「この味がいいね」と君が言ったから 七月六日はサラダ記念日
そう、本日7月6日は「サラダ記念日」。歌人・俵万智氏の上記の名歌に由来します。この歌は、恋人の「この味がいいね」という何気ない一言によって、平凡な1日が忘れられない記念日へと変わる喜びを詠んだものです。
皆さまが扱う商品やサービスは、お客様から「これがいい」と言ってもらえているでしょうか。そして、そう言ってくれた顧客のことを、どれだけ深く理解できているでしょうか。
今回ご紹介するのは、そのヒントが詰まったマーケティングの本、『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(西口一希 著/翔泳社 刊)です。
1000人より、たった1人を深く知れ
西口一希氏はP&G出身のマーケターで、豊富な実績を上げてきた方です。例えば、ロート製薬では化粧水「肌ラボ」を販売本数ベースで日本一に育て上げました。さらにスマートニュースでは、iPhoneアプリランキング100位圏外からわずか1年でNo.1を獲得しています。
そうした経験から、マーケティングでは「N1分析」が重要だという答えを導き出しています。N1分析とは、次のようなものです。
N1分析 ―― セグメントごとの「1人の顧客(N=1)」にインタビューして、認知や購買のきっかけと深層心理を分析
(『実践 顧客起点マーケティング』 19ページ)
現在では、大規模アンケートやビッグデータ分析を活用するマーケティングが広く行われています。多くの企業では、売上が伸び悩むと「もっと多くのデータを集めよう」「より広いターゲットに訴求しよう」と考えがちです。しかし西口氏は、これとは逆の発想を提示します。
商品やサービスに、届けたい顧客がいる以上、マーケティング上で機能する強い「アイデア」を導き出すには、実在する1人の顧客を深掘りすることが唯一有効な方法です。
(『実践 顧客起点マーケティング』 27ページ)
たった1人の顧客と深く向き合い、なぜその商品を手に取ったのか、どんな感情の変化があったのかを丁寧に探る。そこから生まれた洞察こそが、他の顧客にも響くアイデアを生み出す手がかりになるというのです。
まるで俵万智氏の歌のように ―― 「この味がいいね」という一言の裏にある感情と文脈を徹底的に想像することが、マーケティングの出発点だといえるでしょう。
本書が提示する2つのフレームワーク
では、多くいる顧客のうち、どの人に注目すればよいのでしょうか。
その判断に役立つフレームワークが、「顧客ピラミッド」です。これは、顧客層全体を次の5つのセグメントに分類するというものです。
・ロイヤル顧客 ―― 認知あり/購買頻度・高
・一般顧客 ―― 認知あり/購買頻度・中~低
・離反顧客 ―― 認知あり/購買経験あり/現在購買なし
・認知・未購買顧客 ―― 認知あり/購買経験なし
・未認知顧客 ―― 認知なし
(『実践 顧客起点マーケティング』 59ページ図より一部抜粋)
そして、各セグメントの顧客を詳しく分析し、アイデアを開発するとともに、具体的な打ち手を検討します。
重要なのは、どの顧客層のN1を分析するかによって、見えてくる課題や機会が異なるという点です。
例えば、「この商品・サービスが好きだ」と熱烈に支持するロイヤル顧客。彼らが語る「商品・サービスを使い続ける理由」には、ブランドの真の価値が表れていると西口氏は言います。一方、まだ自社の商品・サービスを知らない未認知顧客の場合は、「なぜ知らないのか」を探ることで、コミュニケーション上の盲点が浮かび上がるのだそうです。
さらに本書では、「9セグマップ」というフレームワークも提示されています。これは、購買状況と今後の意向(積極的か消極的か)を掛け合わせた9つのセグメントで顧客を可視化するツールです。販売促進とブランディングの活動を1つの地図で管理でき、経営とマーケティングをつなぐ共通言語として機能するのだそうです。
これら2つのフレームワークを使うことで、どの顧客層を優先すべきか、競合からどう顧客を獲得するかという「具体的な戦い方」が見えてくると西口氏は述べています。
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『実践 顧客起点マーケティング』は2019年刊行ながら、マーケティング系ビジネス書のランキングで今も上位に挙がり続けている本です。それは、本書が高い実践性を備えていることに加え、デジタル広告やAI分析が当たり前になった今こそ、「人間1人1人の本音」に向き合う重要性が増しているからかもしれません。
事業の成長に悩んだり、「施策を打っても手応えがない」と感じたりしているビジネスリーダーは、本書を手に取り、自社の「たった1人」の顧客と向き合ってみてはいかがでしょうか。
(編集部・油屋)
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