2026.9.28

編集部:福尾

株高の今、どう運用する? 世界的ベストセラーの投資バイブルに学ぶ、不変の投資原則とは

株高の今、どう運用する? 世界的ベストセラーの投資バイブルに学ぶ、不変の投資原則とは

 株高と投資意欲の高まりを背景に、家計のお金の置き場所が変わっています。

 日銀が9月17日に公表した資金循環統計によると、2026年3月末時点で、家計が保有する株式・投資信託の残高が初めて保険・年金を上回りました(「家計の株式・投信保有、初めて保険上回る 日銀の資金循環統計」/日本経済新聞2026年9月17日)。

 

 資金循環統計は、家計や企業、政府など、経済主体ごとの資金の動きを示すものです。今回の数字からは、家計の資産構成が「貯蓄中心」から、投資を組み込む方向へ変化していることがうかがえます。

投資が身近になった

 私自身も、2021年頃からNISAやiDeCoでインデックス投資を始め、この5年ほど、株価上昇の恩恵を実感してきた1人です。一方で、資産が増えてくると、新たな悩みも生まれます。特に旧NISAは非課税期間が5年なので、この年末を見据えて、売却のタイミングをどうするか。今まさに出口戦略を考え始めています。

 

 投資を始めた当初は、とにかく「長期で持っていればいい」と考えていました。ところが、実際に資産が増えてみると、このまま株価は上がり続けるのか、いつ売れば損をしないのか…。そんなふうに気持ちが揺らぎます。

 

 そこで、今週Pick Upするのは、投資がこれほど身近になった今だからこそ、改めて読み返したい名著『ウォール街のランダム・ウォーカー (原著第12版)』(バートン・マルキール 著/日本経済新聞出版社刊)です。1973年の初版以来、改訂を重ねてきた本書は、全米累計200万部を超えるベストセラー(最新版は13版)。「TOPPOINTライブラリー」のコンテンツの1つである「ジャンル別オールタイムベスト10」でも、「マネー」カテゴリのトップに選ばれています。

 

 本書が半世紀にわたって伝えてきたメッセージは、シンプルです。

 

個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンド・マネジャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただインデックス・ファンドを買ってじっと持っているほうが、遥かによい結果を生む。

(『ウォール街のランダム・ウォーカー (原著第12版)』1ページ)

株価の未来は、誰にも予測できない

 なぜ、インデックス・ファンドなのでしょうか。

 その背景にあるのが、本書のタイトルにもなっている「ランダム・ウォーク理論」です。これは、株価が短期的にどちらへ動くのかを、継続的かつ正確に予測することは難しいという考え方です。

 

 投資の世界には、過去の株価の動き(株価チャート)から値動きを読むテクニカル分析や、企業の成長性や収益力などから本質的価値を推定するファンダメンタル分析など、さまざまな手法があります。しかしマルキール氏は、こうした分析によって市場平均を上回り続ける成績を上げることの難しさを指摘しています。プロが運用する投資信託であっても、市場平均を継続的に上回ることは容易ではありません。

 

 そこで本書が重視するのが、長期投資と分散投資です。

 短期的な値動きを予測して売買を繰り返すのではなく、市場平均への連動を目指すインデックス・ファンドを活用して分散投資を行う。そして運用手数料や売買コストを抑えつつ、市場全体の成長を長期で捉える。これは、投資に詳しくない人でも簡単にできる、株式投資で失敗しない方法の1つです。

 実際、私も運用を始めた当初は、本当に資産を増やすことができるのか不安でしたが、3年目を過ぎたあたりから徐々に利益が出始め、長期投資の威力を実感しています。

 

 また、リスクを避ける方法として本書が紹介するのが「ドル・コスト平均法」です。一定の金額を毎月または四半期に一度、インデックス・ファンドなどに定期的に投資することで、ポートフォリオ内の株式を全て高値で取得することが避けられます。つまり、リスクをなくせないまでも、かなり減らすことができる方法です。

 ただし、ここにも重要な条件があります。

 

ドル・コスト平均法のメリットを享受するためには、信念を持って投資し続けなければならない。新聞の金融欄が恐ろしいニュースであふれて悲観論一色になっていても、自動継続投資プランは中断してはいけない。

(『ウォール街のランダム・ウォーカー (原著第12版)』437ページ)

相場に振り回されないための「判断の軸」 

 株価が上がれば、「もっと上がるのでは」と期待します。反対に下がれば、「これ以上下がる前に売ったほうがいい」と不安になります。SNSやニュースを開けば、相場をめぐるさまざまな意見が飛び交っています。でも、そういった情報や意見に振り回されずに、信念を持って、コツコツと買い続けることの重要性をマルキール氏は説きます。

 

 私自身も、投資を続けてきたからこそ、いま「含み益が出ている資産をどうするか」という新たな判断に直面しています。そんなときこそ、目先の相場観ではなく、原則に立ち戻ることが重要なのだと思います。

 

 『ウォール街のランダム・ウォーカー (原著第12版)』が教えてくれるのは、単なる投資テクニックではありません。「次に株価がどう動くか」を予測したいという人間の欲求そのものに対して、「本当にそれは可能なのか」と問いを投げかけます。そして、予測できない未来に対して、どう資産を配分し、どう行動するのかを考えさせてくれます。

 

 投資が特別な人だけのものではなくなった今、私たちはかつてないほど多くの情報に囲まれています。しかし、情報が増えたからといって、未来が予測できるようになるわけではありません。相場が上がっているときも、下がっているときも、必要なのは「次に何が起きるか」を言い当てることではなく、予測できない未来に対して、どのような信念を持って資産を運用するのかではないでしょうか。

 

 半世紀にわたって読み継がれてきた名著だからこそ、納得できる投資哲学がこの本にはあります。迷ったとき、相場に心を揺さぶられたとき。そして、資産が増えたことで次の判断を迫られたとき。『ウォール街のランダム・ウォーカー (原著第12版)』は、短期的な答えではなく、長く使える判断の軸を思い出させてくれる1冊です。

 投資をこれから始めようという方はもちろん、すでに運用中の方も、ぜひご一読をおすすめします。

(編集部・福尾)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

 

2019年10月号掲載

ウォール街のランダム・ウォーカー (原著第12版)

「株式投資の不滅の真理」を説き、世界中で読まれてきた古典的名著である。今回の改訂では、リタイア世代の投資方針など、時代に即した項目が追加された。そして初版以来、一貫して変わらないのが、「個人投資家にとってはインデックス・ファンドへの投資がベスト」という主張。なぜベストなのか、その理由が示される。

著 者:バートン・マルキール 出版社:日本経済新聞出版社 発行日:2019年7月
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