令和の米騒動
コメ価格の高騰が続いています。
総務省の「小売物価統計調査」によると、2025年1月の東京都区部のコシヒカリ5kgの小売価格は4,185円。2024年1月の2,440円から、1.7倍以上の水準です。
全般的な物価高騰が家計を圧迫する昨今ですが、中でも日本人の主食であるコメの高騰は、とりわけ食べ盛りの子どもを育てる世帯や、家計に占める食費の割合が高い世帯に大きな負担となっています。
当初、農林水産省は、新米が出回る2024年9月以降にはコメ不足が解消され、市場も落ち着くという見通しを持っていました。ところが、予想に反してコメ価格は下がらず。
「令和の米騒動」を重く見た政府は、2025年2月に入り、備蓄米21万トンを放出することを決定しました。これは茶碗にすると約32億杯分で、今後、コメ価格の高騰に歯止めがかかることが期待されます。
令和の米騒動はなぜ起きたのか
さて、今回のコメ価格の高騰は、なぜ起きたのでしょうか。
その原因としては、様々なものが考えられます。肥料代や人件費などコメの生産コストが上がったこと、昨夏の品薄を受けて一部スーパーなどで在庫を多めに確保する動きがあったこと…。
それらの中で、最近指摘されているのが「投機目的の買い占め」です。値上がりを見越して大量に買い集め、高騰したところで売りさばこうと、外国人や異業種が買い付け競争に参入しているというのです。
政府が備蓄米の放出を決定したのは、今後の価格の低下を示唆することで、こうした投機目的の動きをけん制する狙いもあるようです。
令和の米騒動が教えるもの
「令和の米騒動」は、食料のようにマネーゲームの対象となることで国民生活に大きな影響を及ぼす分野があること、そしてその影響をより強く受けるのは経済的・社会的に弱い立場の人々であることを、よく表しています。
自給率100%といわれるコメにしてこうなのです。日本の食料自給率(カロリーベース)は38%(令和5年度)。国民が必要とするエネルギーのわずか4割さえも自国で賄えていない状況で、そもそもの量が圧倒的に足りない他の食料で同じことが起きたら、社会がどうなるかは想像に難くありません。
『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』(鈴木宣弘 著/講談社 刊)は、そうした日本の状況がいかに危機的なものか、元農林水産省職員でもある東京大学教授が警鐘を鳴らした本です。有事には日本人の6割が餓死する可能性があるなど、「食料はお金を出して買えばいい」などと言っていられなくなる未来を描いています。
今回の米騒動を機に、本書を通じて日本の農業の現状を知り、私たちが日々口にする食べ物が、いかに不安定な基盤の上に供給されているのか、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
ちなみに本書では、アメリカとのたび重なる貿易交渉において、日本の農業がいかに「生け贄」にされてきたかも描かれています。自動車など日本の輸出産業の関税を下げるのと引き換えに、アメリカ産の安い農産物の大量受け入れを可能にし、結果的に日本の農業は大打撃を受けた、と。
トランプ政権下で、アメリカは自動車など様々な分野への関税措置を表明しています。果たして今後どうなるのか、それを考える上でも本書は有益な視点を提供してくれるでしょう。
(編集部・西田)
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