2022.8.1

編集部:小村

誰しも訪れる“中年の危機”。その乗り切り方とは?

誰しも訪れる“中年の危機”。その乗り切り方とは?

 仕事や家庭、将来に悩む8人の“おじさん”たちが、男子シンクロナイズドスイミングにチャレンジ。世界選手権で金メダルを目指す ―― 。映画『シンク・オア・スイム』は2018年にフランスで公開され、大ヒットを記録しました。


 映画に登場するおじさんたちは、うつ病でひきこもったり、妻と母親に捨てられたり、ビジネスに失敗したり、ミュージシャンになる夢を捨てられなかったり…。いわゆる“中年の危機(ミッドライフ・クライシス)”の渦中にいる人たちばかり。同世代の私は、その冴えない日常に共感し、彼らの頑張る姿に感動しました。

 ところで、中年の危機という言葉は、それほど古くから存在するものではありません。これが初めて登場するのは1965年。精神分析学者エリオット・ジャックが、ある記事の中で中年の危機という言葉を使い、その概念を提唱しました。中年期に見られる気分の落ち込みや焦燥感、人生への不満などの症状を表し、時にうつ病や依存症などを伴うこともあるといいます。


 人は長い人生の中で幸せを感じる時もあれば、落ち込む時もあります。また、何をもって幸・不幸を感じるかは、人によって異なるでしょう。にもかかわらず、多くの人が中年期に同じような症状に陥るのはなぜなのでしょうか。

 この疑問に答えてくれるのが、今週のPick Up本『ハピネス・カーブ 人生は50代で必ず好転する』(ジョナサン・ラウシュ/CCCメディアハウス)です。

 

 著者は、米シンクタンク・ブルッキングス研究所のシニアフェロー。様々な調査から“中年の危機”は多くの人に訪れること、また世界的にも同様の傾向が見られることを示し、その原因が「年齢」そのものにあることを明らかにします。著者自身も40代に入り、「不満に思うべきことなど何一つないのに不満を感じてしまう」という心理に陥ったと本書で述べています。

 人の幸福度を年齢別に調査した結果を折れ線グラフにすると、30代・40代で下降し、50代で緩やかに上昇していく「U字曲線」を描きます(書籍カバーに描かれているような形です)。著者はこの曲線を「ハピネス・カーブ」と呼びます。

 

 このハピネス・カーブの意味することとは何でしょうか。それは、「中年期に満足感を得ることは、他の時期に比べると難しい」ということです。


 若い頃、人は人生に大きな期待を持って生きています。ところが、30~40代になると、期待通りにならないことが増えてきます。そして、そのことに失望や後悔を感じると、期待していた世界と現実とのギャップがますます大きくなり、人生に不満を感じることが多くなるのです。

 では、こうした中年の危機から抜け出すにはどうすればいいのでしょうか。本書では、その対処法をいくつかアドバイスしています。『TOPPOINT』の要約では、例えば次のようなものを紹介しました。

 

  • ・中年期に不安感を抱くのは特別なことではない、と理解する。
  • ・自分より成功している他人と、自分とを比較しない。
  • ・瞑想して、マインドフルな状態をつくる(今のことだけを考える)。そうすれば、不安感が減り、ポジティブな感情が増す。
  • ・つらい気持ちを1人で抱え込まず、他人に話す。身内や親しい人に話すのが嫌なら、カウンセリングやセラピーなどを利用してみる。
  • ・中年期のスランプは深い傷を残すものではなく、いつかは終わる。そう思い、上向く日がやってくるのを待つ。


 冒頭に紹介した映画『シンク・オア・スイム』では、プールの更衣室でおじさんたちが1人1人、自らの身の上を語っていくシーンがあります。上記のアドバイスに沿って考えると、これは「つらい気持ちを他人に話す」ということ。それによって彼らは癒され、同世代の話を聞くことで、「中年期に不安感を抱くのは特別なことではない」という気持ちになれたのではないでしょうか。


 また、シンクロに集中することで「今のことだけを考える」ことができ、ポジティブな感情も増したと考えられます。ちなみに、彼らはシンクロの練習で徐々に結束を強めていき、それとともに、プライベートの問題も少しずつ改善していきます。

 中年期を迎えると、幸福度が下がる。だが、それはいずれ上昇に転じる。そう考えておくことで心に余裕ができ、対策を練ることができます。そうすれば、より充実した人生を送れるのではないでしょうか。今回ご紹介した『ハピネス・カーブ』は、そのためのアドバイスが詰まった1冊です。

(編集部・小村)

 「今週のPick Up本」では、ビジネス書に日々触れている小誌の編集部員が、これまでに要約した書籍の中から「いま改めておすすめしたい本」「再読したい名著」をご紹介します。次回の“Pick Up本”もお楽しみに。

2019年9月号掲載

ハピネス・カーブ 人生は50代で必ず好転する

研究によれば、人の幸福度はU字曲線を描く。30~40代で下降し、50代で緩やかに上昇。これを「ハピネス・カーブ」という。すなわち若者や老人と比べた時、中年は幸福度が最も低い。人生に満足できず、焦燥感が募る。この「中年の危機」をどう乗り切るか、ジャーナリストが数々の取材、自らの経験を踏まえ、アドバイスする。

著 者:ジョナサン・ラウシュ 出版社:CCCメディアハウス 発行日:2019年6月

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