自民党の“圧勝”でした。
2026年2月8日に行われた第51回衆議院議員総選挙において、自民党は316議席を確保。1つの政党が獲得した議席数としては、戦後最多となりました(「自民が戦後最多316議席・中道49・維新36・国民28 衆院選の全議席確定」/日本経済新聞電子版2026年2月9日)。
選挙が終わり、結果に一喜一憂している方も多いかと思います。しかし、有権者の役目は投票して終わりではありません。自分が選んだ国会議員が公約を果たしてくれるのか、それとも公約を反故にするのか、今後見届ける必要があります。
では、政治家となった彼らの姿を追う時、どのような点に注目すればよいのでしょうか。今回は、そのためのヒントを与えてくれるマックス・ウェーバーの名著、『職業としての政治/職業としての学問』(日経BP社 刊)をPick Upします。
本書はドイツを代表する社会科学者、マックス・ウェーバー(1864~1920)による2つの講演を収録したものです。なお、「TOPPOINTライブラリー」の要約では、このうち「職業としての政治」をご紹介していますので、ここでも「職業としての政治」に絞ってお話しします。
政治家に欠くべからざる資質とは?
ウェーバーの講演「職業としての政治」は、ドイツが第1次世界大戦に敗北した直後の1919年1月に行われました。今から100年以上前の講演ですが、その内容は現代の政治、そして政治家のあり方を考える上でも、貴重な示唆を与えてくれます。
私がそのことを強く感じるのは、講演の中盤以降で「政治家の資質」について述べているところです。ウェーバーは、政治家が権力を行使し、その責任を担うためには「3つの重要な資質」が求められると語ります。
政治家にとって何よりも重要な資質は3つあります――情熱と責任感と判断力です。情熱というのは、仕事にふさわしい情熱をもって、すなわち自分の「仕事」に、仕事を支配している神やデーモンに、情熱をもって献身できるという意味です。
(『職業としての政治/職業としての学問』 114ページ)
政治家に重要な資質として、まずウェーバーは「情熱」を挙げます。私たちが選挙で投票する時、候補者の「情熱」を判断材料とすることは多いのではないでしょうか。街頭演説やSNSなどで熱弁をふるう彼らは皆、情熱に溢れているように見えます。
しかし、ウェーバーは情熱だけではいけない、と言います。政治家は「責任感」と「判断力」も併せ持つ必要があるのです。
それがどれほど純粋な情熱であっても、たんなる情熱では十分ではないのは明らかなことです。情熱が「仕事」に役立つものとして、仕事への責任という形で、行動の決定的な指針となるのでなければ、政治家にふさわしいものではないのです。そしてそのためには、判断力が必要なのであって、これは政治家に決定的に必要な心的な特性です。この判断力とは、集中力と冷静さをもって現実をそのまま受け入れることのできる能力、事物と人間から距離をおくことのできる能力です。
(『職業としての政治/職業としての学問』 115ページ)
政治家は、熱い情熱と冷静な判断力とを共生させることによって、責任をもって権力を行使することができる、とウェーバーは考えます。当選した議員たちの活動を私たちが見る時、こうした点に注意を払う必要があるでしょう。
政治家の足を引っ張る「虚栄心」
ウェーバーによれば、政治家という仕事には2種類の「大罪」があるといいます。それは、「仕事に献身しない姿勢」と「無責任さ」です。
なぜ、政治家はこうした罪を犯してしまうのでしょうか?
ウェーバーは、政治家自身の中に潜む敵=「虚栄心」の影響があると指摘します。
虚栄心とは、自分ができるだけ脚光を浴びるようにしたいという欲望のことで、この欲望のために政治家はこの2つの大罪の片方を、ときには両方を犯すよう、強く誘惑されるのです。(中略)そして俳優のようにふるまい、自分の行為にたいする責任を軽く考え、自分の行為が与える「印象」ばかりを気にするようになる危険に、つねに脅かされているのです。
(『職業としての政治/職業としての学問』 117ページ)
議員になった途端、虚栄心から自分の権力を誇示する人、国益よりも自身の権力維持を優先する人は少なくありません。そうした姿を見て、「なぜこの人に投票したのだろう」と後悔した経験を持つ有権者も多いのではないでしょうか。
だからこそ、ウェーバーの指摘は重要です。政治家に必要な3つの資質を備え、しかも虚栄心を持たない ―― 。そのような人々が政治家として選ばれ、任務を果たしてくれるなら、日本の政治も安泰だといえるのではないでしょうか。
「職業としての政治」はビジネス書?
これまで、『職業としての政治/職業としての学問』の中から政治家に必要な資質や、その足を引っ張る虚栄心について見てきました。
こうした点に注意を払う必要があるのは、政治家だけではありません。ビジネスパーソン(特にマネジメント層)も同様だといえるでしょう。熱い情熱と冷静な判断力、そして虚栄心のない人物は、組織においても求められています。
そう考えると、『職業としての政治/職業としての学問』はビジネス書としても読むことができるといえます。「TOPPOINTライブラリー」でご紹介している日経BP社版は、平易な日本語で訳されていますので、この機会にぜひ、この名著をお読みいただければと思います。
(編集部・小村)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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