
「読書の秋」 ―― 。いつも以上に読書を楽しむ機会が増えるのが、この季節です。読書の好きな『TOPPOINT』読者の皆さまも、秋の夜長に多くの書籍と出合ってこられたことでしょう。では、その数ある書籍の中で、「思い出に残っている本」を1冊あげるとしたら、それは何でしょうか?
私の場合は、『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版』(フィリップ・コトラー他/丸善出版)です。
マーケティングに関心のある方なら、「近代マーケティングの父」と称されるフィリップ・コトラー氏のことはご存じでしょう。中には、『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』を読まれた方もいらっしゃるかもしれません。
学生時代、経営学を学んでいた私は、論文執筆に追われていた秋にこの名著と出合いました。私にとって『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』は、マーケティング戦略の面白さ・奥深さを教えてくれた、かけがえのない1冊です。
今も時折、読み返したくなるのですが、本書は1000ページもある大著で、読み切るにはまとまった時間が必要です。
コトラー氏の教えに、もう少し気軽に触れることができないものか…。そう思っていた時に出合ったのが、今回ご紹介する『コトラーのマーケティング・コンセプト』(フィリップ・コトラー/東洋経済新報社)です。
新鮮で刺激的な考え方や見方を、いつでも検索や拾い読みができ、わかりやすく、抜き書きが容易なかたちにまとめたい
(『コトラーのマーケティング・コンセプト』 1ページ)
コトラー氏がまえがきで述べている通り、本書ではマーケティングの最重要コンセプト80項目が簡潔にまとめられています。各項目はアルファベット順(英語表記)に紹介されており、辞書のように活用することもできます。
ここでは、私がメモを取り、今も時折読み返している一節をいくつかご紹介します。
マーケティングの役割とは、たえず変化する人々のニーズを収益機会に転化することである。
(『コトラーのマーケティング・コンセプト』 5ページ)
ブランドとは、何らかの意味と連想を担った記号のことである。だが、優れたブランドの機能はそれだけにとどまらない。ブランドが製品やサービスに独自の趣を添えるのである。
(『コトラーのマーケティング・コンセプト』 23ページ)
新しいボスは顧客である ―― 企業はこのことに気づく必要がある。社員が顧客のことを考えていないとしたら、何も考えていないのと同じことなのだ。
(『コトラーのマーケティング・コンセプト』 59ページ)
原著の発行は2003年ですが、綴られているマーケティングの原理原則は、現在も通用するものばかりです。また、『コトラーのマーケティング・コンセプト』は254ページと、マーケターが「座右の書」にするには丁度いいボリュームになっている点も魅力の1つです。秋の深まりを感じるこの時期、とりわけマーケティングに携わる人にぜひ手に取っていただきたいビジネス書です。
(編集部・油屋)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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