2021年10月号掲載

デタラメ データ社会の噓を見抜く

Original Title :Calling Bullshit:The Art of Skepticism in a Data-Driven World

デタラメ データ社会の噓を見抜く ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

今の世の中は、デタラメだらけだ! 事実ではない情報が、あちこちにはびこっている。中には、数字や統計などで箔づけされ、一見、本当らしいものも。そして、今日のネット社会ではデタラメは一気に拡散し、訂正するのは至難の業だ。そんな厄介な情報に、どう対処すればいいのか。デタラメの特徴を示し、見抜き方を伝授する。

要約

世の中はデタラメだらけ

 世の中には、事実ではない情報がたくさん出回っている。下手すれば、私たちはデタラメの海で溺れてしまう。政治家は事実など、どこ吹く風だ。科学はプレスリリースだけが一人歩きする。

 デタラメの蔓延は今という時代の特徴であると、哲学者ハリー・フランクファートは指摘した。

 「私たちの文化の最大の特徴は、デタラメの多さである。誰もがうなずくはずだ。そして私たちは一人残らず、デタラメに加担している」

デタラメをばら撒くのは簡単だが、回収は困難

 例えば、「ワクチンが自閉症の原因になる」という、たちの悪いデマがある。その出所は、1998年に英国人医師アンドリュー・ウェイクフィールドらが『ランセット』誌に発表した研究報告だ。

 科学史上これほど徹底的に信憑性が問われ、否定された例も珍しい。膨大な費用と時間が費やされ、その信憑性は完全に否定された。20年越しの調査でも、原因になるという証拠は出てきていない。逆に、それを否定する証拠は山ほどある。にもかかわらず、デマはしつこくはびこっている。

 デタラメをばら撒くのは簡単だが、その回収は並大抵の苦労ではない。

ツイッターから押し寄せてくるデタラメ

 実際、デタラメをひねりだすのも、それを一気に広めるのもたやすい。

 例えば、2013年のボストンマラソンを襲った爆弾テロ。爆破の直後、ある情報がツイッターで拡散した。8歳の少女が命を落とし、その少女は数カ月前に銃乱射事件が起きたサンディーフック小学校の生徒だったという内容だ。彼女は小学校の事件で亡くなったクラスメートを偲んでマラソンに参加したという。

 だが、怪しいと感じた人もいた。ボストンマラソンは子どもの参加が認められていない。噂を追跡するウェブサイトSnopes.comは、少女の死はデマだと暴いた。実際、少女は死んでおらず、ボストンマラソンに参加すらしていなかった。

 噂の誤りを正そうと、ツイッターで2000を超える発信があった。だが、誤った情報はすでに9万人以上にシェアされ、大手の報道機関も少女の死を伝えていた。噂の拡散は止まらなかった。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

良心をもたない人たちへの対処法

マーサ・スタウト 草思社

人新世の「資本論」

斎藤幸平 集英社(集英社新書)

沈黙の春

レイチェル・カーソン 新潮社(新潮文庫)

スマホ脳

アンデシュ・ハンセン 新潮社(新潮新書)