41年前の今日、東京ディズニーランド(以下、ディズニーランド)が開園しました。
1983年4月15日の開園以来、ディズニーランドには数多くの人が訪れています。東京ディズニーリゾートを経営する株式会社オリエンタルランドによると、2022年度の来園者数はディズニーシーと合わせて約2208万人。累計入園者数は8億2000万人を超えています(「年間入園者数と主な新規アトラクション導入等の推移」/オリエンタルランドFACTBOOK2023)。『TOPPOINT』読者の中にも、一度だけでなく何度もディズニーランドに行ったという方は多いのではないでしょうか。
今回は、来訪者を惹きつけて離さない「夢と魔法の国」、ディズニー独自の顧客サービスの手法をまとめた『ディズニーが教えるお客様を感動させる最高の方法〔改訂新版〕』(ディズニー・インスティチュート 著/日本経済新聞出版社 刊)をPick Upします。著者のディズニー・インスティチュートは、ウォルト・ディズニー・カンパニーの研修機関です。
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ディズニーランドの魅力は何かと尋ねたら、きっと様々な答えが返ってくることでしょう。アニメ・映画のような世界観、個性豊かなキャラクター、アトラクションやパレードの豊富さ、等々。また、「キャスト(従業員)の対応の良さ」も、魅力としてよく挙げられるものの1つです。
ディズニー・インスティチュートによると、ディズニーはゲスト(お客様)の満足度を高めるため、キャストの教育に力を入れているといいます。そしてキャストは、圧倒的なエンターテインメント体験をつくり出すために「クオリティ・サービス」を追求しているそうです。
このクオリティ・サービスとは、次のようなものです。
クオリティ・サービスとは、サービスや製品のすべての細部に注意を払い、ゲストの期待を超えるものを提供すること
(『ディズニーが教えるお客様を感動させる最高の方法〔改訂新版〕』 34ページ)
細部にこだわり、常にゲストの期待を超える。言葉にすると簡単に思えても、実行するとなると非常に難しいこのクオリティ・サービスを、ディズニーではキャスト全員が“当たり前”のこととして行っています。例えば、目的の場所がわからなくて困っている人がいれば、レストランの接客係が行き方を教えてくれるだけでなく、持ち場を離れてその場所まで連れていってくれたりします。
また、ディズニーの成功の秘訣をまとめた『ディズニー 7つの法則 新装版 奇跡の成功を生み出した「感動」の企業理念』(トム・コネラン 著/日経BP社 刊)には、魔法の瞬間――ゲストに驚きや感動をもたらす方法として、次のような話が紹介されています。
困っているゲストを見かけたら、何をやっていようが、仕事の手を休めるよう、キャストは徹底的に教育されています。(中略)グループで写真を撮ろうとしているゲストをみかけたら、シャッターを押してあげる。そう教育されています。(中略)
ゲスト1人当たり平均して、1日に60回、キャストに接する機会があります。その出会いをすべて、魔法の瞬間にしたいと、ディズニーは考えているわけです。そしてキャストは全員、魔法の瞬間を演出する機会をいつも心待ちにしています。
ですから、その機会が訪れれば、喜んでゲストのもとに駆けつけます。(中略)
顧客と接する機会があれば、それはすべて、価値を創造するチャンスなんです。そのチャンスを活かせば、競争に勝つし、チャンスを棒に振れば、競争に負けます。じつに単純なことなんです。(『ディズニー 7つの法則 新装版』50~53ページ)
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ディズニーではこのように、細部に注意を払い、常にゲストの期待を超えようとしています。しかし、従業員全員にそう命じるだけでは、満足する結果は出ないといいます。従業員が自己流に解釈して、誤ったサービスを提供してしまうことがあるからです。
そこでディズニーでは、クオリティ・サービスの目標を明確にするために、羅針盤をイメージした「クオリティ・サービス・コンパス」というモデルを設けています。
これは、次の4つの要素から成り立つものです。
①ゲストロジー(Guestology)
②クオリティ基準(Quality Standards)
③提供システム(Delivery Systems)
④統合(Integration)(『ディズニーが教えるお客様を感動させる最高の方法〔改訂新版〕』41ページ図より抜粋)
1つ目の「ゲストロジー」とは、市場顧客調査を意味するディズニー用語で、ゲストがどのような人々か、何を期待してやって来るのかを知るためのものです。ディズニーは、成功を収める上でゲストロジーが大変重要だと考えており、これにかなりの時間とお金を費やしているといいます。
たとえば、テーマパークの入口や主要な場所では対面調査が行われているし、「情報収集所」を設け、ゲストの質問に答えたり、問題を解決したり、情報を集めたりもしている。(中略)
最も重要な調査は、コメントカードである。ゲストの意見や様子を記入し報告するもので、これを提出するのがキャスト全員の仕事の一部になっている。(同上57ページ)
このようにしてゲストの特徴やニーズ、感情などを把握することで、パフォーマンスを改良したり、サービス戦略の方向性を決定したりしています。
2つ目の「クオリティ基準」は、目標の実現に向けて従業員がどう行動すべきかを示した指標のことで、ディズニーでは次のように定めているそうです。
ディズニーのパークとリゾートでは、4つのクオリティ基準がある。重要なものから順に「安全」、「ゲストへの配慮」、「ショー」、「効率」だ。(中略)この優先順位は厳格に守られている。キャストのサービス努力と意思決定は、この優先順位に従っている。
(同上42~43ページ)
ディズニーのようなテーマパークでは、キャストが判断に悩む場面が少なくありません。例えば、車いすのゲストがアトラクションに乗り込む際、そのゲストを効率よく乗車させるべきなのか、アトラクションの内容はいつもと同じで問題ないのか、他のゲストにはどう配慮すべきか、等々の判断を迫られます。
しかし、こうした場面でもクオリティ基準があれば優先順位が明確で、キャストは即座に判断できるといいます。この場合、キャストは車いすの人の「安全」を守ることを一番に優先する行動をとるそうです。
このように、「クオリティ・サービス・コンパス」があることで、ディズニーでは「ゲストの期待を超える」ことを目指して、キャスト全員が同じレベルの高いサービスを提供し続けているのです(残り2つの要素「提供システム」と「統合」については、ぜひ本書もしくは「TOPPOINTライブラリー」の要約記事をご覧ください)。
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多くの人々を魅了し、夢のような時間を過ごすことができる場所、ディズニーランド。その裏側には、ゲストを喜ばせるための真摯な取り組み、キャスト1人1人の努力があることが、本書を読むと伝わってきます。本書を読んでからディズニーランドに行くと、これまでとはまた違った発見があるかもしれません。
顧客満足を高めたい、ワンランク上の顧客サービスを提供したいと考えている経営者・管理職の方々には、ぜひ一度手に取っていただきたい1冊です。
(編集部・油屋)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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