2023.4.10

編集部:油屋

“人生即努力、努力即幸福” 伝説の億万長者が語る、最高の「お金持ち哲学」

“人生即努力、努力即幸福” 伝説の億万長者が語る、最高の「お金持ち哲学」

 暖かい日が続き、うららかな陽気に満ちた季節となりました。お花見や散歩に、近所の公園へと足を向ける人も多いことでしょう。
 公園といえば、「公園の父」と呼ばれる人物がいることをご存じでしょうか。明治から昭和にかけて、日比谷公園(東京都)や奈良公園(奈良県)、鶴ヶ城公園(福島県)等々、数多くの公園の設計・改良に携わった本多静六(せいろく)氏です。
 林学者・造園家である本多氏は、「蓄財の神様」としても知られています。氏は「人生即努力、努力即幸福」のモットーのもと、東京大学教授として教壇に立ち、植林や造園など多方面で活躍しながら、簡素な生活と独自の蓄財投資法を実践し、莫大な財産を築きました。しかも、東大教授を定年退官する際には、私財のほぼすべてを匿名で社会事業に寄付しています。

 そんな本多氏がお金と人生の真実を語った名著、『私の財産告白〈新装版〉』(本多静六/実業之日本社)を今回のPick Up本でご紹介します。

 この本で明かされる本多氏の貯蓄術は、非常にシンプルで、その気になれば誰でもすぐ実践できるものです。例えば、「四分の一天引き貯金法」。その方法とは、次のようなものです。

 

「あらゆる通常収入は、それが入ったとき、天引き四分の一を貯金してしまう。さらに臨時収入は全部貯金して、通常収入増加の基に繰り込む」法である。

(『私の財産告白』 24ページ)

 

 つまり、月給や決まった収入はその4分の1を、賞与などの臨時分は全額を貯金するという方法です。これを本多氏は25歳の時からずっと続けたといいます。
 「収入の4分の1」と聞くと、かなりハードルが高いように感じます。実際、本多氏もやり始めた当初は生活が相当苦しかったそうです。ですが、これを続けていくうちに、自分が想像していたより多くの資産を手にできたと語っています。

 

本多式貯金法の一手で押し通してきた私は、十五年目の四十歳になったときには、大学の俸給よりは、貯金の利子や、株式配当のほうがズッと多くなり、三十年過ぎた六十近い頃には、数百万円の貯金、株式、家屋等のほかに、田畑、山林一万余町歩、別荘地住宅六ヵ所という、かねて自分がひそかに予想していた以上に、はるかに大きな財産を所有することになったのである。

(『私の財産告白』 37~38ページ)

 

 給料やボーナスが入るとすぐに欲しかったものを買ってしまう ―― 。そういう人も少なくないのではないでしょうか。私もどちらかといえばそのタイプなので、本多氏の話を聞くと、お金の使い方について襟を正さなければならないなと思います。
 お金といえば、以前Pick Up本でご紹介した『投資の大原則 [第2版] 人生を豊かにするためのヒント』(バートン・マルキール、チャールズ・エリス/日本経済新聞出版社)という本でも、著者らは金持ちになる早道は「支出を収入より少なくすること」だと説いていました。日本と米国の著名な投資家がともに、(独自のテクニックではなく)貯蓄の大切さを語っているのは少し意外な気がしますが、それほど貯蓄が重要であること、そして意外と皆ができていないことの証なのかもしれません(今週のPick Up本:『「貯蓄から投資」を始める前に、知っておきたい“大原則”』)。
 「お金があると使ってしまう」「貯金しようと思っても続かない」という人が彼らの教えを実践するのであれば、自分が手をつける前に、給与振込口座から一定額(例えば収入の4分の1)を貯蓄用口座に移すよう自動設定するなど、半ば強制的に貯金できるよう環境を整えてもいいかもしれません。

 さて、『私の財産告白』の中では、本多静六氏が実践した投資法についても語られています。氏が株式投資の際に心がけたのは、「二割利食い、十割益半分手放し」という方法です。

 

ある株を買おうとすると、いつもその全部の買受金を用意してかかった。もっとも買付けは取引が容易な点から常に先物を選んだ。……それが引き取り期限のくる前に思いがけぬ値上りがあった場合は、買値の二割益というところで、キッパリ利食いし転売してしまった。それ以上は決して欲を出さない。そうして二割の益金を元に加えて銀行定期に預け直した。……これがいわゆる二割利食いの法だ。
次に、いったん引き取った株が、長い年月の間に二倍以上に騰貴することがある……そのときはまず手持ちの半分を必ず売り放つ。つまり投資の元金だけを預金に戻して確保しておく。したがって、あとに残った株は全く只ということになる。……これがいわゆる「十割益半分手放し」という法だ。

(『私の財産告白』 49~50ページ)

 

 このように本多氏はルールを決め、投機には手を出さず、堅実な投資をすることで、財を成したといいます。
 投資といえば、政府が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げているためか、はたまた将来への不安からか、投資に関心を持つ人が若者を中心に増えているといわれます。雑誌やテレビ、ネットニュースなどで、投資に関する話題(特集)を目にする機会がこれまで以上に増えた気がするのは、おそらく私だけではないでしょう。
 にもかかわらず、いまだ日本人の約6割は投資を行っておらず、まだまだハードルが高いと感じている人も少なくないようです(「いかなる投資も「行っていない」日本人は、いまだ約6割も存在する。MMD研究所調査が示す投資後進国の実態」/BUSINESS INSIDER JAPAN)。

 「投資に関心がある、けれど何から始めていいのかわからない」という人にはぜひ、『私の財産告白』を一読いただきたいと思います(ちなみに、TOPPOINTでは単行本を紹介していますが、実業之日本社から文庫版も発売されています)。本多静六氏の教えから、当たり前のことを徹底することで資産は作れるのだと感じられるはずです。それこそ春の晴れた日に、公園で読まれるのもいいのではないでしょうか。

(編集部・油屋)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2014年4月号掲載

私の財産告白〈新装版〉

著者・本多静六(1866-1952)は、苦学の末に東大教授となり、研究生活のかたわら「月給4分の1天引き貯金」など、独自の蓄財投資法と生活哲学により莫大な財産を築いた。退官後は全財産を寄付し、「人生即努力、努力即幸福」をモットーに簡素生活を実践。この伝説の億万長者が、お金と人生の真実を語る。自らの実践に基づく名言の数々は、今なお新鮮で心に響く。

著 者:本多静六 出版社:実業之日本社 発行日:2005年7月

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