2025年6月号掲載
日本型組織のドミノ崩壊はなぜ始まったか
- 著者
- 出版社
- 発行日2025年3月22日
- 定価1,012円
- ページ数222ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
近頃、日本の組織がおかしい!? ダイハツの認証試験での不正、自民党の裏金づくり。その他、著名な組織が問題を起こしている。なぜか? それは、いずれも本来、「目的集団」である組織が、「共同体」でもあったからだと、本書はいう。この日本型組織を、組織論研究の第一人者が徹底分析。崩壊の原因を明らかにし、警鐘を鳴らす。
要約
2023年 崩れ始めた支配構造
2023年、大きな組織スキャンダルが次々と世間を騒がせた。
例えば、芸能界では、故ジャニー喜多川氏の大規模な性加害が表面化した。大企業では、ダイハツ工業の認証試験における不正が発覚。そして政界では、自民党の派閥による裏金づくりが告発され、責任者の逮捕、安倍派幹部の離党勧告をはじめとする大量処分へと発展した。
なぜ今になって、巨大組織が崩壊するような出来事が立て続けに発生したのか?
「事件」は共同体で起きる!
上記の組織に共通するのは、内部に厳格な「命令―服従」の関係が存在することだ。
そして、ジャニー氏による加害を事務所は「見て見ぬふり」をしてきた。ダイハツは「上司への意見を抑圧する組織風土」であり、「派閥に言われたら従わざるを得ない」のが自民党である。
これらから浮かび上がるのは、閉ざされた仲間内の人間関係、行動、独特の風土だ。強い影響力を持つこの“仲間内の集団”を「共同体」という。
「基礎集団」と「目的集団」
社会学では、集団を2種類に分ける。
1つは家族やムラのように自然発生的で血縁や情によってつながっている集団で、「基礎集団」と呼ぶ。もう1つは特定の目的を達成するため人為的につくられた集団で、「目的集団」と呼ぶ。
仲間内の集団である共同体は、基礎集団とほぼ同義語である。一方、企業は本来、目的集団だ。事業を通して利益をあげることが重要な目的だ。
にもかかわらず、崩壊の危機に瀕した組織は、目的集団と基礎集団の両方の性質を備えていた。このような組織を、私は「共同体型組織」と呼ぶ。共同体型組織は日本の組織にほぼ共通する特徴だ。
なぜ日本では組織が共同体型になるのか
では、なぜ日本の組織が共同体型になったのか。そこには、3つの構造的な要因が働いている。