「新しいことなんて思い浮かばない」「何のアイデアもひらめかない」…。
このように頭を抱えた経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。新商品の開発や問題解決の時、新規事業創出の場面など、ビジネスではアイデアを求められる機会が多々あります。
今週のPick Up本では、そんな時に役立つ名著をご紹介します。アイデアを生み出すための「ハウツー」をわかりやすく解説しているロングセラー、『新装版 アイデアのヒント』(ジャック・フォスター 著/CCCメディアハウス 刊)です。
- ※新規事業の開発に関するヒントを得たいという方は、本日公開したおすすめの特集『新規事業開発の“極意”』も是非ご覧ください。
著者のジャック・フォスター氏は、アメリカの大手広告代理店で数多くの企業広告を担当し、いくつもの広告賞を受賞した人物です。ただ、フォスター氏は、自分も他のアイデアマンたちも特別な能力を持っているわけではない、と強調します。アイデアを思いつくかどうかは、「アイデアの引き寄せ方を知っているかどうか」だといいます。そしてその方法を非常にわかりやすく紹介しているのが、『新装版 アイデアのヒント』なのです。
本書でフォスター氏は、「アイデア」とは次のようなものだと説明しています。
「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」
(『新装版 アイデアのヒント』27ページ)
実はこの言葉は、アイデアづくりの原理・方法を説いた古典的名著『アイデアのつくり方』(ジェームス・W・ヤング/CCCメディアハウス)に記されている定義です。フォスター氏は、この定義が本書の土台になっているとも述べています。
『アイデアのつくり方』は「TOPPOINTライブラリー」でご紹介していますので、本書とあわせて読むことで、アイデアづくりの要諦をさらに深く学ぶことができるかと思います。
さて、この定義に従って世の中を眺めてみれば、確かに新しいアイデアの多くは既存の要素を組み合わせて生まれていることがわかります。
例えば、iPhone。よく知られているように、スティーブ・ジョブズはiPhoneを初めて発表した時、iPodと携帯電話、インターネット通信機器の3つを1つのデバイスにしたものだと紹介しました。これなどまさに、既存の要素を組み合わせて新しいものを誕生させた好例といえるでしょう(当時の基調講演の様子はYouTubeなどで見ることができます)。
また、京都先端科学大学の名和高司教授によれば、“イノベーション”という言葉の生みの親である経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、「すでにあるものを新しく組み合わせて市場を生み出し(1→10)、さらにそれをスケールさせていく(10→100)ことが、イノベーションの本質」だと説いているとのこと(『超進化経営』日経BP・日本経済新聞出版 刊、198ページ)。つまり、イノベーションという観点から見ても、まずは既存の要素を組み合わせてみることが非常に有効だということです。
アイデア発想が苦手という方は、まずは自社の商品・サービスに全く違う要素を組み合わせてみるとどうなるかを考えてみるといいでしょう。
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『新装版 アイデアのヒント』では、この他にもアイデアを生み出す方法が多数紹介されています。中でも私が個人的に好きだったのは、「子供に戻ろう」というものです。
クリエイティブなのはあなたのなかの子供の部分であって、大人の部分ではない。(中略)子供は無垢で、自由だ。自分の限界を知らない。してはいけないことも知らない。子供は世界をありのままに見る。わたしたち大人が頼ってきた常識など関係ない。
(『新装版 アイデアのヒント』78~79ページ)
一般的に、大人になり経験を積むと日常生活や仕事のルーチンが確立され、効率よく、一貫したパフォーマンスを発揮できるようになります。一方で、年を取ると保守的になり、どんな結果になるかわからない新しいアイデアやアプローチを試すことを恐れたり、予期しない状況や環境の変化に対応することが難しくなったりしがちです。
私の場合、何か新しいことを思いついても「常識的にこれをするのは無理だろうな」と、自分の中でストップをかけてしまうことがしばしばありました。ですが、本書の「子供に戻ろう」の章を読むと、そうした「大人の常識」がアイデア発想の邪魔をしていたのだと強く感じました。
子供のように、何にでも好奇心いっぱいで挑戦してみる。見るもの全てについて「なぜそうなのか」と考えてみる ―― 。この「子供に戻る」という方法は、年齢を重ねた今だからこそ非常に重要なものなのだと実感しています。
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それでも、「新しいアイデアに挑戦するのは怖い」「思いついたことを他の人に言う勇気が出ない」という場面は多いかと思います。
そんな時には、フォスター氏の次の言葉が背中を押してくれるでしょう。
イタリアの物理学者ガルヴァーニが電流を発見したのも、サラトガ・スプリング・ホテルの名もないシェフがポテトチップスを発明したのも、パスツールが免疫学という分野を見いだしたのも、レントゲンがエックス線を発見したのも、(中略)フレミングがペニシリンを発見したのも、すべては偶然だった。コロンブスがアメリカを発見したのだって、偶然だった。
そう、「まずい」アイデアなんてないのだ。失敗をくよくよ後悔したって始まらない。それより、そこに新しいアイデアの芽がないか、探したほうがいい。(『新装版 アイデアのヒント』117~118ページ)
新しいアイデアは、それが独創的であるほど周囲から反対されたり、拒絶されたりすることが少なくありません。そのことを恐れて、発表する前に取り下げてしまうこともあることでしょう。ですがアイデアを出してみないことには、何がどう転ぶかはわかりません。
『新装版 アイデアのヒント』は、きっとアイデアを引き寄せ、実現するための背中を押してくれる1冊になるはずです。まだお読みでない方には一読をおすすめします。
(編集部・油屋)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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