不祥事が起きた後、会社の「評判」を守ることは非常に難しい ―― 。
1月27日に行われた、株式会社フジテレビジョン(以下、フジテレビ)の会見や関連報道を見て、そう強く思いました。
多くの方がご存じの通り、この会見のきっかけは、元タレントの中居正広さんと女性とのトラブルに、フジテレビ社員が関与していた疑いが週刊誌に報じられたことでした。
この問題を受けて、同社は1月17日に会見を行いましたが、記者クラブのみに限定されていたことなどが大きな批判を浴び、27日に再度、オープンな形で記者会見を開催しました。
10時間超にわたった2度目の会見では、会長・社長の辞任、第三者委員会の設置などが報告されましたが、その後もフジテレビへの批判の声は止まず、大手企業の間ではCMを再開する見通しは立っていません(2月3日本稿執筆時点)。
今回のフジテレビに限らず、事故・不祥事が発覚した後の対応を間違えたことで、顧客や関係者の信頼を失い、会社の評判を大きく落とした例はこれまでに数多く存在します。
一方で、事故発生後の会見で、評判を高めた企業もあります。その一例が、2022年に大規模な通信障害が起きた後に行われた、KDDI髙橋誠社長の会見です。この時は社長自らが、auなどのスマートフォンがインターネットに繋がりにくくなった原因等について詳しく解説したことから、同社への批判の声は会見後に収まりました。
このように、事故・不祥事が発生した後に評判を落とすも高めるも、やり方次第だといえるでしょう。では一体、経営者・管理職はどのような点に気をつければよいのでしょうか?
今回のPick Up本では、危機に対処し、評判を立て直す上で効果的な戦略が学べる書籍、『「評判」はマネジメントせよ 企業の浮沈を左右するレピュテーション戦略』(ダニエル・ディアマイアー 著/阪急コミュニケーションズ 刊)をご紹介します。
成功と失敗を分けるもの
本書の著者で、評判管理(レピュテーション・マネジメント)の専門家であるダニエル・ディアマイアー氏によれば、評判危機の管理には、成功と失敗を分けるものがあるといいます。
それが、「事業に関わる問題」の見極めです。
危機におけるリーダーシップの第1の戦略的任務は、「事業に関わる問題」の見きわめとなる。
失敗の責任の所在でも法的責任の範囲でも、あるいは誰が正しく誰がまちがっているのかでもなく、最も重要なのは自社のビジネスモデル、価値提供、ブランド、顧客をはじめとするステークホルダー(利害共有者)との関係に、この危機がどう影響するのかという問題である。(『「評判」はマネジメントせよ』51ページ)
今回のフジテレビのケースもそうでしたが、日本企業が事故・不祥事を起こした際、「誰が責任を取るのか」という話に注目が集まることが少なくありません。その背景には、「トップが辞任すれば幕引きを図れる」といった意識が企業側にも、そしてマスコミなどの聞き手側にもあるからかもしれません。
ただ、ディアマイアー氏は企業の責任問題よりも、事故・不祥事が顧客に与える影響を見極め、顧客が安心できるような策を打つべきだといいます。先のKDDIのケースでも、真摯な謝罪に加え、通信障害の原因や今後の復旧の見通しなどについて、社長自らが技術的な部分も噛み砕いてわかりやすく説明したことで、顧客も状況を理解し、留飲を下げたといわれています。
リーダーたるもの、事故・不祥事が起きた時に頭を下げて終わりではいけません。その事故・不祥事が及ぼす影響を見極め、ステークホルダーが安心できる対策を言葉と行動で示し、信頼回復に努めることが重要となります。
信頼回復に必要な4つの要素
では、ステークホルダーの信頼を取り戻すには、どのようなことをすればよいのでしょうか?
ディアマイアー氏は、そのためには次の4つの要素が最も重要だと本書で言います。
①透明性
②専門能力
③コミットメント
④共感(『「評判」はマネジメントせよ』56ページ図より抜粋)
1つ目の要素の「透明性」とは、情報を全て公開するということではありません。
ディアマイアー氏は、大切なのは「相手に理解される」ことだと言います。そしてそのためには、専門用語ばかり使わないこと、自分(経営者)が知っていること・知らないことを明確にすること、そしていつ追加報告ができるのかを相手に伝えることなどが、透明性の達成には必要だと述べています。
また、ディアマイアー氏は、コメントを差し控える場合も注意が必要だと言います。
透明性が損なわれるのは、関係する相手が、関係する情報の意図的な隠匿を感じ取った場合である。たとえば、にべもない「ノーコメント」がこれにあたる。「ノーコメント」は禁句というのではない。しかし企業経営者は、この言葉に相当な代償がともなうことを認識しなければならない。
(『「評判」はマネジメントせよ』57ページ)
事故・不祥事後の会見では、被害者のプライバシー等の観点から、どうしても言えないこと・公にはできないこともあるかと思います。ただ、だからといってノーコメントを貫くのではなく、現時点でわかっていることや再発防止策など、ステークホルダーが納得できる情報を可能な限り提供し、透明性を確保する努力が必要となりそうです。
その他3つの要素(専門能力、コミットメント、共感)については、ぜひ『TOPPOINT』の要約をご覧ください。
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『「評判」はマネジメントせよ』の序文では、”現代マーケティングの第一人者” フィリップ・コトラーが、次のようなコメントを寄せています。
つまるところ、良好な評判の確立には歳月を要する一方で、悪いニュースが瞬時にしてそれを破壊しうる。
(『「評判」はマネジメントせよ』6ページ)
SNS全盛の今、事故や不祥事を隠すことなどほぼ不可能です。中には誤情報・偽情報を拡散する人も出てくるかもしれません。その時に自社の評判を落とさないために、またステークホルダーの信頼を回復するために、リーダーはどのような行動を取るべきか。『「評判」はマネジメントせよ』を参考に、今一度考えてみてはいかがでしょうか。
(編集部・油屋)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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