2026.6.1

編集部:福尾

無印良品を再生させたマニュアルづくりに学ぶ 「仕組み」を大切にする働き方とは?

無印良品を再生させたマニュアルづくりに学ぶ 「仕組み」を大切にする働き方とは?

 6月4日は6(ム)と4(ジ)の語呂合わせで「MUJIの日」とも呼ばれます。
 シンプルで心地よい商品を展開する無印良品は、いまや海外でも「MUJI」と呼ばれ、日本を代表するブランドの1つです。しかし、その“感じの良さ”は、決してセンスや感覚だけでつくられているわけではありません。

 実は無印良品には、2000ページ分の分厚いマニュアルが存在します。

 それは、かつて38億円もの赤字に陥った同社がV字回復を果たした秘密 ―― 徹底した「仕組み化」が形となったものです。今週は良品計画の元会長である松井忠三氏が、その考え方をまとめたビジネス書、『無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい』(角川書店 刊)をPick Upします。

 「マニュアル」と聞くと、「無機質で、冷たい印象がするもの」と思う人もいるかもしれません。しかし本書は、そのイメージを大きく覆します。無印良品のマニュアルは、日々の仕事に生き生きと取り組みながら、成果を出すための最強の“ツール”だというのです。

無印良品を再生させたのは「2000ページのマニュアル」だった

 先述のように2001年、無印良品は38億円の赤字を計上しました。当時は、ベテランの経験や勘に頼る文化が強く、仕事のスキルやノウハウを蓄積する仕組みがない状態だったといいます。

 そこで、同年社長に就任した松井氏は業務の徹底した標準化を推進しました。象徴的なのが、「MUJIGRAM」と呼ばれる店舗マニュアルと、本部業務をまとめた「業務基準書」の作成です。
 MUJIGRAMは2000ページ分にも及び、売り場のディスプレイや接客など、「ここまで書くのか?」と驚くほど細かなルールが明文化されました。

 ここだけを見ると、「そこまで管理するのか」と窮屈に感じるかもしれません。しかし、松井氏が考えるマニュアルの本質は“縛ること”ではなさそうです。
 氏はマニュアルのメリットが「チームの実行力を高める」ことにあると説き、次のように解説します。

 

仕事で何か問題が発生したとき、その場に上司がいなくても、マニュアルを見れば判断に迷うことなく解決できる。たったこれだけのことでも、仕事の実行力が生まれ、生産性は高まるでしょう。

(『無印良品は、仕組みが9割』 14ページ)

 

 いいマニュアルづくりのカギは、新入社員でも理解できる言葉で、徹底して具体化すること、と松井氏は言います。そのためMUJIGRAMには、写真やイラスト、図もふんだんに盛り込まれています。
 さらに、MUJIGRAMには、各項目の最初に「作業の意味・目的」が書かれているといいます。その理由は、「どのように行動するか」だけでなく、「何を実現するか」という仕事の軸をぶれさせないためだそうです。

 

作業の意味を理解できれば、問題点や改善点も発見できるようになります。マニュアルは、実行力を養うテキストであり、自分が「どう働くか」を考えるための羅針盤にもなるのです。

(『無印良品は、仕組みが9割』 15ページ)

 

 重要なのは、誰かの経験や勘に依存しないことです。優秀な社員しか成果を出せない組織では、再現性がありません。一方で、仕組みが整っていれば、誰が担当しても一定以上の成果を出せるようになります。

 これは人手不足や仕事の属人化に悩む多くの企業にとって、非常に重要な視点ではないでしょうか。

「決まったことを、決まった通りにやる」ことの強さ

 私たちがどこの地域の無印良品に入っても、「無印らしさ」を感じる背景には、経験と勘を排除し、「決まったことを、決まったとおり、キチンとやる」という姿勢があります。

 一見すると当たり前ですが、実際には多くの組織で徹底されていません。
 例えば ――

 

  • ・人によって説明が違う
  • ・店舗ごとに運営品質が異なる
  • ・ベテランしか仕事を回せない
  • ・「あの人しかわからない」が多い

 

 このような状態は、多くの会社で見られます。

 私も、新卒で入社した会社では「マニュアルはないから、先輩についていって学んで」と言われ、おおいに困惑したことがあります。人によって仕事の進め方がバラバラだと、アウトプットにもばらつきが出てしまいます。それを標準化するのは、「個人の努力」という精神論だけでは難しいものがあるように思います。

 無印良品は、「標準」を定めることで、改善を積み重ねられる組織へと変わっていきました。基準があるからこそ、問題点が見え、改善もできるのです。

 『無印良品は、仕組みが9割』が優れているのは、単なるマニュアル論では終わらない点です。生産性を高めるための具体的な仕組みまで公開されています。
 例えば ――

 

  • ・“ホウ・レン・ソウ”を減らすべき理由
  • ・なぜ18時30分退社を徹底化したのか
  • ・提案書は「A4一枚」

 

 こうした具体的な方法まで踏み込んで語られています。

 特にビジネスリーダーにとっては、「自分の組織に置き換えるとどうなるか」を考えながら読めるのではないでしょうか。詳しくは、ぜひTOPPOINTライブラリーの要約をご覧ください。

AI時代だからこそ、「仕組み化」が重要になる

 実は、『TOPPOINT』編集部にも少なくない量のマニュアルがあり、要約の進め方から記事のつくり方、校正のチェックポイントといった、1つ1つの業務に対して細かなルールがあります。

 もともとマニュアルのない会社にいた私からすると、最初は驚きました。しかし『TOPPOINT』編集部では、マニュアルがあることによって仕事の進め方で迷うことが減り、人によるアウトプットのばらつきが少ないことを、日々実感しています。

 近年はAI活用やDXが注目されていますが、属人的な仕事が多い組織では、AIも導入しづらくなります。なぜなら、“何が正解か”が共有されていないからです。
 その意味で、本書は今こそ読み直したいビジネス書だといえるでしょう。

 6月4日のMUJIの日に合わせて、無印良品の“思想”ではなく、“仕組み”に目を向けてみてはいかがでしょうか。
 仕事の進め方を見直すきっかけになる本として、多くのビジネスパーソンにおすすめしたい1冊です。

(編集部・福尾)

*  *  *

 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2013年9月号掲載

無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい

仕組みをつくれば、どんな時代でも勝てる組織の風土をつくりあげられる ―― 。2001年に38億円の赤字を出した無印良品を「V字回復」させた著者が、改革の象徴といえる何千ページにも及ぶマニュアルを公開しつつ、「仕組みを大切にする働き方」を紹介。マニュアルによる仕事の徹底的な“見える化”がいかに大切か、効果的であるかが、説得力をもって語られる。

著 者:松井忠三 出版社:角川書店 発行日:2013年7月
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

このPick Up本を読んだ方は、
他にこんな記事にも興味を持たれています。

一覧ページに戻る