1582年(天正10年)の今日、6月2日。
日本史に残る有名な事件、「本能寺の変」が起こりました。明智光秀が主君、織田信長を京都の本能寺に襲撃。信長は自刃し、織田政権は崩壊に向かいます。
部下の反発や裏切りによって組織が危機に陥る ―― 。それは武士の世だけでなく、現代の職場でも起こり得ることです。
ではリーダーは何をすれば、そうした事態を防げるのでしょうか?
今週は、そのヒントとなる本、『Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』(クリスティーン・ポラス 著/東洋経済新報社 刊)をご紹介します。
無礼な職場では、半分の人がわざと手を抜く
「Civility」(シビリティ)とは、礼儀正しさ、丁寧さを意味する言葉です。本書ではその意味の通り、礼儀正しい行動の重要性が語られています。
ジョージタウン大学の教授で、グーグルや国際連合などで活気ある職場作りのコンサルティング活動を行う著者によれば、職場で無礼な態度を取られたと感じた人は、次のような行動を取る傾向があるそうです。
- ・48パーセントの人が、仕事にかける労力を意図的に減らす。
- ・47パーセントの人が、仕事にかける時間を意図的に減らす。
- ・38パーセントの人が、仕事の質を意図的に下げる。
(『Think CIVILITY』 ⅴページ)
つまり、織田信長がしていたとされる“恐怖”や“威圧”によるマネジメントは、現代の職場では逆効果になるということです。部下を小馬鹿にしたり、感情的に怒鳴ったりする行為は、彼らの仕事への情熱や、組織の生産性を下げる原因になります。
礼節を持って接することで、相手も好意的な態度で応じてくれる ―― 著者はそう説いています。
礼節を身に付けるための心得
では、職場で「礼儀正しくある」ために、リーダーは何をすべきなのでしょうか?
著者は、次の5つの行動を勧めています。
①与える人になる
②成果を共有する
③褒め上手な人になる
④フィードバック上手になる
⑤意義を共有する(『Think CIVILITY』 156ページ)
1つ目の「与える人になる」とは、自分の道具、知識、時間といったリソースを惜しまず他者と分け合うことです。そうすることで相手は信頼を寄せ、深く広い人間関係を築くことにつながる、と著者は言います。
また、「成果を共有する」ことも重要です。他者の支援があって成功したのであれば、その手柄を独り占めせず、関わった人すべての評価が上がるよう配慮するべきです。
経営学者のウォーレン・ベニスはこう述べています。
良いリーダーはスポットライトの下で自らが輝くが、偉大なリーダーは、自分だけでなく、自分の下にいる人たちを輝かせる。
(『Think CIVILITY』 163ページ)
このような謙虚さは、周囲に良い影響をもたらします。著者によれば、謙虚なリーダーの下では、メンバーは積極的に新しいことを学び、より熱心にチームに貢献しようとし、仕事にも満足する傾向が強いそうです。そしてチームへの定着率も向上すると指摘しています。
フィードバック上手になる
「フィードバック」も重要な要素です。本書では、「スコアボード」をつくり、会社の現在の最優先課題や目標が誰にでも一目でわかるようにする取り組みが紹介されています。
このように、会社の状況を経営陣が社員に伝えることで、社員は自分を「組織にとって価値ある存在」と感じられるようになる、と著者は述べています。
また、社員同士が互いにフィードバックをし合うことも大切です。とはいえ、否定的な指摘は誰でも言いにくいもの。そこで、次の事例のように、相手に悪い点を伝える時の「合図」をあらかじめ決めておく工夫が有効だといいます。
ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、不愉快なことを誰かに直接、伝える必要ができた時には、会議室の棚からぬいぐるみのヘラジカを取ってきて、テーブルの上に置くことになっている。それが、「今からは、耳の痛いことを遠回しにではなく、遠慮せずそのまま話すよ」ということを知らせる合図となるのだ。
(『Think CIVILITY』 172ページ)
一方で、良い成果を挙げた社員に対しては、積極的にフィードバックを返すことが重要です。著者によれば、高い業績を上げているチームは、平均的なチームよりも6倍多く肯定的なフィードバックをしているといいます。
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「リーダーは弱音を吐いてはいけない」「常に先頭を走るべき」…。こうした従来のリーダー像に囚われている人は少なくないかもしれません。しかし、それが自分の所属する組織に合っているとは限りません。
『Think CIVILITY』は、リーダーが自身の礼節を高め、職場の心理的安全性を高め、生産的な場に変えていく方法を、豊富な事例とともに紹介しています。
「人が気持ちよく働ける職場にしたい」「信頼されるリーダーになりたい」―― そんな思いを持つリーダーに、特に手に取っていただきたい1冊です。
(編集部・油屋)
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