2026.7.27

編集部:福尾

独創的なアイデアは「孤独」から生まれる!? マイケル・ジャクソンに学ぶクリエイティブ思考

独創的なアイデアは「孤独」から生まれる!? マイケル・ジャクソンに学ぶクリエイティブ思考

 「キング・オブ・ポップ」と呼ばれたマイケル・ジャクソン。彼の半生を描いた伝記映画『Michael/マイケル』が、世界興行収入10億ドルを突破しました。これは、伝記映画として史上初の快挙だそうです。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
 私も劇場で鑑賞しましたが、圧巻のパフォーマンスや音楽はもちろん、1人の人間としてのマイケル・ジャクソンの姿に強く心を動かされました。

 なかでも印象に残ったのは、創作に没頭するマイケルの姿です。「Thriller」や「Beat It」といった歴史に残る名曲は、自分自身と向き合う孤独な時間から生まれていました。

 一方、現代において「孤独」は、どこか避けるべきものとして語られます。「孤独死」という言葉が象徴するように、孤独には否定的なイメージがつきまといます。
 しかし、本当に新しい発想は、マイケルのように1人で思索を深める時間から生まれるのではないでしょうか。

世界を魅了する作品は、1人の時間から生まれる

 そこで今週は、創造性を育む習慣が学べるビジネス書『FUTURE INTELLIGENCE これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』(スコット・バリー・カウフマン、キャロリン・グレゴワール 著/大和書房 刊)をPick Upします。

 著者は、心理学研究の世界的名門ペンシルベニア大学の心理学者。最新の脳科学や心理学の知見をもとに、「非凡な発想」をもたらす習慣を解き明かしています。
 先述の「孤独」は、その習慣の1つに挙げられています。

 

孤独に耐えられる能力は、成功したクリエイターに共通して見られる特徴だ。彼らは煩わしい日常の雑事や付き合いに背を向けて、自分自身とつながることができる。だが、孤独とは、単に気が散るものを避けて暮らすというだけではない。それは心の中で内省し、新しいつながりを築き、意味を見出すためのスペースをつくることなのだ。

 (『FUTURE INTELLIGENCE』 75ページ)


 もちろん、創造は1人だけで完結するものではありません。多くの仕事では、多様な視点を取り入れ、協働することが欠かせません。例えば映画でも、マイケルは音楽プロデューサーのクインシー・ジョーンズをはじめ、多くの優れたクリエイターと作品をつくり上げていました。しかし本書は、それでも「創造行為そのもの」には、1人の時間が必要だと説きます。

脳科学が明かす「孤独」の効用

 その理由として挙げられるのが、私たちの脳内の「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」です。これは、外部からの刺激が少ない時に活性化する脳の神経回路で、内省や創造性に深く関わっています。

 

脳のデフォルト・モード・ネットワークが活性化され、心中の焦点が定まり、それがレンズとなって、自分のことも人のことも、より鮮明に見られるようになるのだ。

(『FUTURE INTELLIGENCE』 81ページ)


 常に情報にさらされる現代だからこそ、あえて1人になり、思考を漂わせる時間をつくる。その時間が、DMNを活性化させ、バラバラだった思考と思考を結び付け、独創的な発想を生み出すのだといいます。

 私自身も、朝少し早く起き、スマートフォンを見る前に1人になる時間を設けています。一見すると何もしない時間ですが、思考が整理され、その日の集中力や生産性が大きく変わることを実感しています。これも、DMNの働きによるものかもしれません。

 マイケル・ジャクソンは、本書でも創造性の象徴的な存在として紹介されています。

 

ステージでの刺激的なパフォーマンスを見れば、マイケル・ジャクソンのことをとてもシャイで繊細な人間だと思う人はほとんどいないだろう。この「ポップス界の王」は、幼いころからステージではバイタリティや強さやカリスマ性を発揮したが、その私生活は病的なほどの過敏さ、孤独感、葛藤を特徴とした。

 (『FUTURE INTELLIGENCE』 166ページ)


  映画を観た後でこの一節を読むと、マイケルの人物像がより立体的に見えてきます。繊細な人は、他人が見過ごす小さな変化に気づき、無秩序に見えるものの中から新たなパターンを見いだします。だからこそ苦しみも抱えやすい一方で、人にはない創造性を発揮できるのだと本書はいいます。

AI時代に求められる、人間の創造力

 本書は、この他にも「遊び」「瞑想」「逆境」など、創造性を育てる10の習慣を紹介しています。詳しくは、TOPPOINTライブラリーの要約をご覧ください。

 創造性は、アーティストだけに求められる能力ではありません。経営の意思決定、新規事業の立案、組織改革、営業やマーケティングなど、ビジネスのあらゆる場面で必要とされます。

 AIが答えを示してくれる時代だからこそ、人間に求められるのは「答えを探す力」ではなく、「まだ誰も考えていない問いを生み出す力」です。

 その第一歩は、意外にも「1人になる時間」を持つことなのかもしれません。『Michael/マイケル』を観て心を動かされた方にも、創造性を磨きたいすべてのビジネスパーソンにも、『FUTURE INTELLIGENCE』は多くの示唆を与えてくれます。

(編集部・福尾)

*  *  *

 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2018年7月号掲載

FUTURE INTELLIGENCE これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣

「クリエイティブな人」というと、常に前向きに挑戦する人というイメージがある。だが、創造性はそう単純なものではない。独創的な人の脳内では、能動性と消極性など、正と負の要素が入り交じっているという。そんな複雑なクリエイティブ思考を育むための習慣を、最新の知見や、独創的な天才たちの事例を紹介しつつ説く。

著 者:スコット・バリー・カウフマン、キャロリン・グレゴワール 出版社:大和書房 発行日:2018年4月
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