2025年8月号掲載

移動と階級

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著者紹介

概要

私たちの生活は、“移動”なしに成り立たない。社会は人・モノ・情報などが動くことで機能している。では、移動に、階級や居住地による“格差”があるとしたら? 社会学者が、独自の調査を基に実態を明らかにした。フードデリバリーから気候変動による移住まで、様々な問題を取り上げ、移動に伴う分断、不平等を考察する。

要約

移動とは何か?

 私たちの暮らしは、あらゆる「移動」によって成り立っている。移動が止まれば日常は一変し、社会も、経済も止まる。そして、現代社会には「移動できる人」と「移動できない人」の間に大きな“格差”が存在する ―― 。

すべての移動はつながっている

 移動と聞いてまず思いつくのは、歩くことや自動車の利用など、身体を伴った移動だ。だが、移動は人に限った話ではない。

 オンラインショッピングで購入した商品が家に届く。これは「モノ」の移動だ。SNSで最新のニュースを知る。これは「情報」の移動。店舗で支払いが生じる。これは「資本(お金)」の移動だ。

 人や情報の移動が、モノやお金の移動ももたらす。すべての移動はつながっているのだ。

不平等に分配される移動

 そして重要なのは、「移動できる人」と「移動できない人」の間で、移動をめぐる量や機会、経験の差が存在しているという事実である。

 2021年12月、著名な実業家が日本の民間人として初めて国際宇宙ステーションに滞在した。費用は、12日間で約50億円といわれている。

 2020年代に入り、世界経済を牽引する多くの大富豪は、宇宙行きのチケットを購入している。このトレンドが意味するのは、グローバル化によって、資本家階級が国境を越え、地球という枠も超えて資本主義を拡大しているということだ。

 こうした変化は、人々が求める価値の中で、移動が最も価値の高いものの1つになっていること、移動の自由は希少で不平等に分配される商品として、階層化の要因になっていることを示している。

移動は社会から独立して存在しない

 移動格差について知る上では、「移動」という言葉の意味を正しく理解する必要がある。カギを握るのは「モビリティ」と「ムーヴメント」だ。

 いま、あなたの眼の前にAとBという点があるとする。この時、A→Bと移動する物理的な「運動」を「ムーヴメント」と呼ぶ。これは、ただ物体が1つの物理現象として動いただけである。

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