万博で人気の「フランス館」
先日、大阪・関西万博を訪れました。
地下鉄の夢洲(ゆめしま)駅を出てまず目に飛び込んでくるのは、スギやヒノキで組まれた1周2kmの「大屋根リング」。「多様でありながら、ひとつ」という会場デザインの理念を表すシンボルであり、「最大の木造建築物」としてギネス世界記録にも認定されています。
また屋上の「スカイウォーク」と呼ばれる通路には草花や芝生が植えられており、天気の良い日はシートを広げてひと休みするのも気持ちよさそう。ここを歩くだけでも、万博の魅力に触れられた実感がありました。
万博会場には、5月12日公開の「今週のPick Up本」でも取り上げた、最新のAIやロボット技術を体験できるシグネチャーパビリオン「いのちの未来」をはじめ、各国が文化や技術を持ち寄る「海外パビリオン」も多彩な表情をみせています。なかでもフランス館とアメリカ館は人気が高く、長蛇の列。私は時間の都合で断念しましたが、ある来場者の「フランス館が一番よかった」という言葉に強く惹かれました。
調べてみると、フランス館のテーマは「愛の讃歌」。ルイ・ヴィトンやディオール、セリーヌなどのフランスを代表するファッションブランドによる展示や、ワインにまつわる企画も展開しているとのこと。ファッション、ワイン、愛 ―― 私が思い描く「フランスそのもの」が詰まっているようで、久しぶりにフランスの文化に触れたくなりました。
そこで今週は、2014年の邦訳刊行以来ロングセラーとなっている『フランス人は10着しか服を持たない パリで学んだ“暮らしの質”を高める秘訣』(ジェニファー・L・スコット 著/大和書房 刊)をご紹介します。著者はアメリカ人の女性で、留学先のパリで出会った“マダム”の暮らしぶりに触発され、情熱的に、お金をかけずに、“暮らしの質”を高めるスタイルを描き出しました。
フランス流の美しく生きるヒントとは?
「10着しか服を持たない」というタイトルに、最初は身構えてしまいました。私自身、スコット氏と同様に服であふれたクローゼットを前に、そんな生活は無理だと思っていたからです。しかし本書は「10着」にこだわる必要はなく、大切なのは“自分らしい服だけを厳選すること”だと語ります。
似合わない服や、ほとんど着ていない服、質の悪い服であふれ返っているクローゼットとおさらばすること。最終的な目標は、自分らしさを表現してくれる大好きな服ばかりにすること。そして、大切な服をゆったりと収納できるようにすることだ。
(『フランス人は10着しか服を持たない』 62~63ページ)
要・不要を見極めながら、時にアイテムを入れ替え、TPOに合った服装を整えるプロセスこそが、“暮らしの質”を高める手段だとスコット氏は説きます。流行や価格に惑わされず、自分にとって本当に価値のあるものを選び取る。その選択の積み重ねが、細部にまで行き届いた美意識につながり、暮らし全体の豊かさに直結するのです。
また、パリのマダムの家では、仕立ての良い服や高品質な食材、上質なワインなど、家族にとって本当に大切なものにお金をかけていました。ただし、それ以外は持たない。この「必要なものだけを持つ」哲学は、SNSなどで絶えずトレンドや安売り情報が流れてくる今、私たちが忘れがちな視点かもしれません。
素敵に暮らすということは ―― 収入の範囲で暮らし、モノにあふれた社会の誘惑を避けること。それこそ繁栄と呼ぶのだろう。
(『フランス人は10着しか服を持たない』 180ページ)
『フランス人は10着しか服を持たない』には、他にも、日々の食事の味わい方や体の動かし方、住まいの整え方、教養の身につけ方など、フランス流の“美しく生きるヒント”を教えてくれます。ワードローブを見直し、本当に大切なものに集中しながら、自分らしく毎日を重ねていく。その姿勢は、慌ただしい日々を送る日本のビジネスパーソンにとっても、大きな示唆となるでしょう。
万博を介して「フランス」に触れたことで、改めて感じた美意識の力。万博に行く予定がある方もない方も、ぜひこの1冊を手に取り、フランス流の暮らしの美学に学んでみてはいかがでしょうか。
(編集部・福尾)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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