは、研究・産業用レーザーや光学機器などを輸入、販売するレーザー専門商社である。日本電子株式会社の子会社だったが、2007年に独立した。
大学卒業後、私は、電子顕微鏡の技術者として日本電子に入社。その後、労働組合執行委員長、米国法人総支配人、本社取締役などを経て、1994年、日本レーザーの社長に就任した。
ありがたいことに、日本レーザーは、第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」を皮切りに、多くの賞をいただいた。
だが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。
崖っぷちを乗り越え、親会社から独立
日本電子に入社して4年目、推されて労働組合の執行委員長になった。いくつもの労働紛争を経て労使関係は安定したが、オイルショックの影響で会社の業績が崩落。「全社員の3分の1に当たる、1000人規模の希望退職」を余儀なくされた。
犠牲になったのは最も生活費のかかる中高年だ。この悲劇を目の当たりにし、「経営がしっかりしていなければ雇用は守れない」ことを痛感した。
執行委員長を11年間務めた後、米国法人の副支配人に。現地で待っていたのは、またもや「リストラの言い渡し」。ストレスなどが原因で胃潰瘍と大腸ガンになり、命の危機にさらされた。
そして1994年、日本レーザーへの出向・再建を命じられた。当時、日本レーザーは毎年赤字続きで、1億8000万円の債務超過だった。
そこで私は、「社員のモチベーションを高める工夫」「粗利重視の経営」「人事制度・評価制度の見直し」などに注力。結果、就任1年目から黒字に転換し、2年目には累計赤字を一掃できた。
ただ、赤字を一掃したとはいえ、日本電子の子会社でいる以上、柔軟に経営を行うことはできなかった。そこで、「社員のモチベーションを高めるためにも独立するしかない」と考え、2007年、MEBO(エムイービーオー)(マネジメント・アンド・エンプロイー・バイアウト/経営陣と従業員が一体となって行うM&A)によって、親会社から完全に独立した。
会社が伸びる「たった1つの方法」
1000人規模のリストラや、1億8000万円の累積赤字を抱えた日本レーザーの再建など、逆風の中を歩き続けてきたが、その時々の体験を糧にしてきた結果、わかったことがある。