2026.11.2

編集部:福尾

なぜ、本を読むのか? 情報があふれる時代に問い直したい、読書の本質

なぜ、本を読むのか? 情報があふれる時代に問い直したい、読書の本質

 深まる秋。「スポーツの秋」「食欲の秋」と様々な楽しみがありますが、『TOPPOINT』編集部が推したいのは、やはり「読書の秋」です! 昨日11月1日は「本の日」でした。また、10月27日から11月9日までは「読書週間」です。この機会に、改めて「本を読むこと」について考えてみませんか?

 

 現代は、インターネットや生成AIを使えば、知りたいことをすぐに調べられる時代です。仕事に役立つ知識も効率よく集められます。そんな時代に、私たちはなぜ本を読むのでしょうか。

 「国民教育の師父」と謳われた森信三氏の『人生論としての読書論』(致知出版社刊)は、この問いに、単なる読書術を超えた視点から答えてくれます。

読書とは、人生を真剣に生きるための営み

 森氏は、読書と人生は切り離せないものだと説きます。

 

人生を真剣に生きようとしたら、何人も読書というものと、無関係ではありえない

(『人生論としての読書論』14ページ)

 

 なぜなら、私たちが自らの経験だけで知ることのできる世界には限界があるからです。書物を通じてなら、直接経験していない出来事や、他者が長い時間をかけて得た知見にも触れられます。

 森氏にとって読書は、単に知識を蓄える行為ではなく、人生を深く理解し、世界を広く知ろうとする営みなのです。

 

 では、どのような本を読めばよいのでしょうか。森氏は必要な読書を、

  • ①自分はいかに生きるべきかを考える「人生論・宗教関係の読書」
  • ②仕事に関する「専門的な読書」
  • ③視野を広げる「教養としての読書」

 の3つに分けています。

 

 仕事に直結する知識はもちろん重要です。しかし、自分の生き方を考える本や専門外の分野に触れる本も読む。そうすることで、物事を多角的に捉える力が養われます。娯楽として本を読む際にも、この3つを意識すれば、より実りある読書になるかもしれません。

良書の選び方

 ここで、本書が示す「読書の秘訣」をご紹介しましょう。

 

わたくしの読書法のこつとか秘訣とかいうものの中では、実は「書物の選択法」ということの他ない

(『人生論としての読書論』51ページ)

 

 つまり、読書の秘訣は「本の選び方」にあります。森氏は、良書を見極める「鑑識眼」を養うには、多くの本を読み、読書歴を積むしかないといいます。だからこそ、読書は「一種の人生修行」ともいえます。

 

 では、具体的にどう選べばよいのでしょうか。森氏がすすめるのは、自分が読みたいと思った本の途中を開き、そこに書かれた2ページを読んでみる方法です。

 

そこに、心に触れるような光ったコトバがあるかないかと考えてみて、それが1つも無かったら、それは自分にとって読む必要のない書物と断定してよい

(『人生論としての読書論』63ページ)

 

 これは、その本に価値がないという意味ではありません。あくまで「現在の自分にとっては、縁なき書物」にすぎないのです。

 反対に、心に響く言葉があれば、別のページも読んでみる。そこにも心を動かす言葉が見つかれば、自分に合った本である可能性が高いといいます。

 

 次回、書店や図書館へ行った際は、ぜひ試してみてください。

 もちろん、良書選びには『TOPPOINT』もお役立ていただけます。私たち編集部員も日々、多くの本を読んで「鑑識眼」を養い、心に触れる光った言葉を要約に盛り込むよう努めています。ただし、文字数の制約から、すべてをご紹介することはできませんので、皆さまも要約の中で光る言葉を見つけたら、ぜひその本を購入して、じっくり味わってみてください。

効率を求める時代だからこそ、時間をかけて読む

 さて、冒頭の問いに戻ります。生成AIで瞬時に答えが得られる時代に、私たちはなぜ時間をかけて本を読むのでしょうか。

 

 その答えは、「2種の世界の住人」になれることだと、本書は教えてくれます。1つは現実の社会生活、もう1つは書物の中に描かれる世界です。

 本を読めば、はるか遠い過去の世界や、訪れたこともない遠い国の人々の暮らしにも触れられます。これは、SNSやネット情報、生成AIの回答では得られない、読書ならではの豊かさではないでしょうか。森氏は読書について、次のように述べます。

 

書物を読むというわずかなこの一事によって、われわれは直接経験している狭い範囲から、自己の住する社会的圏域を、いくらでも増大し拡大することが出来るのである。それは考えようによっては、一種の「奇蹟」であり魔術だとさえ言える

(『人生論としての読書論』318ページ)

 

 そう、読書は魔術のように、私たちを限られた経験の外へと連れ出してくれるのです。

 本書が書かれたのは1967年(刊行は2011年)ですが、情報へのアクセスが容易になった今だからこそ、読書の意義を改めて考える上で再読する価値があります。

 秋の読書週間を機に、『人生論としての読書論』で、日頃の読書習慣を見直してみませんか。なぜ私たちには読書が必要なのか、人生における読書の意義を知る上でおすすめの1冊です。

(編集部・福尾)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2011年9月号掲載

人生論としての読書論

国民教育にその生涯を捧げ、『修身教授録』などの著作を通じて、今なお多くの人々に影響を与え続ける思想家、森信三。本書は、森師の名著の1つといわれながらも、これまで入手が困難であった『読書論』を復刻したものである。読書には、「坐禅にも劣らぬ一種の厳しい、自己鍛錬の意義がある」。こうした視点の下、人生において読書がいかに重要であるかを説く。

著 者:森 信三 出版社:致知出版社 発行日:2011年4月
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