1カ月に「本を1冊も読まない」人は6割以上にのぼる ―― 。
文化庁が今月公表した、令和5年(2023年)度の「国語に関する世論調査」の結果は、日本人の読書離れが改めて浮き彫りになったとして、様々なメディアで取り上げられました(「令和5年度「国語に関する世論調査」の結果について」/文化庁ホームページ)。
この調査結果を見ると、読書をする人だけでなく、読書量も15年前から減少傾向にあることがわかります。その主な理由として、「情報機器(スマートフォンやゲームなど)で時間が取られる」「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」といったものが挙げられています。また、「良い本の選び方がわからない」という意見も少なからずあったようです。
そこで今回は、本の選び方や読み方、文章の書き方など、膨大な情報をうまくインプット・アウトプットする方法が綴られたロングセラー、『「知」のソフトウェア 情報のインプット&アウトプット』(立花隆 著/講談社 刊)をPick Upします。
本を読む「目的」を明確にしよう
評論家・ジャーナリストとして幅広い執筆活動を展開してきた「知の巨人」、立花隆氏によれば、知的情報のインプットには2種類あるといいます。
インプットには2つの種類がある。アウトプットの目的が先行していて、その目的を満たすためのインプットであることがハッキリしている場合と、とりあえずそのインプットによって何をどうしようなどとまったく考えず、楽しみながらインプットしている場合とである。(中略)前者においては、インプットは手段である。後者においては、インプットそれ自体が目的である。
(『「知」のソフトウェア』16~17ページ)
そして立花氏は、前者の「目的先行型」の読書は、後者の「無目的型」よりも能率が高く、また短時間で多くの本が読めると言います。
1冊の本を楽しみながら読むなら、1日2冊がせいぜいだろう。しかし、特定の情報を求めて文献を渉猟するとなったら、1日に10冊、20冊の本にあたっていくということはさして困難ではない。(中略)要するにはじめから必要なところ以外読まないのである。
本というのは、1ページ目から読みはじめて、最後のページまで読むものなのだ、というような固定観念は捨てることである。(『「知」のソフトウェア』18ページ)
本を読まない人の中には、もしかすると「本を読む=時間がかかるもの」という意識があるのかもしれません。ですが、立花氏が説くように読み方を工夫することで、さほど時間をかけずに新たな知恵を得ることができるのです。
「本を読む時間がない」「積読が一向に減らない」といったお悩みを抱えている方であれば、まずは目的先行型で読書を進めてみてはいかがでしょうか。本を読む目的を明確にし、目次や見出しに注目すると、知りたい内容が短時間で把握できるため、きっと今より早く本を読み終えることができるはずです。
まずは入門書を3冊読もう
立花氏は『「知」のソフトウェア』の中で、あまり詳しくないジャンルの知識を得たい時の、本の選び方についてもアドバイスしています。
氏によれば、新しい知識を得たいと思った時には、次の条件を満たす「入門書」を手に入れるのが最も重要だそうです。
第1に、読みやすくわかりやすいこと。
第2に、その世界の全体像が適確に伝えられていること。
第3に、基礎概念、基礎的方法論などがきちんと整理されて提示されていること。
第4に、さらに中級、上級に進むためには、どう学んでいけばよいか、何を読めばよいかが示されていることなどである。(『「知」のソフトウェア』96ページ)
これらの特徴を満たしているか否かを確認するには、本をパラパラとめくりながら中身を確認したり、その本の「はじめに」や「あとがき」を読んだり、巻末の参考文献をチェックしたりするといいでしょう。活字を読むことが苦手という方であれば、まずは入門書の中でも、漫画でわかりやすく解説している本から始めてもいいかもしれません。
また、立花氏は次のような理由から、「入門書は1冊だけにせず何冊か買って読んだ方がいい」と言います。
入門書をつづけて何冊か読むことが、その世界に入っていくための最良のトレーニングになる。よくわからないところはとばしてよいからどんどん読みすすむ。
この段階では、わからないところをわかろうと努力して考え込むことはしないほうがよい。入門書で出てきたわからないことというのは、たいてい著者の説明不足から起きていることであって、別の入門書を読むか、中級書を読めばすぐにわかることがほとんどなのである。
(『「知」のソフトウェア』97ページ)
入門書を1冊読み終ったら、ただちに中級書に進むような乱暴なことをせずに、別の入門書を手に取るべきである。なるべく1冊目とはちがった角度から書かれた入門書がよい。同じ世界が視点を変えることによって、かくもちがって見えるものかということがわかるだろう。
(『「知」のソフトウェア』97ページ)
このように入門書を複数冊読むことで、そのジャンルの基礎を把握することが重要だと言います。また、入門書は1冊目よりも2冊目、3冊目の方がきっと早く読めるはず。それにより、本を読むことへの抵抗感なども薄れていくことでしょう。
読書家の方であれば、おそらく「何かおすすめのビジネス書を教えて」と聞かれることもあるかと思います。もし、その人が普段読書をしない方であれば、自分がおすすめしたい本と一緒に、立花氏のアドバイスを参考に、そのジャンルの入門書もあわせて紹介するといいでしょう。その人が本を途中で読まなくなる可能性が減り、読書仲間が増えるかもしれません。
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『「知」のソフトウェア』では、この他に新聞や雑誌などからのインプット法、また収集した情報をアウトプットする方法についても解説しています。刊行は1984年ですが、その内容は今も大いに参考になります。知的生産の格好の「入門書」だと思いますので、まだお読みでない方はぜひご一読ください。
(編集部・油屋)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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