12月に入り、寒さが厳しくなってきました。気象庁によれば、今年の冬の気温は平年並みとのこと。去年が暖冬だったため、今年の冬はより寒く感じられるかもしれません。
また、ビジネスパーソンにとって、この時期は何かと多忙です。年末までに、片付けるべき仕事がたまっている。年が明けると、もうすぐ年度末。やり残した仕事はないか…。
寒さや日中の時間の短さ、忙しさなどが重なって、冬は体調を崩しやすい、ストレスの多い季節といえるでしょう。
そんな冬をストレスの少ない、楽しく過ごせる季節へと変えるにはどうすればよいでしょうか? 北欧、デンマークの暮らしに、そのヒントがあります。キーワードは、「HYGGE」 ―― ヒュッゲです。
ヒュッゲとは?
今週は、そのヒュッゲについて書かれた1冊、『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』(マイク・ヴァイキング 著/三笠書房 刊)をPick Upします。著者は、デンマークのコペンハーゲンにあるシンクタンク「ハピネス・リサーチ研究所」のCEOです。
デンマークといえば、世界幸福度ランキングで常に上位に位置する国として有名です。その一方で、気候が厳しく、税金が高いことでも知られています。
著者は、そうしたマイナス面を持つデンマークで、幸せに感じる人がなぜ多いのか疑問に思います。そして、幸せな理由の1つである「福祉国家」という仕組みとは別に、多くの人が見逃している重要な点があると指摘します。それが「ヒュッゲ」です。
ヒュッゲとは何でしょうか。著者によれば、この言葉は「満ち足りること」という意味のノルウェー語から来ているもので、「感覚をあらわす概念」であり、一言で説明するのが難しいものであるといいます。
そこで本書では、ヒュッゲなことがらや経験、瞬間といったものを数多く紹介することで、「ヒュッゲとはどういうものか」を理解してもらおうとします。例えば、こんなふうに。
「人との温かいつながりをつくる方法」「心の安らぎ」「不安がないこと」もヒュッゲですし、「お気に入りのものに囲まれて過ごす幸せ」「心地よい一体感」もヒュッゲ、そして私のお気に入り、「キャンドルのあかりのそばでココアを飲む」こともヒュッゲ。どれもこれもヒュッゲなのです。
(『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』 2ページ)
この説明を読むと、ヒュッゲがデンマークに住まなければ感じることができない、というものではないことがわかります。日本にいても、工夫次第でヒュッゲを感じることができるのではないでしょうか。
「あかり」にこだわる
ヒュッゲを感じるための第一歩。それは「あかり」です。本書からは、デンマークの人たちがキャンドルや照明などの「あかり」にこだわっている様子がうかがえます。
デンマークの人々があかりにこだわるのは、冬が長く、また雨が多い(1年の約半分が雨の日)という気候にあるようです。
ヒュッゲは、寒さの厳しい冬、雨の多い日々、分厚いベルベットのような暗闇をどうにかする対処法なのです。ヒュッゲは1年中暮らしと共にありますが、とくに冬場は生活に欠かせないものになります。
(『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』 14ページ)
そんな「冬場は生活に欠かせない」ヒュッゲを感じる「あかり」の中で、特にキャンドルはデンマーク人のお気に入りらしく、ヒュッゲと聞いて多くの人がキャンドルを連想するといいます。実際、デンマークは欧州における1人あたりのキャンドルの消費量が最も多い国で、年間消費量はなんと6kg。2位のオーストリアの2倍近くもの量を消費しています。
また照明にもこだわっており、じっくり選び、考え抜いて配置することで「やわらかな陽だまり」を室内につくりだそうとします。照明の色温度が低いほど、つまり薄暗いほど、ヒュッゲの度合いは高まると著者はいいます。
日本で「あかり」に工夫をする場合、キャンドルは煙の問題もあり、あまりお勧めできないかもしれません。ですが、照明の配置に気を配り、「やわらかな陽だまり」をつくることならばできるのではないでしょうか。
私の家は残念ながら昼白色のライトをつけており、色を変えることができません。そのためヒュッゲを感じる工夫としては、寝る前に電気を消して、スマートフォンでたき火や暖炉の動画をしばらく眺めてから眠るようにしています。わずかな時間ではありますが、そうすることで、リラックスして眠りにつけるように感じます。
また、スマホの待ち受け画面をキャンドルの画像にしています。少し薄暗い画面は、気持ちを落ち着かせてくれます。
ヒュッゲのカギは「人といること」
本書によれば、デンマークの人々は、友人や家族、同僚などと交流する機会が、ヨーロッパの他の国の人たちに比べて多いといいます。
ヒュッゲは1人でも楽しめるが、普通は親友や家族といった小さな集まりから生まれてくるもの ―― 。著者はそう説き、人の幸せの本質は、社会とのつながりにあると語ります。
ヒュッゲのカギは、人と一緒にいること。「社会とのつながりが人の幸せの本質である」という考えは、私のように「幸福」について研究している研究者や科学者の間で共通の見解となっています。
(『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』 54ページ)
様々な調査でも、人間関係に満足している人は、総じて幸せを感じていることが明らかになっています。
なぜ、人と一緒にいると幸せな気持ちになるのでしょうか。著者はその理由の1つとして、「オキシトシン」と呼ばれるホルモンの働きをあげます。このホルモンは人と人とがふれあうことで分泌されて、ストレスや恐怖、苦痛を和らげ、人を穏やかな気分にさせるといいます。
オキシトシンは他人の体がそばにあるだけでも分泌されるので、ときに「人と人の接着剤」とも言われます。とくにヒュッゲのようなこぢんまりした集まりでは、オキシトシンが体中をめぐることが証明されています。「愛されたい」「ぬくもりがほしい」「安心したい」――この3つがヒュッゲという概念の重要な要素です。
(『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』 53ページ)
寒い冬を幸せに過ごすために、たまには友人や同僚、別に住んでいる親兄弟などを自宅に招き、共に過ごす時間を設けてみてはいかがでしょうか。
近年、先進国で「孤独」が問題となっており、その状態が心に強いストレスを与えることが知られています。そうした孤独を癒すためにも、こうした取り組みは良い影響を与えてくれるように思います。
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『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』は、ライフスタイルや食べ物、ファッション、インテリア等々、ヒュッゲを感じることのできる様々なものがオールカラーで紹介されており、読んでいて飽きません。
これから冬本番を迎えますが、本書を参考に、ヒュッゲな生活を楽しんでみてはいかがでしょうか。そうした試みは、仕事にもポジティブな影響をもたらしてくれるでしょう。
(編集部・小村)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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