2025.6.9

編集部:小村

最小の努力で最大の成果を上げる 時間術の秘訣は「仕組みづくり」にあり!

最小の努力で最大の成果を上げる 時間術の秘訣は「仕組みづくり」にあり!

明日は「時の記念日」

 明日、6月10日は「時の記念日」です。
 この日を記念日とする由来について、『時間の日本史 日本人はいかに「時」を創ってきたのか』(佐々木勝浩 他著/小学館 刊)は次のように解説しています。

 

日本書紀には、飛鳥時代、天智天皇が漏刻(水時計)を用いて、日本で初めて時を知らせた故事が記されている。現代の暦に直すと6月10日で、これが時の記念日の由来となっている。

(『時間の日本史』 22ページ)


 同書によれば、時の記念日が制定されたのは1920年(大正9年)のこと。そのきっかけは、東京で開催された「時」をテーマとした展覧会、「『時』展覧会」でした。
 そもそも、この展覧会が開催されたのは、当時の人々が「時間にルーズ」だったことによります。明治時代、日本にも1日24時間の「定時法」が導入されましたが、江戸時代の日の出と日没を基準として昼と夜をそれぞれ6等分する「不定時法」(時間の単位である「一時」の長さは昼と夜とで異なり、季節的にも変わる)の感覚が抜け切れていなかったようで、人々の時間感覚はゆったりしていたそうです。

 しかし、郵便や鉄道など、近代的な制度や技術が日本に導入されるに従い、時間励行の意識が求められるようになりました。
 人々に時間励行を促すために開催された「『時』展覧会」は大盛況。それを受けて、「時の大切さを宣伝するセレモニー」として時の記念日が制定されたといいます。


 時の記念日を明日に控え、この機会に、改めて時間の使い方について考えてみてはいかがでしょうか。
 そこで今週は、「最小の努力で最大の成果を上げる時間術のノウハウ」が詰まったロングセラー、『レバレッジ時間術 ノーリスク・ハイリターンの成功原則』(本田直之 著/幻冬舎 刊)をご紹介します。

時間を消費するのではなく、「投資」する

 本書の重要なポイントは、時間を「投資」することを説いている点にあります。
 例えば、仕事に追われて毎日残業して働いているけれど成果があがらない人と、定時に帰るけれども人並み以上の成果を出す人。両者の違いはどこにあるのでしょうか。著者は後者の人の共通点を、次のように指摘します。

 

私の知るかぎり、それは才能や能力ではなく、時間に対する考え方です。結論から先に言えば、彼らは時間を「消費」ではなく「投資」しています。「投資」することで「時間資産」を築き、「不労所得」的に時間を得ているのです。

(『レバレッジ時間術』 12ページ)


 時間を「投資」することで「資産」を増やすには、どうすればよいのでしょうか。
 本田氏はその方法を、「時間にレバレッジをかける」と表現します。レバレッジとは、「てこの原理」という意味。てこが少ない力で大きなものを動かせるように、少ない時間で大きな効果を上げるようにするのです。
 時間を増やす方法の中心となるのは、「仕組み」づくりのために時間を使うことである、といいます。

 

短時間で効率的に同じだけの成果を上げるための仕組みをつくるために、10時間なり15時間なり考えたり、方策を練ったりするわけです。(中略)「そんな時間は取れない」「ただでさえ忙しいから無理」という人もいるでしょう。しかし、たしかに最初に時間はかかりますが、その後はできあがった仕組みを利用すればいいだけ。

(『レバレッジ時間術』 33~34ページ)


 本田氏が実際に行った仕組みづくりの例として、本書ではアメリカ留学時にパソコンの「ブラインドタッチ」を5日間でマスターしたことが語られています。
 ビジネスパーソンにとって、パソコンのキーボードを叩く時間は毎日少なからず存在します。ブラインドタッチをマスターしていないことによる時間のロスは、1日あたりではわずかな時間かもしれませんが、それが何年、何十年も積み重なることを考えると、その「時間資産」は膨大なものになるでしょう。

 こうした仕組みづくりの例としては、エクセルならば関数の利用が考えられます。
 『TOPPOINT』編集部の場合、画像を加工する場合などにフォトショップという画像ソフトを使用するのですが、多くの画像に同じ加工を施す時に「アクション」という機能を使用します。
 これは一連の作業を記憶しておいて、必要な時に再利用できるようにする機能です。例えば、「画像に枠線をつける」「色をカラーからモノクロに変える」といった作業を記憶させるのです。この仕組みを多くの画像に使用することで、時間を増やすことができ、しかもミスを減らすことができています。

 皆さまの職場でも、こうした仕組みづくりを行うことで時間を増やせるところはないか、見直してみてはいかがでしょうか。

レバレッジ・スケジューリング

 『レバレッジ時間術』では、先述の時間投資の考え方に基づいた時間の使い方である、「レバレッジ・スケジューリング」についても紹介しています。
 そのスキルの1つに、「俯瞰逆算スケジュール」があります。このスキルのポイントを、本田氏は次のように述べます。

 

「俯瞰逆算スケジュール」のポイントは、予定全体を俯瞰すること(「俯瞰」とは高いところから全体を見下ろすという意味です)。そして、成果を上げるためのタスクを逆算して考えることです。

(『レバレッジ時間術』 58ページ)


 俯瞰逆算スケジュールのために本田氏が用いているのは、「A4サイズのカレンダー」。1カ月ごとにめくる形式のもので、1日ごとに書き込めるスペースがあるものを使用しているといいます。これだと1カ月分のスケジュールが俯瞰でき、しかも数カ月先の予定を確認するもの楽です。

 では、このカレンダーを使ってどのようにスケジュールを立てるのでしょうか。
 本田氏は、まず「明確なゴール設定」から始めるといいます。

 

○月○日に新規事業を立ち上げる、売上を20%アップする(中略)といった成果につながる重要な課題をだいたい3カ月先まで見通します。そして、私の場合は、これをカレンダーに書き込みます。
その上で目標達成のためにやらなければいけないことを、何段階かのステップに割り振り、ほかの予定とのバランスをとりながらスケジュールに落とし込んでいきます。具体的には、目標が売り上げアップであれば、目標の数字をクリアするには何社から注文をとる必要があるか、そのためには○日までに何社にアプローチする必要があるのか、(中略)リストや資料はいつまでにそろえる必要があるのか、と考えていくわけです。

(『レバレッジ時間術』 60~61ページ)


 もし、自身のスケジュール管理が来週まで、場合によっては明日までしか立てられていないならば、目標達成までの予定を考えることは難しいでしょう。俯瞰逆算スケジュールを用いることによって、本当に重要な仕事に優先して取り組むことができるのです。

 私も本書を見習い、手帳で俯瞰逆算スケジュールを立てるよう心掛けています。ビジネス手帳の中には、本田氏が使っているカレンダーのように1カ月のスケジュールが見開きで確認できるものがあり、私はそうした手帳を使用しています。
 『TOPPOINT』編集部では、半年ごとに開催する「TOPPOINT大賞」のように定期的に行うイベントがあります。こうしたイベントの予定を、毎年手帳を購入した際、該当する月のところに事前に書き込んでいます。
 それによって、逆算していついつまでにこの作業をしておかなければならない、といった予定が立てやすくなり、作業の遅れや見落としを防ぐことに役立っています。

 『レバレッジ時間術』の著者、本田直之氏のモットーは、「Doing More With Less」だといいます。これは「少ない労力でより多くの成果を」という意味だそうです。
 「タイパ重視」の人が増えているといわれる昨今、「Doing More With Less」のような考えを持つビジネスパーソンの方々も多いと思います。そんな方々にとって、本書は多くのヒントを与えてくれるでしょう。

(編集部・小村)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2017年4月号掲載

レバレッジ時間術 ノーリスク・ハイリターンの成功原則

毎日忙しく働いているのに、成果が出ない人。定時で帰っても、人並み以上の結果を残す人。その差は時間の使い方にあり! 常に効率的に成果を上げる「仕組み」づくり、目標から逆算して予定を立てる「俯瞰逆算スケジュール」、毎朝作る「タスクリスト」…。最小の努力で最大の成果を上げる時間術のノウハウが詰まった1冊。

著 者:本田直之 出版社:幻冬舎(幻冬舎新書) 発行日:2007年5月
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