アメリカの著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社、バークシャー・ハザウェイ。その副会長であるチャーリー・マンガー氏が、11月28日に99歳で亡くなりました。氏は60年以上にわたり、バフェット氏と二人三脚で、投資の世界で成功を収めてきました(「バフェット氏、64年の二人三脚に幕 真理突いた盟友死去」/日本経済新聞電子版2023年12月2日)。
投資界のカリスマとして尊敬を集めるバフェット氏に比べ、マンガー氏は世間一般にその存在は広く知られていないかもしれません。しかし、彼は、バフェット氏の投資スタイルに多大な影響を与えた、金融史上に名を遺すと評される人物です。
『TOPPOINT』では、そんな“バフェットの右腕”マンガー氏の哲学や思考が詰まった良書を、過去に紹介しています。今週はその本、『マンガーの投資術 バークシャー・ハザウェイ副会長チャーリー・マンガーの珠玉の言葉――富の追求、ビジネス、処世について』(デビッド・クラーク 著/日経BP社 刊)をPick Upします。
本書は副題が示すとおり、マンガー氏が投資や経済、人生などについて語った格言を収めたもの。時に辛辣であり、時にユーモアあふれるその言葉1つ1つから、この天才投資家の思考や哲学を深く読み解いています。
本書に収められた格言の中で、私が一番重要だと思ったのは、次の言葉です。
適正(フェア)な価格で売られている偉大(グレート)な会社は、割安(グレート)な価格で売られているそこそこ(フェア)の会社よりも優れている。
(『マンガーの投資術』 152ページ)
「大きく稼ぐ方程式」とタイトルをつけて紹介されるこの言葉は、バークシャー・ハザウェイの事業の指針となっているものです。本書の著者であり、バフェット研究の第一人者でもあるデビッド・クラーク氏は、本書の「イントロダクション」で、バフェット氏が次のように語っていたことを明かしています。
チャーリーの最大の功績は、今日のバークシャー・ハザウェイを設計したことである。彼が私に示した青写真はシンプルだった。そこそこ(フェア)の会社を割安(ワンダフル)な価格で買おうとするのではなく、すばらしい(ワンダフル)会社を適正(フェア)な価格で買いなさい ―― この指示通りに投資事業を進めてきた結果として、現在のバークシャーがある。
(『マンガーの投資術』 6ページ)
マンガー氏が示した方針を貫くことによって、バークシャー・ハザウェイは時価総額が7000億ドルを超えるまでに成長することができたといえるでしょう。
上記の方針に加えて大事なことは、購入した株を長く持ち続けること。著者は、適正価格の偉大な会社の株と、割安なそこそこの会社の株とがどのくらいの利益をもたらすのか、実際に計算しています。その結果、10年後、適正価格の偉大な会社の株の方が、より多くの利益をもたらすことが、数字で示されています。
この点について、マンガー氏もこう語っています。
投資では、座して待つことが重要だ。証券会社に支払う手数料を抑えられるし、つまらないことに一喜一憂しなくても済む。うまくいけば、税金の節約にもなり、年に1%か2%、ないしは3%の利益が転がり込んでくるのだ。
(『マンガーの投資術』 33ページ)
すばらしい会社を適正な価格で買うことと、購入した株を長く持ち続けること。この2つを守れば、投資で失敗する可能性は低いのではないでしょうか。
では、そうした会社の見極めはどうすればいいのか? バークシャー・ハザウェイはどこにポイントを置いて企業を評価しているのか? この点については、本書の著者も共著者となっている『史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール』(メアリー・バフェット、デビッド・クラーク 著/徳間書店 刊)で詳しく考察されていますので、合わせてお読みいただければと思います。
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本書に収められているマンガー氏の格言には、投資に関するものが多いですが、他にも人生について、こんな言葉があります。
目覚めたときよりも少し賢くなっているように心がけて日々を過ごしなさい。やるべきことを忠実に、よりよくこなしなさい。毎日少しでもいいから前に進もうと努力しなさい。やがて ―― 長く生きれば ―― 報われる日が来るはずだ。
(『マンガーの投資術』 194ページ)
マンガー氏は若い頃、弁護士をしていました。その頃、氏は不動産や株式の知識を得るために、1日1時間独学することにしていたといいます。それを何年も続けることによって、蓄積した知識が頭の中で相互作用をもたらし、まるで「複利運用」のように知識の量が加速度的に増えて、理解を深めることができたそうです。
投資家になってからも、週に数冊の本を読破するほどの読書家であったマンガー氏。たゆまぬ努力を続けたことが、投資家としての成功をもたらした要因の1つといえます。
本書では、90歳を超えた時の方が、50歳の時より投資家として進歩しているというマンガー氏の発言も紹介しています。99歳までの人生を生きたマンガー氏の頭の中は、はたしてどれほどの知識が詰まっていたのでしょうか?
『マンガーの投資術』には他にも様々な格言が収められていますが、投資や人生に関する魔法のような成功法則は書かれていません。そこには、1日1日、努力を積み重ね、一瞬の好機を見逃さず、そして長い時間に耐える胆力をもった、1人の男の生きざまが記されています。マンガー氏の言葉は、巨額の資産を築くことが私たちにも十分に可能であることを示してくれます。ただし、いくつになっても、そして資産を築いたとしても、仕事と人生に真摯に向き合い続けることが条件ですが ―― 。
マンガー氏もこう言っています。
「手っ取り早く金持ちになりたい」という欲望は非常に危険である。
(『マンガーの投資術』 20ページ)
マンガー氏は惜しくも亡くなりましたが、氏が遺した言葉はこれからも色あせることはないでしょう。この機会に、本書でマンガー氏の哲学に触れられてはいかがでしょうか。
(編集部・小村)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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