2021年2月号掲載

渋沢栄一 「論語と算盤」の思想入門

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著者紹介

概要

貨幣制度の統一、近代的銀行制度の立ち上げ、太陰暦から太陽暦への変更。これら全てに関わったのが、渋沢栄一だ。彼なくして、日本の近代化はなかったといえよう。では、偉業を支えた行動原理は、何だったのか。その人生をたどりつつ、彼の思想の核である「論語と算盤」 ―― 道徳と経済を一致させた思想を解き明かす。

要約

渋沢栄一の行動原理

 文豪・幸田露伴は、かつて渋沢栄一を「時代の児」と評した。時代状況が産み出した傑物だという指摘だが、確かに彼の人生は、幕末から明治、大正、昭和という時代の移り変わりを、一身に体現している面がある。

 栄一はまず、「尊王攘夷の志士」として活動していたが、ひょんなきっかけから「一橋家の家来」、そして「幕臣」となる。つまり、討幕を叫んでいたのに、その幕府の家臣となる。

 その後、「パリ万博への代表団の一員」としてフランスへ。攘夷、つまり外国人を打ち払えと唱えていた人がヨーロッパに行き、感化される。

 そして、「明治政府の官僚」となって、大蔵省で活躍する。

 最後に「実業家、社会起業家」として、481社あまりの企業や約600の社会事業に関わり、“資本主義の父”にふさわしい成果を上げた。

日本のために一身を尽くす

 一見すると、相反するものの間を右往左往しているようにも見えるが、実はそうではない。このフラつきの根柢には、揺るがぬ芯があった。

 それを解くカギは、栄一が20代の頃関わった「高崎城襲撃計画」にある。高崎城を襲撃し、武器を奪う。その上で外国人住居を焼き払い、志士の蜂起を促し、幕府打倒を企てる、というものだ。

 計画を実行に移す前、彼は父親に、親子の縁を切るよう願い出た。もし計画を実行すると、家族まで処分を受けてしまうからだ。

 「お前は自分の役割をこえて、いわば望むべきではないものを望んでいるのではないか。根が農民に生まれたのだから、どこまでもその本来の役割を守って農民に満足したほうがよい」

 これに対して、栄一はこんな返答をしている。

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