2025年6月号掲載
「運のいい人」の科学 強運をつかむ最高の習慣
Original Title :THE SCIENCE OF BEING LUCKY:How to Engineer Good Fortune, Consistently Catch Lucky Breaks, and Live a Charmed Life (2022年刊)
著者紹介
概要
「運がいい」とはどういうことか? 運のよさは持って生まれたものなどではない。うまくいっている人は、運を引き寄せる状況を自ら生み出しているのだ。本書は、心理学などの知見をもとに、運のいい人に共通する思考や性質、行動を掘り下げて紹介。彼らの習慣を身につければ、誰でも“強運”をつかむ可能性が高まるだろう。
要約
「運」とは何か
「運のいい人」になるには、どうすればいいのか? そのために一番大切なのは、運に対する自分自身の考え方を変えることである。
運と確率
私たちが運と呼ぶものは、科学の世界では別の名前がついている。それは「確率」である。
科学的なアプローチでは、将来に起こることを正確に予測できない。だが、すでに明らかになっている情報をもとに、可能性のある結果が起こる確率を計算することならできる。
こうした確率の計算を全くしない人は、自分の思い通りの結果になったら「運がいい」と考え、そうならなかったら「運が悪い」と考えるだろう。
事象をコントロールする力はどこにあるか
私たちは、純粋に偶然の出来事であっても、そこに何らかの意味を見いだそうとする。
「ギャンブラーの誤謬」という概念がある。完全にランダムな事象であっても、そこには何らかのパターンがあるに違いないと思い込むことだ。
例えば、サイコロを何度も振っていると、そろそろ6が出るはずだと感じる人がいる。だが、この感覚に確率論的な裏づけはない。ただ、その人は自分にはコントロールできない事象の中に、何らかのパターンを創造しようとしているだけだ。
こうした、ランダムな事象の中にパターンを見いだそうとする人間の性質は「アポフェニア」と呼ばれる。アポフェニアで特に注目したいのは、「統制の所在」との関係である。
統制の所在という概念を確立したのは、心理学者のジュリアン・ロッターだ。この概念の中心にある考え方は、事象をコントロールする力が自分の中にあるか、それとも外にあるかということだ。
コントロール権は自分の中にあると信じている人は、自分の行動によって生じる結果に責任を持つ。彼らは、目標を達成するために行動を起こし、もしその行動が失敗に終わったら、自分の能力や努力が足りなかったからだと考える。一方、コントロール権は外にあると感じている人は、自分の成功や失敗は運の結果だと考える傾向がある。
安定した運、不安定な運
カリフォルニア大学とコロンビア大学の研究者が、共同で運に関する研究を行った。運に対する解釈が人によってどう異なるか、その解釈が各々の態度にどんな影響を与えるかを調べたのだ。