古代ローマの哲学者、キケロは著書『パラドックス』でこう説いています。
人生を支配するは好運であり、英知にあらざるなり ―― 。
まもなく年末。自分にとってこの1年はどんな年だったかと、思いを巡らせる時期です。その中で、「今年はツイていた」「今年は運が悪かった」などと、自らの好運・不運について評価することもあるでしょう。
「運も実力のうち」といえども、ツキや運は偶然の産物であって、自分で呼び込むことはできない。そう思っている人も多いのではないでしょうか。そんな人は上記のキケロの言葉を、人生は自分でコントロールできないものである、と解釈するかもしれません。
ところが、「ツキや運は呼び込むことができる」、と語る人物がいます。トップスポーツ選手のメンタルアドバイザーなどをつとめる、西田文郎氏です。今週は、その西田氏が人生にツキを呼び込むための原則を教えてくれる『面白いほど成功するツキの大原則』(西田文郎 著/現代書林 刊)をPick Upします。
ツキを呼ぶ脳
著者によれば、ツキはその人の予知能力、すなわち「予感」と深く関係しているといいます。例えば、こんな経験はないでしょうか。
- ・自分が「できる」と思ったことにより、できそうもなかったことを成し遂げることができた。
- ・自分が「できない」と思ってしまったことにより、後から思えばできたはずのこともできなかった。
本書は、前者を「肯定的予知能力」、後者を「否定的予知能力」といい、このうち「肯定的予知能力」、つまり「できる」と事前に思うことがツキを呼ぶために大切であると説きます。
「よい予感」をより多く持った人間が勝つ
「悪い予感」をより多く持ってしまった人間が負ける
これが、ツキの原則である。(中略)予知能力が結果をつくり出す。どんなジャンルでも最終的にのし上がっていくのは、このツキの原則を上手に活かした人間だ。
(『ツキの大原則』52~ 53ページ)
仕事やプロジェクトに関して、冷静に分析すると「できない」と思うことはたびたびあるでしょう。しかし、あれも「できない」これも「できない」とばかり考えていると、次第に他のことも「できない」と思うようになるかもしれません。そうなれば、自分の実力を発揮できず、運にも見放されることになります。
それよりも、「間違いなくできる」と肯定的な予感を持ちながら仕事やプロジェクトに向かうことができれば、できないと思っていたことでも実現できる可能性が高いのです。
ビジネスで成功するためのツキの大原則
それだけではありません。「できる」と思って仕事に取り組めば、積極的な姿勢を示すことができます。それによって、周囲の評価も変わってくるかもしれません。著者は、この「周囲の評価」がビジネスパーソンにとって、ツキを呼び込むために重要であると指摘します。
というのも、ツキや運をつかもうとすれば、他人にどう思われるかが重要となるからです。そのため、本当に実力や能力があるよりも、「優秀だ」「能力のある人間だ」と“思われる”方が大事だといいます。なぜなら ――
ツキや運は他人が運んできてくれるものだからだ。どんなに優秀であっても、どんなに努力家でも(中略)そう認められない人間のところに、わざわざツキを運んでくるもの好きはいない。だから自分に運がないのは、監督や首脳陣、上司、会社のせいだと考えるのは間違いである。“自分のイメージ”がすべての原因である。
(『ツキの大原則』 129ページ)
といっても、ツイてないと思っている人が、すぐに自分のイメージを変えることは難しいでしょう。例えば仕事自体が好きではなかったり、上司のことが嫌いだったりするかもしれません。
そんな時はどうすればよいのか。著者は「言葉」を意識的に変えてみることをすすめています。例えば、会社に行くことを「今日も世の中で一番面白い場所へ行くぞ」と言う、イヤな上司を「反面教師としてとても役立ってくれるありがたい上司」と言う、などです。それにどのような意味があるのでしょうか。著者はこう述べます。
こうして思考の否定的回路を、肯定的回路に切り換える。これが大きな意味を持つのは、人間の脳には、正反対の2つのデータを同時に入力することができないからだ。つまり、「楽しもう」と思っているときは、「つらいなあ」とは思えない。
(『ツキの大原則』 151ページ)
こうした、マイナスの思考やイメージなどをプラスのものに変えることを「クリアリング」というそうです。一種の自己暗示といえますが、クリアリングを行うことによって自分のイメージを変えることができれば、他人からの評価も上がり、ツキや運を呼び込むことができるかもしれません。ビジネスにおいては、新たな仕事やプロジェクトに関わったり、任されたりすることにつながるのではないでしょうか。
最高のクリアリングは簡単にできる
ところで、著者はこのクリアリングの最高のものがあるといいます。実はそれは、私たちがいつでも簡単にできることです。何かといえば、「感謝」することです。
脳というスーパーコンピュータは、何かに感謝するとき、100パーセント安心し、100パーセント自己防衛から解放され、100パーセント「快」になるという、不思議なメカニズムを持っている。だから、ウソでもいい。感謝してしまうほうが勝ちなのだ。今日1日に感謝する、この人生に感謝する、(中略)困難だが、やりがいのある仕事に感謝する、意地悪な上司に感謝する、何でもかんでも感謝してしまう……。
(『ツキの大原則』 164ページ)
手近なところでは、まず1日3回の食事の際に「いただきます」「ごちそうさま」を意識して言うところから始めてみてはいかがでしょうか。職場で食事する時や外食の時、この言葉を言わずに食べていることも多いかもしれません。
以前、駅の立ち食いソバ屋で両手をあわせて深々と頭を下げ、「ごちそうさま」と言っているビジネスパーソンを見かけたことがありますが、そうした感謝の積み重ねが「よい予感」を導き、人生において運を好転させる要因となるのかもしれません。
また、家庭や職場で何かをしてもらった時に、「ありがとう」と口に出すことを習慣にしてみてはいかがでしょうか。こうしたクリアリングを頻繁に行うことが、ツキや運を呼び込む助けとなるでしょう。
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2024年はツイていなかった、と感じている人は、新しい年を迎えたなら心機一転、自分のイメージを変えるべく行動を起こしてみてはいかがでしょうか。ツキや運は自分の心がけ次第で呼び込むことができることを知れば、冒頭のキケロの言葉を読んでも、人生はコントロール可能であると解釈できるようになるでしょう。
『ツキの大原則』は、来る新年を充実した1年とするために読んでいただきたい1冊です。
(編集部・小村)
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