2024.10.7

編集部:小村

大谷翔平選手もすすめる1冊 生きる意味と人生のあり方を稲盛和夫氏が語った名著

大谷翔平選手もすすめる1冊 生きる意味と人生のあり方を稲盛和夫氏が語った名著

前人未踏の「54-54」

 メジャーリーグ、ドジャースの大谷翔平選手がレギュラーシーズンを終えました。159試合に出場し、打率3割1分、ホームラン54本、130打点、59盗塁の成績を残し、ホームラン王と打点王の2冠を手にしました。

 今シーズンの素晴らしい成績の中でも、特に野球ファンの注目を集めたのが、ホームラン数と盗塁数の多さです。どちらも高い数字を挙げようとすれば、パワーとスピードを高いレベルで兼ね備えていなければなりません。

 メジャーリーグにおいて、これまでホームランと盗塁の数字が揃って到達した最高は、1998年にマリナーズのアレックス・ロドリゲスがホームラン42本、46盗塁でマークした「42-42」でした。大谷選手はその記録を12も更新する「54-54」を記録。改めてその身体能力の高さに驚かされます。あまりの記録の凄さに、彼がケガからの復帰を目指す「投手」であることを忘れてしまうほどです。

読書家・大谷翔平選手が勧める1冊

 ところで、大谷選手は読書家としても知られています。ビジネス書を中心に読書をされるようで、彼の愛読書として知られているものには、『運命を拓く』(中村天風)や『論語と算盤』(渋沢栄一)などがあります。

 では、大谷選手はどのような本を人にすすめているのでしょうか。その1冊が、今週Pick Upする『生き方 人間として一番大切なこと』(稲盛和夫 著/サンマーク出版 刊)です。

 今年6月、大谷選手とモバイルゲーム「実況パワフルプロ野球」とが新たなコラボレーションを始めました。その際、同ゲームを運営する株式会社コナミデジタルエンタテインメントは、コラボ企画の1つとして、2017年に実施した大谷選手直筆のアンケートを公開しています。そのアンケートの中で大谷選手は、「お勧めの本などはありますか?」という質問に対して、「生き方 稲盛和夫」と答えているのです(「大谷翔平の好きな食べ物、おすすめの本は…2017年初コラボ時の秘蔵直筆アンケートを公開 KONAMI「パワプロアプリ」と大谷の新たなコラボがスタート」/サンケイスポーツ2024年6月24日)。

思わなければ、叶わない

 『生き方』は、京セラ・KDDIの設立者として著名な稲盛和夫氏が人間の「生き方」について、自らの経験を交えながら忌憚なく語った1冊です。

 既に本書を読み、感銘を受けた方も多いかもしれません。もし、再読される際には「大谷選手はどの部分に感銘を受けたのか?」と想像しながら読むのも面白いでしょう。私としては、大谷選手をイメージしながら読み直した時、改めて感銘を受けたのは1章「思いを実現させる」で語られた言葉の数々でした。

 例えば、稲盛氏はこう述べています。

 

人生はその人の考えた所産であるというのは、多くの成功哲学の柱となっている考え方ですが、私もまた、自らの人生経験から、「心が呼ばないものが自分に近づいてくるはずがない」ということを、信念として強く抱いています。つまり実現の射程内に呼び寄せられるのは自分の心が求めたものだけであり、まず思わなければ、かなうはずのこともかなわない。

(『生き方』 39ページ)

 

 この一文には、自分は人生や仕事において、何かを「思う」ことがどれだけあったのか? と自問させられます。思わなければ叶わない、というのは当たり前のことのようですが、忙しく日々を過ごすうちに、「思う」こと自体しなくなっているのではないか ―― 。そんなことに気づかされます。

未来の可能性を信じる

 ただし、「こうなりたいな」と思っているだけでは実現しません。実現のためには強く思うこと、そして努力が必要であることを稲盛氏は説きます。

 

不可能を可能に変えるには、まず「狂」がつくほど強く思い、実現を信じて前向きに努力を重ねていくこと。それが人生においても、また経営においても目標を達成させる唯一の方法なのです。

(『生き方』 43~44ページ)

 

 野球というスポーツの最高峰であるメジャーリーグにおいて、「不可能」と思われていた投手と野手の二刀流を成し遂げた大谷選手を見ると、思いの強さと努力の積み重ねが人間をどこまで高めてくれるのかを知ることができます。

 また、彼は稲盛氏が言う「自分の可能性」をまっすぐに信じている人ではないか、とも思います。

 

新しいことを成し遂げられる人は、自分の可能性をまっすぐに信じることができる人です。可能性とはつまり「未来の能力」のこと。現在の能力で、できる、できないを判断してしまっては、新しいことや困難なことはいつまでたってもやり遂げられません。

自分の可能性を信じて、現在の能力水準よりも高いハードルを自分に課し、その目標を未来の一点で達成すべく全力を傾ける。そのときに必要なのは、つねに「思い」の火を絶やさずに燃やしつづけるということです。

(『生き方』 59~60ページ)

 

 今の自分の能力だけで、できるかできないかを判断するのではない。未来の能力を信じて、目標に向かって努力をする ―― 。これは、まだ経験が浅く、自分の能力の足りなさに悩む若いビジネスパーソンに贈りたい言葉の1つでもあります。

 2004年に出版された本書の「あとがき」で稲盛氏は、自らの状況を「事業の第一線を退き、信仰を通じて人生の意義について思索を重ねる現在」と述べています。

 しかし、人生というものはわからないもの。この本が書かれた6年後の2010年、稲盛氏は経営破綻した日本航空(JAL)の会長に就任し、JAL再建の立役者となります。その成功の背景には、本書に書かれているような氏の「生き方」の哲学が感じられます。

 版元のサンマーク出版のWEBによれば、『生き方』は「日本国内150万部、世界16カ国に翻訳され中国500万部をはじめ海外620万部、世界770万部を突破」しているといいます。ただし、100万部を突破したのは刊行後10年近く経ってからだそうです。

 この事実は、時代に左右されない普遍的な人生へのメッセージが本書に込められていることを意味するのではないでしょうか。

 まだお読みでない方は、ぜひ一読していただきたい本です。すでに読まれている方は、時間をおいて再読してみてはいかがでしょうか。読むたびに、新しい人生のヒントを得ることができるでしょう。

(編集部・小村)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2011年6月号掲載

生き方 人間として一番大切なこと

京セラやKDDIなどを育て上げた日本有数の経営者、稲盛和夫氏。『アメーバ経営』『稲盛和夫の実学』『高収益企業のつくり方』等の著作により、その独自の経営哲学は広く知られるところだが、本書では、人間の「生き方」というものを根幹から見据え、思うところを語り尽くす。稲盛氏ならではの視点、そして経験に基づく、味わい深い人生論である。

著 者:稲盛和夫 出版社:サンマーク出版 発行日:2004年8月
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