
2022年12月、「日経MJヒット商品番付」が発表されました。東の横綱に選ばれたのは、「コスパ&タイパ」でした(「ヒット商品番付、横綱「コスパ&タイパ」「#3年ぶり」」/日本経済新聞 2022年12月6日)。
「タイパ」とはタイムパフォーマンスの略語で、「時間的な効率、能率」を意味します。三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2022」でも大賞に選ばれるなど、最近になって広く使われるようになった言葉です(「三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2022」」/三省堂)。
このように「タイパ」が注目される背景には、情報やコンテンツが溢れる中、やりたいこと・すべきことが数多くあり、「時間が足りない」と悩む人が多い、ということがあるのではないでしょうか。そこで今回のPick Up本では、短時間でより多くの成果を上げるための心構え、具体的な方法を説いた『ハーバード式「超」効率仕事術』(ロバート・C・ポーゼン/早川書房)をご紹介します。
著者のロバート・C・ポーゼン氏は、多方面で活躍するプロフェッショナルです。本書執筆時には、資産運用会社MFSインベストメント・マネジメントの会長を務めながら、ハーバード・ビジネススクールでも常勤で教鞭をとっていました。他に、上場企業 2 社の取締役や、医療財団と医学研究所の理事も兼務。その傍ら、本を執筆し、新聞や雑誌に寄稿(5年間で約100本!)もしています。そのうえ、家族や友人との時間は十分に確保しているという八面六臂の活躍ぶりで、まさに「タイパ」のお手本のような人物です。
ポーゼン氏はなぜ、これほど効率的に働くことができるのでしょうか?
その秘訣について、氏は次のように述べています。
私はこれまでの長いキャリアのなかで、次の3つの考え方を取り入れれば、生産性を最大限に高められることを学んだ。
- ・目標を明確に表わし、優先順位をつける。これが、優先順位に従って時間を配分する助けになる。
- ・最終的な結果を念頭に置く。優先順位の高いプロジェクトに取り組むときは、早い段階でたたき台となる仮説を立て、それを指針にする。
- ・雑事に手間をかけない。優先順位の低いことは、できるだけ時間を使わずに片づける。
(『ハーバード式「超」効率仕事術』 23ページ)
本書では、この3つの考え方に基づき、優先順位に沿った目標設定の方法から、効率のよい会議、実りある出張の仕方、家庭と仕事の両立法まで、すぐに実践できる具体的なアドバイスが語られます。その中で、私が個人的に参考にしたことの1つが、「日課を機械的に片づける」ことです。
日課をできるかぎり手早く機械的に片づけるよう努力しよう。そうすることで、仕事にも家族にも友人にも時間を割けるようになるし、疲れも減る。過去20年の研究によると、頭を使って判断したり(今日はどのシャツを着ようか?)、自制心を発揮すること(クッキーを食べちゃダメ! 人参を食べないと!)が脳を疲れさせるという。
(『ハーバード式「超」効率仕事術』 101ページ)
ポーゼン氏は実際、スーツは夏冬5着ずつしか持たず、それに合わせるシャツとネクタイも決めていると言います。私の場合、氏の教えに従って、毎朝起きてから飼いネコの水を変えるまでの行動を同じにしたり、朝食のメニューを同じにしたりしています。こうして日常的な雑事をできるだけ簡単に済ませることで、より重要なこと(家族との会話や本を読むこと)に時間を費やすことができるようになりました。ポーゼン氏の実例を参考に、様々な取り組みに挑戦したくなる点も、本書の大きな魅力の1つといえるでしょう。
「生産性を高めたい」「時間の使い方がうまくなりたい」と願う人にとって、本書から学べる点は多々あります。今年の目標として資格取得やスキルアップを掲げた人にとっても、本書で語られるノウハウは参考になるでしょう。ぜひ一度手に取っていただきたい1冊です。
(編集部・油屋)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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